コーデリア魔法研究所

tiroro

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34.生活支援課のお手伝い

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 休み明け。これまでの依頼書を整理していると、事務所にどこかで見たことのある女の人がやってきた。

「フィオルちゃ~ん、カノン困っちゃった~」

 思い出した! この人、生活支援課の課長、カノンさんだ!

「何を困ったって言うんだよ……」

「エリスちゃんが急病で倒れちゃって、受付やれる子がいないの~」

「そっちで何とかしたらいいだろ!?」

 エリスさん、倒れたの? 大丈夫?
 まさか、例の呪いだったりしないよね……?

「エリスの症状はどんな感じなんだ?」

「流行り風邪に掛かっちゃったみたい……」

「わかった。リカルドとエリアスを向かわせるからあとで依頼書を書いてくれ」

「それはそうなんだけど、誰か……ミアちゃんか、ナターシャちゃんを借りれないかしら~ん」

 受付か……最初の頃は受付をずっとやってたから、私は別にいいんだけど、そもそもナターシャさんは新人教育もあるし、他にもやることいっぱいあるんだよね。

「別に受付は男でもいいんだ。ケイド、行ってこい」

「ケイド君? 土属性の子はちょっとねぇ……」

「何ですか!? 土属性の何が駄目でした!?」

 さっきから、カノン課長の目がずっと私の方を見てるような気がする……。
 まぁ、私はそんなにすること無かったし、魔力の節約になると思えば久しぶりに受付に行ってもいいかな……。

「フィオルさん、私行きましょうか?」

「……じゃあ、午前中だけな」

「ありがと~、フィオルちゃん!」

 そういえばこの人、私の髪を触りたいとか言ってた変な人だったよね……ついて行って大丈夫なのかな。
 あれ? 受付の人、一人いるじゃん。
 私いらなくない?

「あの子はエマちゃんと言って新人ちゃんなの~。
 エリスちゃんが先週までは一緒だったから大丈夫だったんだけどね~」

 カノン課長って、ここまでキャラ拗らせた人だったっけ?

「あ、カノン課長! お疲れ様です!」

「硬いわ~ん、もう少しリラックスして頂戴」

 新人さんにそれは無理だと思いますよ。
 私も最初そうだったし。

「こちらは薬学治療課のミアちゃん、前は受付もやってたのよん」

「そ、そうでしたか! これは失礼しました!
 私はエマと言います! 生活支援課に入ったばかりの新人です!」

「ミアと言います。よろしくお願いしますね」

 その硬さを是非カノン課長に分けてあげてほしい。

「それじゃミアちゃん、午前中の間、エマちゃんをビシバシ鍛えてあげて頂戴ね~ん」


 カノン課長は事務所に戻って行った。
 正直、あの人が受付をしても全然いいんじゃないかと思う。

「ミア先輩! ご指導のほど、よろしくお願いいたします!」

 エマさんは、なんで生活支援課に入ってしまったんだろう。
 どちらかと言うと、遺跡調査課のみたいな体を動かす仕事の方があってる気がする。


***


「実は、私……冒険者になろうと思っていました」

「なんかそんな感じしますね」

「でも、ようやく覚えられた魔法がヒールで、ヒーラーになるにも力が足りなくて、貯金も尽きて……困って相談に来たところをカノン課長に契約社員として拾われたんです」

「それで生活支援課に……あ、依頼者が来ましたよ。
 受付頑張ってみてください」

 まずは、どんな感じで受付するのか見ておこう。
 とは言っても、私もそんなに受付は慣れてるわけじゃないんだけどね。

「本日はどのようなご用件で!?」

「あの、ペットの犬がはぐれてしまって……」

「では、こちらの依頼書をご記入ください!」

 何というか……力がすごい!
 えっと、ペットの捜索か……どこに依頼したらいいんだろう?
 該当しそうな部署って生活支援課になるのかな?
 それとも、遺跡調査課なんだろうか……でも、遺跡じゃないもんね……。

