特技は有効利用しよう。

巻き込むんじゃない！

誰だよ、それは。

場の空気が思いっ切り『ちょっと！　誰かあの頭の悪い集団なんとかしろよ！』ってなカンジになっている。
が。
義妹とボンクラ王子は気付かない。

……事の重大さに、正気を取り戻したのか。
宰相子息が蒼白な顔で、信じられないモノを見る目でボンクラ王子を見ている。
こう、血の気が滝のように引いた顔で。

まぁ、マトモな状態に戻りそうな宰相子息はちょっとそこらに置いとくとして。

一つツっ込んでもいいかな？

血の繋がりは無いけれど、一応仮にもボンクラ王子の愛して止まない女義妹の義理の姉、なんだけどね？
まぁ、私の名前を知らんってのはともかく。
……ボンクラ王子よ。
お前、自分が惚れてる女義妹の家名も覚えてないのか？
この国に、ゴールデン侯爵家なんて存在しないんだが。
そこらへん、誰もツっ込まないワケ？

つい、口からポロっと出てしまった。

「……オリヴィア・ケーリッシュ嬢は……それはそれは苦労なさってるのでしょうね……」

扇で口元を隠して、ため息を一つ。
哀れみの目で、ボンクラ共を眺めてしまった。
残念にも程があるだろうが。



カッカッカッ……とヒールの音も高らかに、ケーリッシュ嬢が私に近づいてきて……。

「貴女……わたくしの苦労を理解して下さるのね！」

という言葉と共に。
がしっと両手を握りしめられた。

ケーリッシュ嬢……涙目だ。

……なんつーか。
心中お察ししてあげよう。



私の手を握りしめながら、微妙にぷるぷる震えてるケーリッシュ嬢。

あ～……。

「今まで、どなたも貴女様の苦労には気付かれなかった、という事でしょうか？」

近い。
そして、痛い。

ケーリッシュ嬢、予想外に力強いんですね。
由緒正しい公爵令嬢のわりに。

「夫となる方の穴を埋めるのは、妻となる者の勤めだ、と……。ジャン・マリー様の失敗はすべて隠蔽いんぺいする方向で来ましたの。実際に動くのは、わたくしですわ！　今までどれだけ苦労してきたか……！」

めちゃくちゃ滾たぎってますね、ケーリッシュ嬢。
ぷるぷるが止まらない。

……そーいやそんな名前だったね、第２王子って。
ボンクラ王子のクセに、名前だけ妙にコジャレたカンジで嫌だ。
性別不明なカンジで……。

まぁ、私の人生においてまったく必要ない情報だな。

どう足掻いても、ボンクラ王子はボンクラってゆー事実は変わらない。
うん。