異世界AI:アルメリアの羽根うさぎ

tiroro

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第5話 強襲パパグマ

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 とりあえず、ギルドへ向かうことにしたあたしたち。
 でも、その途中でお母さんグマがグルルと唸り声を出し始めた。

「どうしたの?お腹空いた?」

「いるって言ってる」

「何が?」

「グォオオーーッ!!」

 でかいクマ!?

「これは……アルクーダのオス!?」

「えっ!?お父さんグマ!?」

「千春、避けて!」

 おねたんがあたしに体当たりし、よろめいた目の前をお父さんグマの大きな爪がすり抜けた。

「もしかして、害を出してた魔獣はこっち!?」

「そうみたいね、シノさん」

 なんか、おねたんとシノさんがわかり合ってる!
 あたしだけ蚊帳の外じゃないの!?

「お母さんグマ!旦那さんでしょ!?
 暴れないように説得できないの!?」

「無駄よ、千春。
 クマのオスは子育てに参加しないし、なんなら子グマを邪魔だと思ってるわ」

「世のイクメンを見習えよー!」

 お父さんグマが、体を丸めて背中のトゲを向けて転がり突進してくる!
 そのトゲは、そうやって使うんですね!?

「このっ!!」

 シノさんの放った矢が、お父さんグマに放たれた。
 でも、あんなにグルグル回転してるからトゲに弾かれて当たらない。

「どうしよう、おねたん」

「またウニャウニャする?」

「する!」

 そんなわけで、お父さんグマの相手はシノさんに任せて、あたしとおねたんはウニャウニャと始めた。
 仕方ないよね。あたしたちがそのままいても、何の役に立たないし。

「おてて小さくて可愛いね」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」

 そうこうしてるうちに、あたしへのスキル付与が済んだみたい。

「おねたん、ありがとう!
 で、今度はどうしたらいい?」

「ローキックよ!」

 ローキック。
 キックボクシングで相手の下段を狙うキック。
 一見地味に見える技だけど、背の高い相手に有効だし、ダメージを蓄積させれば動きを止めることもできる。
 なんかさっきから、あたしの知ってる異世界スキルと違うんですけど!

「千春、構えて」

「はいっ!」

 セコンドのおねたんの指示で、あたしはお父さんグマを迎え撃つポーズを取る。

「ダメよ、チハル!
 武器も持たないあなたが勝てるわけない!」

「あたしもそう思う!」

 もちろん、格闘経験もない。
 だけど、親子グマを傷つけるDVグマを、許すわけにはいかない。

「グォオッ!!」

「ほあちゃー!!」

 あたしはローキックをお父さんグマの脛に当てる。
 どこが脛かハッキリしないけど、たぶん脛らへん。

「ギャオッ!?」

 お父さんグマを怯ませることができた。
 少し動きが遅くなったところに、ローキックをペチペチ決める。

「グッ、グァオオ……!?」

「効いてる効いてる!」

 おねたんノリノリ。

「どうやら、あたしには格闘家の才能があったみたいね」

「ないわ」

 おねたん、そんな即否定しなくてもよくない?
 とにかく、覚えたてのローキックをお父さん DVグマに連打する。
 そうしていると、やがて動きを止めるお父さんグマ。

「グァアア……!」

「シノさん、矢で眉間を射って」

 おねたんの声に、シノさんがクロスボウを構える。
 いいの?お父さんグマなのに?
 家族なんじゃないの?

「グォオ……」

「構わないって。さあ、シノさん」

 おねたんがお母さんグマの鳴き声を翻訳する。
 そうか……DV夫だもんな。
 百害あって一利なし。
 こんなクマのことは、もう忘れた方がいいね。

「ギャァァアアッ!!」

 シノさんの矢を受けて、お父さんグマは動かなくなった。
 急に始まったボス戦は、こうしてあたしたちの勝利に終わったのだ。


 倒れたお父さんグマを、子グマはじっと見つめていた。


***


 DVグマの背中のトゲを刈り取り、シノさんはバッグにしまった。
 これで、魔獣討伐の報告ができるらしい。
 今度こそ、ギルドに向かうことになるのね。

「チハル、あなたがいなければ、魔獣討伐は無理だったわ」

「そんなことないと思いますけど」

「その親子アルクーダのことも、あのまま討伐してたらもっと面倒なことになっていたかもしれない」

「お礼なら、おねたんに言って。
 クマ語の翻訳も、スキル付与も、指示も全部おねたんがやってくれたんだから」

「そうね……ありがとう、謎のウサギ」

「羽根うさぎです」

 親子グマを連れて、あたしたちは街を目指す。
 目的の街は、森を抜けてそんなに遠くではなかった。
 あたしたちが向かった方とは反対の方角。
 こっちに行けば街があったんじゃん。
 街と言っても防壁や、街を守る兵士なんかもいないから、親子グマを連れたまま、あっさりギルドに辿り着いてしまった。

「……で、その嬢ちゃんがアルクーダに格闘戦を挑み、動けなくしたところをシノが仕留めたと」

「その通りです、マスター」

 眼帯をしたいかついおっさんが、あたしをじっと見てくる。
 
「格闘技なんてできそうに見えないけどなぁ」

「ですよねー」

 とりあえず、愛想笑いしとこ。

「そのアルクーダの親子は?」

「チハルがテイムしたようで、大人しく害はありません」

「魔獣をテイムしたのか!?」

「あたしもわかりませんけど、オイモあげただけです」

「ふぅむ……にわかには信じ難いが、こんな穏やかなアルクーダは見たことないな……」

 あたしも、背中にトゲのあるクマなんて見たことありません。

「わかった。とりあえず、その親子アルクーダは討伐対象から外そう。
 ご苦労だったな、窓口で報酬を受け取ってくれ」

 親子グマの前足に、ギルドのマークの入った腕輪が取り付けられた。
 これで、誤認で討伐されることは、ほぼほぼ無いみたい。

 それにしても、異世界か……これから、どうしようね。
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