「ミア先輩、どちらに回したらいいんですか?」

「ペットの捜索は私も初めて……生活支援課に聞いてみましょう」

「わかりました!」

 内線をかけると、黄色いローブを着た生活支援課の人たちがやってきた。
 ここの部署で合ってたみたいでよかった。
 生活支援課では、街の人々のお困りごと全般を扱っているそうで、魔法はあまり得意じゃなくても生活の知識に長けた人たちが集まっているんだって。
 必要になったら魔法も使うから、多少の魔力は必要になるみたいなんだけど。

「ペット、見つかるといいですね」

「そうですね」

 今日は依頼が少なく、午前の仕事はもうすぐ終わりというところで新しい依頼者がやってきた。

「本日はどのようなご用件で!?」

「そうだなぁ……まずは大金がほしいかな!」

 依頼者じゃない!?

「離れて!」

「ミア先輩!」

 依頼者を装った男に後ろ手に掴まれてしまった。
 まさか、研究所に強盗が入るなんて……ここにはお金なんて置いてないというのに。

「おっと……下手に動くなよ。お前たちは人質だ」

 なんで私が入ったときに限って、こんなことが起こるかな……いや、エリスさんとエマさんの二人の時じゃなくて良かったと思った方がいいのかもしれない。

「そこの姉ちゃん、袋にありったけの金をつめろ」

「こ、ここにはお金は置いてません!」

「でかい声出すんじゃねえよ! 仕方ねえ……じゃあ二人とも俺と一緒に来てもらおうか」

 こんな風に掴まれてると、あの日のトラウマが甦る……でも、そんなこと言ってる場合じゃないか。
 反対側を向ければ目からビーム出すのに……。
 そうだ……この魔法なら!

「【ルミナスフリック】!」

「うおっ!?」

 手を掴まれていても、光を放つこの魔法なら使える。
 ちょうど手のひらが上を向いてたし。
 この隙に男から離れて、次の魔法。

「【ワイド・ライトアロー】!」

 広がる光の矢で、男の服を柱に縫い付けた。
 私が魔法を解かない限り、この刺さった矢は抜けないよ。

「魔法研究所に強盗に入るなんてアホですか?」

「こ、このっ……!」

「さて、どうやって懲らしめましょうか……」

「服なんて知ったことか! こうなったら、てめーだけでも」

「ミアビーム!」

「ぎゃああああ!」

 ライトアローのはずなのに、なぜか当たった相手を痺れさせるミアビーム。
 目から放たれる不思議な光線。久しぶりに使ってみた。

「てめーだけでも……何です?」

「てっ、てめーだけでもさら」

「もういっちょビーム!!」

「ぎゃひぃぃいっ!!」

「ねぇ……まだたっぷり魔力あるんだけど、次はどうしようか?」

「や……やめときます……。すみませんでした……」

 男は諦めたみたいで大人しくなった。
 とりあえず、大事にならなくて良かったかな。

「ミアさん! カノン課長に連絡したら、フィオル課長と一緒に来るそうです!」

 フィオルさんも来るの?
 私の上司なんだから、そりゃ来るか……。
 すごく怒りそうな気がするけど、この人大丈夫かしら。


***


 男はフィオルさんにボコボコにされたあと、回復され、またボコボコにされて回復したあと自警団に連行されて行った。

「おい、姉ちゃん……」

 姉ちゃんって、私?

「あんたには痺れたぜ……」

 物理的にだけどね……もう悪いことしちゃ駄目よ。

「ミア先輩、痺れました!」

 エマさんにはビーム当ててないでしょうよ。

「ミア……お前あいつに何したんだ?」

「ミアビームを反省するまで当てましたけど」

「ミアちゃんが無事で良かったわ~。強盗なんて、珍しいことがあるものね~」

 ほんとそうですよ。
 午前中だけの手伝いでこんなハプニングに遭遇するなんて、よほど運が悪いとしか思えないわ。

「エマちゃん、ミアちゃんから学べたかしら?」

「はい! 私もビーム出せるように頑張ります!」

 ビームは出さなくていいです。
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