異世界AI:アルメリアの羽根うさぎ

tiroro

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第17話 ステータス強制上書き

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 目の前に開いたウィンドウ。
 解毒するには、まずはこの人のステータスを取得して変数に入れないと──

「おねたん、対象のステータス取得はどうやるの?」

「Get-HeldPersonalInfoを使うわ。マギさんに千春が触れて取得して。
 鎖の情報を取得したときと同じ要領でね」

「パラメータは?」

「アイテムの時と同様にFromObjectを使って」

 コードエディタで変数にマギさんの取得した情報を入れる。
 $pInfo = Get-HeldPersonalInfo -FromObject *
 パラメータをNameにして、名前から取得できるようなコマンドもありそうだけど、同姓同名がいたら複数拾いそうだし、やっぱり自分で触れて情報を取得する方が確実かな。
 今回はちゃんと、変数名考えて書いた。

「取得した情報からステータスを見たいから、いったん変数の中身を表示してみて」

「うん、見てみる」

 PowerShellで変数の中身を見るだけなら、別にWrite-Hostはいらない。
 変数名、$pInfoだけ打ってエンターでいい。

「マギさんの情報が表示されたよ」

「じゃあ、プロパティのConditionを見てみて」

 マギさんのコンディションは、Heavy Venomと書いてある。
 ベノムって毒だっけ?ポイズンとは違うけど。

「おねたん、ヘビーベノムって出てるよ」

「ベノムは動物の毒ね。ヘビーが付いてると、かなりの重症よ。
 それに、死の前兆も出てる」

「どうしたらいい?」

「今回は、今後もスキルとして取っておきたいから、パラメータ付きのスキル関数にしましょう」

 function detoxiFication {
      param(
          [object]$TargetInfo
      )
      Set-PersonalStatus -FromObject $TargetInfo -Condition "Stable"
 }

 よし……これで、マギさんへ向けて──
 detoxiFication -TargetInfo $pInfo
 エンターだ。

「どうかな?」

 マギさんにスキル関数が作用していく。
 だんだん手足から順に血色が戻ってきて、下顎呼吸もおさまった。

「おねたん、うまくいったよ。サポートありがとね」

「どういたしまして」

 AIらしい仕事ができて満足げなおねたん可愛い。
 そして、どうやら今回のスキル関数は、あたしのスキルとして使えるようになったみたい。
 異世界ではどんな危険があるかわからないから、こういう治療スキルを得られるのは助かるわ。

「こんなことが……良かった、マギ!」

「ロアス……私……」

 見つめ合う二人。そして始まるラブロマンス。
 ハーレムの本命はこの人だったか。
 それじゃ、あとは若いお二人にお任せして、お邪魔なあたしはクールに去るぜ。

「聖女でも治せなかった毒を……相変わらず、お前のスキルはすごいな」

 ジフテトさんは、女神様のときにコードエディタのスキル見てるもんね。

「あたしのは裏技みたいなもんだよ」

 本当は魔法みたいにサッと唱えて解決したいんだけど、まだこの世界の基本のコマンドを知らないからなぁ。
 おねたんに確認しつつだから、やっぱり時間がかかるわ。

「ありがとう……この礼は必ず!」

 お礼なら、マギさんの唱える魔法を見てみたいかも。
 この世界で魔法ってまだみたことないから。
 矢を弾くクマの回転と、ドラゴンの起こす雷と炎のブレス、変な悪魔が縛りつける鎖は、魔法にはカウントしない。
 でも病み上がりの人にそんなこと頼めないし、とりあえず、笑ってごまかしとこ。


***


 そういや、クモの討伐どうするんだろ。
 失敗したって言ってたから、まだクモは存命なんだよね。
 勇者たちも結構ボロボロだったから、すぐに再出発ってわけにはいかないだろうし。

「ジフテトさんは、クモ退治できないの?」

「バカ言え。勇者パーティでも無理だったのに、俺なんかにできるかよ」

 ジフテトさんって、自分で思うより強いと思うけどな。悪魔みたいなのも一撃で斬り払ってたし。

「チハル、ちょっといいか?」

 マスターがドリンクの入ったカップを持ってやってきた。あたしの目の前に置かれる。
 サービスドリンクかな?ラッキー。さっきの治療のお礼かしら。

「お前のことをロアスに聞かれたよ。あの少女は何者だと」

 若く見られるのは嬉しいけど、24で少女扱いはきつい。

「異世界からやってきたということは伏せておいたが、テイマーであることと、ああ見えて勇者たちよりも年上だということは伝えておいた」

 後半を伝えた意味。テイマーかどうかも怪しいし。

「あたし、マスターに違う世界からきたこと話しましたっけ?」

「シノから聞いているからな。サイレントヒルだったか?」

 そっちを伝えてしまったか、シノさん。

「もしよければ、次のカルキノス討伐に同行してほしいそうだが……どうする?」

「勇者パーティに同行できるのは光栄なことだが、危険すぎるだろ」

「お前は呼ばれてないから安心しろ」

 しょんぼりするジフテトさんが面白い。

「しかし、俺は兄として、こいつをそんな危険な目にはあわせたくない」

 いつの間に、ジフテトさんはあたしの兄になったんだ。

「それ以前に、あたしまだ勇者さんからお礼もらってないんですけど」

「報酬なら、渡しておいてくれと頼まれて預かっている」

 そう言うと、マスターはたくさんお金の入ってそうな布袋をあたしに差し出してきた。

「ドリンク代は引いてある」

「……ッ!?サービスじゃなかった!」

「もちろん、断ってもいい。
 だが、次に失敗したときにはいよいよ、この街にも被害が出るかもしれん」

 それは困るなぁ……ここが、あたしの生活基盤だし。
 行っても解毒くらいしかできないよ?あたし。
 クモにローキックなんて効かないでしょ。

「どうするかは任せるが……」

「どうしようね、おねたん」

「行けば、マギさんの魔法を見せてもらえるかもね」

「行きます」

「お兄ちゃんは許しませんよ!」

 勇者パーティと一緒に、大きなクモ退治に向かうことになったあたし。
 果たして、勇者パーティはクモに勝つことができるのか。
 あたしは、無事魔法を見せてもらうことができるのか。
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