コーデリア魔法研究所

tiroro

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33.ギルドのルール

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 あれから、私は終業後の魔力底上げ特訓に勤しんでいる。ついでにミルクもよく飲んでいる。
 明日は休日だし、少しくらい疲れちゃっても平気かな。
 訓練場で岩にひたすらライトアローを当てまくる私の横で、フィオルさんは風属性の魔導書を読みながら中級魔法を試している。

「疾風よ、鋭き槍となり空を裂き、敵を貫け──【ウィンドランス】!」

 岩に回転した槍の形状の風が突き刺さる。
 どの魔法も一回で習得しちゃうあたり、やっぱり課長職の人って凄い人ばかりなんだ。
 そして、そんなフィオルさんでさえ詠唱が難しいミリューガって……。

「ミア、そろそろ上がろうか」

「でも魔力的にはまだまだいけますよ?」

「最近頑張りすぎだ。ただでさえ、通常業務も行っているのに……何ごとも、ほどほどが大事なんだぞ」

 フィオルさんにストップかけられてしまった。せっかく明日休みだから、もっと頑張ろうと思ったのに……。

「帰りにレストラン寄っていこうか」

「はい、やめました!」

「可愛いやつめ」

 レストランでプリンを食べれば体力も魔力もあっという間に回復する。根拠はないけど私はそう思ってる。

「食事が終わったらミアの家に寄っていいか?」

「うちに? いいですけど、着替えは?」

「実は持ってきている」

 なんとも用意周到なことで。
 ああ、でも最近はずっと二人きりで会ってなかったから……私も職場だとフィオルさんに甘えられないし、少し寂しかったんだよね。

「本当はうちに呼んでも良かったんだけど、まだ片付けが終わってないんだよな……」

「あー……今度一緒にお掃除しましょうか」

「助かる……」

 今日はレストランでフィオルさんがいつも食べているステーキを頼んでみた。
 思ってたよりでかくて、食べきれずに結局フィオルさんに残りをお願いしてしまった。
 プリンは別腹なので大丈夫だった。


***


 アパートに着いて、しばらくは二人してベッドで横になっていた。
 フィオルさんの言う通り、あそこで特訓をやめておいて良かったかも。横になったらすぐにでも寝てしまいそうだ。
 結構疲れてたんだな……自分じゃ全然きづかなかったよ。

「ミア」

「どうしました?」

「それ!」

 いきなりそれとか言われても全然わかんないんだけど……。

「俺たち、恋人同士だよな?」

「そうですね」

「二人きりの時くらい普通に喋ってくれ」

 どういうこと?
 私、普通に喋ってるつもりだけど、田舎の変な訛り出てた?

「カエデと話してる時みたいに、俺にも話しかけてほしい……」

「それって……敬語を使わないでほしいということですか?」

「そう。俺のこともフィオルと呼んでほしい」

 敬語を使わないと、私って結構口が悪いときがあると思うんだけど……それで幻滅されたりするのも嫌なんだけどなぁ……。

「なんか、敬語を使われてると距離が空いてるみたいで寂しいんだ……」

 なんかフィオルさんが可愛いこと言ってる。
 今日は私が甘えたかったのに。
 仕方ないな……。

「先に言っておきますけど、敬語をやめて話すときつい言い方になっちゃうかもしれませんよ?」

「知ってる。なんなら、敬語でもきつい時ある」

 あら!? そうだったっけ?
 それはそれで、ちゃんと治さなきゃ。
 ナターシャさんやケイドさんにもそんな言い方しちゃってたのかな……ごめんなさい!

「じゃあ……」

 フィオルさんのことをフィオルって言おうとしたけど、うまく言葉にできない。
 恥ずかしいのもあるし、歳上にそんなこと言っていいの?っていうのもあるし……あと、慣れてないから噛みそう。

「フィオル……さん」

 ああ! ついさん付けしちゃった!
 やっぱり、なんか恥ずかしいよ!

「頑張れ、ミア」

 フィオルさんに応援されてる!?
 こういうのって、応援されたりするものなの!?

「いいか? 俺が『ミア、好きだよ』って言うから、ミアは『フィオル、私も好きよ』って言ってみてくれ」

 何その劇のセリフみたいなやつ……フィオルさんのことは好きだけどさ……私、そんなお上品な言葉は使わないよ?

「ミア……好きだよ」

 もう始まった! 今まで通りじゃ駄目なの?
 敬語でも、フィオルさんを好きな気持ちは変わらないよ!?

