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彼ら
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「は? 誰だ――」
彼らが振り返ると、息を詰めた。攻撃を受けた訳でもない。ただ、視認してからの存在感が圧倒的であった。
さして戦闘などしているわけでもない彼らがその威圧感を受けるということは、その実とてつもないものだと安易に想像できる。
黒い帽子を被り、赤いシャツの上に黒い外套、黒いズボン。靴までも黒づくめだ。しかし、対照的に、瞳は紅く、ギラついている。暗闇の中でもわかるほどに。
黒い帽子から漏れ出る白髪は、触るまでもなくもふもふ具合が半端ないことがわかる。
こんな状況であるが、彼女は思わずにいられなかった。
(超、触りたい········!! あのふわふわ! アンゴラウサギに負けず劣らない··········!)
と、ある一種の罪を犯しそうであった。
流石に冷え冷えとした空気の中では、すぐさま冷却されるが、彼女から見れば、その髪触りは想像を絶するものらしい。
そんな彼女の思考を読み取ったのか、白髪の彼はクスリと小さく笑う。
先程とのギャップのせいか、妙な雰囲気へと早変わりした。
「お兄さんさ。今日は二十四日の晩。祝辞を述べる日だよ。キリストさんの誕生を祝わなきゃ」
「はぁ? 何言ってんだよこの餓鬼。お子様はさっさと家に帰んな」
男らは彼に近づき、大柄な体を利用して、私に近い身長――約百五十センチの彼に自身の影を覆い被せた。いつの間にか、月光が差し込み、路地裏を明るく照らす。
その途端、彼の手の中で何かが蠢いた。
最初は、ほんの一握りの影。それが徐々に肥大化していく。彼の後方と前方、どちらにも伸び、形成しているように見えた。
後ろへ伸びた方は、細い棒となり柄に。前へ伸びた方は、途中で湾曲し鎌のように。稲を刈るような鎌より、何倍もの大きさとなる。それは、彼の身丈には合わないものだ。それでも、彼は平然と、器用に手中で回してみせる。
しかし、問題はもっと別にあった。牽制用に使うにしても、もとより狭いこの空間では、満足に扱えるはずはない。
武器系統は熟知と自負している美咲は、容易に悟った。幅が百五十センチもないこの路地裏では、牽制にすらならず、寧ろ相手に隙を多く突かれることが多い。例え、男らが体術に優れていなくても、細い彼の体を絞めることは可能だ。
それに気付いたところで、美咲には何もできない。彼が美咲を助けようとしているならば、美咲が逃げれば一件落着。だが、退路はとっくに断たれてしまって、男らが出ていかねば美咲も出られない。
アスレチックのように、壁タッチして男らの頭上は飛び越えられないし、男らを土台に跳べるほど、跳び箱は得意ではない。
事の行き先を見守ることぐらいしか、できない。
せめてと思い、彼女はできる限り奥へと入った。背が壁にあたり、突き当たりだと知らせる。壁に触れている背から、体温が奪われていることを感じた。
やけに長く感じるこの時間が、とても息苦しい。
「悪いことをしちゃう、悪い子には、お仕置き、しなくちゃね」
不気味に、彼が笑った。
途端に、声を上げて、男らが腕を振り上げる。彼は距離を取るように、少し後ろへ跳んだ。だが、それだけではまだ殴られる射程に入っている。
そこで美咲は気付いた。彼の目は、全く笑っていない。その視線は、鎌の先端へと向けられていた。
彼の視線に沿って、美咲もその鎌を見やる。ほんの少し、鋭利さを物語るようにギラリと銀色に光った。
彼らが振り返ると、息を詰めた。攻撃を受けた訳でもない。ただ、視認してからの存在感が圧倒的であった。
さして戦闘などしているわけでもない彼らがその威圧感を受けるということは、その実とてつもないものだと安易に想像できる。
黒い帽子を被り、赤いシャツの上に黒い外套、黒いズボン。靴までも黒づくめだ。しかし、対照的に、瞳は紅く、ギラついている。暗闇の中でもわかるほどに。
黒い帽子から漏れ出る白髪は、触るまでもなくもふもふ具合が半端ないことがわかる。
こんな状況であるが、彼女は思わずにいられなかった。
(超、触りたい········!! あのふわふわ! アンゴラウサギに負けず劣らない··········!)
と、ある一種の罪を犯しそうであった。
流石に冷え冷えとした空気の中では、すぐさま冷却されるが、彼女から見れば、その髪触りは想像を絶するものらしい。
そんな彼女の思考を読み取ったのか、白髪の彼はクスリと小さく笑う。
先程とのギャップのせいか、妙な雰囲気へと早変わりした。
「お兄さんさ。今日は二十四日の晩。祝辞を述べる日だよ。キリストさんの誕生を祝わなきゃ」
「はぁ? 何言ってんだよこの餓鬼。お子様はさっさと家に帰んな」
男らは彼に近づき、大柄な体を利用して、私に近い身長――約百五十センチの彼に自身の影を覆い被せた。いつの間にか、月光が差し込み、路地裏を明るく照らす。
その途端、彼の手の中で何かが蠢いた。
最初は、ほんの一握りの影。それが徐々に肥大化していく。彼の後方と前方、どちらにも伸び、形成しているように見えた。
後ろへ伸びた方は、細い棒となり柄に。前へ伸びた方は、途中で湾曲し鎌のように。稲を刈るような鎌より、何倍もの大きさとなる。それは、彼の身丈には合わないものだ。それでも、彼は平然と、器用に手中で回してみせる。
しかし、問題はもっと別にあった。牽制用に使うにしても、もとより狭いこの空間では、満足に扱えるはずはない。
武器系統は熟知と自負している美咲は、容易に悟った。幅が百五十センチもないこの路地裏では、牽制にすらならず、寧ろ相手に隙を多く突かれることが多い。例え、男らが体術に優れていなくても、細い彼の体を絞めることは可能だ。
それに気付いたところで、美咲には何もできない。彼が美咲を助けようとしているならば、美咲が逃げれば一件落着。だが、退路はとっくに断たれてしまって、男らが出ていかねば美咲も出られない。
アスレチックのように、壁タッチして男らの頭上は飛び越えられないし、男らを土台に跳べるほど、跳び箱は得意ではない。
事の行き先を見守ることぐらいしか、できない。
せめてと思い、彼女はできる限り奥へと入った。背が壁にあたり、突き当たりだと知らせる。壁に触れている背から、体温が奪われていることを感じた。
やけに長く感じるこの時間が、とても息苦しい。
「悪いことをしちゃう、悪い子には、お仕置き、しなくちゃね」
不気味に、彼が笑った。
途端に、声を上げて、男らが腕を振り上げる。彼は距離を取るように、少し後ろへ跳んだ。だが、それだけではまだ殴られる射程に入っている。
そこで美咲は気付いた。彼の目は、全く笑っていない。その視線は、鎌の先端へと向けられていた。
彼の視線に沿って、美咲もその鎌を見やる。ほんの少し、鋭利さを物語るようにギラリと銀色に光った。
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