聖夜のイタズラ

結愛

文字の大きさ
上 下
2 / 8

訪れた闇

しおりを挟む
 そして、これらは全てが全て嘘ではない。

 結論からいえば、サンタクロースは存在する。ただ、その姿が人に認知されないだけだ。

 よく動画サイトなどで、サンタクロースを見ただのというものがあるが、それら全ては嘘である。サンタクロースは、人に姿を見られないように、くらましのマントを羽織るよう義務付けられているのだ。

 人間は酷く残酷だということが、もう何千年も前に発覚し、それ以来、聖夜に良からぬ事を起こさぬよう、予防をしている。

 プレゼントを運ぶのは、親に子どもが寝たら玄関に来てもらうという風潮をあらかじめ吹き込み、玄関前にプレゼントを置くだけの話である。

 不法侵入すらしていないので、サンタクロースは幸せな仕事をこなすだけだ。罪悪感を覚えての仕事など、ブラック企業以上に黒い。流石に、サンタクロースもキリストの誕生を祝っているので、差し当たりなく過ごしたいのが本音のところ。

 だがまぁ、このプレゼントはそもそもキリストの生誕を祝うおまけみたいなものなので、キリスト教信者でない家庭には、親がサンタクロースの代わりをしている。こればかりは仕方ない。

 しかし、プレゼントを運ぶサンタクロースはキリスト教信者に限るが、他のサンタクロースは、クリスマスを祝う、もしくは楽しむ国へとおもむく。



 ――聖夜の悪戯者を罰するために。



 今年のクリスマスにも、そのサンタクロースは日本に、それもスカイツリーの頂点に来ていた。




「なぁなぁ。なんで俺らは首都のみの監視なんだ?    他県にもいんだろぉ、お悪い子」
「仕方のない話だ。人口が多いところに事件が集中するのは当然の話だろう。大阪とやらにも、他の部隊が派遣されている」
「そっちは四人組だろぉ?    普通、人数少ない部隊が、人口の少ない方に行くんじゃないのか?」
「それも仕方の無い話だ。俺達二人は、稀に見る純血だからな」

 黒の、腕を覆うほどの羽織ものとズボンに、黒いサンタ帽子。中に着込んでいる衣服は、片方が赤、片方が青。


    呑気で赤いのを着ている方が白髪の通称ハク。落ち着いた口調の青いのを着ているのが黒髪の通称クロ。二人一組の、いわゆるブラックサンタクロースだ。
しおりを挟む

処理中です...