「ほら、ミア……」

 催促までしてくるし……もう……。

「フィオル……私も、好きよ……」

「言えたじゃないか」

 慣れてない言葉遣いして、舌が変。

「その調子でもう一回」

「……フィオル……私も好きよ」

「いいね、俺もミアが好きだからもう一度」

「フィオル私も好きよ」

「恥じらいがなくなったと思ったら今度は棒読みになった……」

 ……私は一体何をさせられてるんだろう。


***


 その後、なんやかんやあって、疲れてたからいつの間にか寝てしまって、気がついたらもう朝だった。
 まだ少し眠いけど、フィオルさんが起きる前に身だしなみ整えとこ。

「ミア、もう起きたのか……」

「ちゃんと服着てくださいよ」

「敬語に戻ってる……」

「……フィオル、ちゃんと服着て」

 すごい喜んでる……まぁいいか、本人がそれでいいなら。

「今日はどうしような……何も考えてなかった。
 ミアはどこか行きたいところは無いか?」

「特に行きたいところはないけど……買い物はしておきたいな」

「じゃあ、街に行くか」

 朝食を食べてから二人で街に向かった。
 買い物って言っても食材とかだから、全然あとでもいいんだけどね。

「家の外では敬語に戻した方がいいですよね? 誰に見られるかわからないし」

「二人で一緒にいるんだから、今更だけどな……」

 書店や雑貨を見て回って、バーゲンの服なんかも見て回ってたら、あっという間にお昼時。
 久しぶりにギルドの食堂に立ち寄った。
 ローストチキンは美味しいけど私には食べきれないから別のものにしよう。

「あら、フィオルじゃない」

 二人でテーブルに着いたら、栗色の髪の綺麗な女の人がフィオルさんに話しかけてきた。

「エレノアか。久しぶり」

 フィオルさんの知り合いかな? 元恋人とか……もしかしたら貴族の人かもしれないから、迂闊に私からは何も言わない方がいいよね。

「そちらの子は?」

「俺の大事な人だ」

「ふーん……それ、王都で流行ってるペアリングじゃない。フィオルったら、本当にその子のこと好きなんだね」

「まあな……」

 なんか、生暖かい視線を感じる……。
 フィオルさんがそんなストレートに言うもんだから、恥ずかしくなっちゃうじゃん……。

「ミア、普通にしてて大丈夫だ。
 こいつはエレノア。ギルドの冒険者で、よくここで旦那と飯食べてんだ」

「そして、俺がこいつの旦那のロイガーだ」

 なんかゴツい人が出てきた。
 いかにも戦士って感じで、右目に眼帯をしている。

「ロイガー、その目はどうしたんだ?」

「グリフォンにやられちまってな」

「私を庇って怪我しちゃって……もう、随分前なんだけどね……」

「回復役はいなかったのか?」

「ここのギルドには、ヒーラーは滅多にいないんだよ」

 うちに依頼してくれたらよかったのに。
 そうしたら、もっと早く治癒できたと思うよ。

「ちょっと失礼します」

「……なっ!?」

「今度から、怪我をしたらすぐに研究所に依頼してくださいね」

「エレノア……目が、治っちまった」

「ほ、本当に……?」

 眼帯を外すロイガーさん。
 うん、ちゃんと傷も残ってないね。魔力を上げる特訓で無詠唱で魔法を唱えた時の効果も少し上がったみたい。

「お前の綺麗な顔が……よく見えるよ」

「ロイガー……ああ、ロイガー……」

「クラムチャウダーお待たせしました」

 やっと料理が来た。これ、食べてみたかったんだ。

「もしや、あなたは聖女様か!?」

「違います。ただの研究員です」

「今のは光魔法……あなただったのね」

「ローストチキンお待たせしました」

 なんのこと?って思ったけど、たぶんあの日の暴走気味だったグランド・ヒールのことだ。
 うっかりリザレクションしちゃったけど、やらない方が良かったのかも……。

「ロイガー、エレノア。今のは内緒にしておいてくれ。
 ミアがやったとばれると、後々面倒なことになる」

「わかった。眼帯もしばらくしておくよ」

「絶対に言わないから安心して。ありがとう、ミアちゃん」

 それにしても、フィオルさんって冒険者にも知り合いいたんだ。
 エレノアさんを見た時は、もしかしたらフィオルさんの元恋人なのかなってちょっと思ったけど、ご夫妻で冒険者だったなんて。

 その後、書店でレシピ本と流行ってそうな小説を買った。
 家に帰ってから、フィオルさんにギルドで勝手に魔法を使ったことを怒られてしまって、ちょっと泣いた。
 今度から、街中では魔法を使わないように気をつけます。

「次から気をつけてくれればいいよ。幸い、あいつらが俺の友人でよかった」

「なんですぐ研究所に依頼しなかったのかな……」

「ギルドのルールで、怪我をしてギルド外に頼ったりするとランクに響くらしいんだ」

 そんなルールが……ギルドって結構厳しいんだ。

「ただ、ヒーラーが足りてないのは問題だよな。少しは考慮してルールを緩和したらいいのに」

 それで手遅れになって亡くなってしまったら取り返しがつかないのに……ギルドが決めたルールだから仕方ないか……。

 フィオルさんには怒られてしまったけど、特訓の効果はロイガーさんのおかげで確認はできたかな。
 魔力量が上がると効果もちゃんと上がるみたい。
 休みが明けたら、また特訓頑張らなくちゃ。
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