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栄養補給。
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スズが猫又を猫様呼びする件について。
……当人曰く。
「いやさ、長いこと堪え忍んできた猫様には、敬意を示さなきゃって思っただけ。……頑張ったよ、猫様は。……そーいや、銀さんが妖猫って言ってたけど、長生きする猫のコトなのか? だとしても、50年だぞ? 50年、鎖につないで閉じ込めるってどーよ?」
猫好きとしては、許しがたい所業なのだろう。
スズは涙目になりながらも、地味に怒っていた。
腕に抱いた猫又を、大事そうに抱え込んで。
リッカとしても、錬金術師の猫又の扱いには思う所があるのだが。
「とにかく、今はここを出ましょう。……って、銀さん?」
憤るスズとリッカをそのままに、部屋の外へと警戒の目を向けていた銀竜だったが。
「まずいですね……」
眉間にシワを寄せて、静かに呟いた。
ビクッと震えたのは、スズかリッカか猫又か……。
「……銀さん、どーかしたのか?」
スズがおそるおそる銀竜へと声をかける。
銀竜は、後退してドアとの間に距離を開けて。
「どうやら、時間を取りすぎたようですね。人とは思えない大きさのナニかが、明らかな敵意を持ってこちらに……この部屋に向かってきています」
それを聞いたスズが、顔を青くしながら。
「ごめん……オレのせいだな。猫様見つけた時点で、さっさと逃げ出してりゃ良かったのに……」
謝るスズに、リッカが言った。
「ううん、仕方ないわよ。猫又さん、今にも儚くなりそうだったもの。あの様子じゃ、何か少しでもいいから食べさせなきゃって思うわよ」
慰めるリッカ。
猫又も。
「……にゃ、あの子が会いに来てくれた時に、食べる物を持って来てくれるんにゃが……。最近、あたしは硬いモノを食べるの、辛くなってきててにゃあ……。だいたい保存のきくモノって、基本的に硬いじゃにゃあか。あの子が置いてってくれるモノも、硬いモノばかりでにゃあ。それも得体の知れないナニかが、ぜーんぶ食べて……って、あれ?」
猫又は首を傾げて。
「……あのナニか……生きてるモノなのかにゃ?」
どうやら、謎生物が母親を思う子の差し入れた食料を横取りしてたらしい……。
「……猫様、無事で良かったな……」
スズが言った言葉に、リッカが青ざめていた。
そんなことをしている間にも、とても人とは思えないナニかは、着々とこちらに近づきつつあるらしい。
銀竜は、2人と1匹を背後に庇い、軋む音が近づくドアを睨み付けていた。
ぎし、ぎし、とドアが軋み。
不意に、すべての音が消えた。
次の瞬間、ドガンッと音を立ててドアが吹き飛んだ。
リッカが張っていた結界に、降り注ぐドアとドア周りの壁の破片。
ドアがあったはずの場所には、ぽっかりと大きな穴が開き。
そこには生まれつき貝殻を持たない、軟体生物にムリヤリ手足を付けて、2足歩行させてるような不気味生物が、でーん、と存在していた。
それを見たスズが、茫然と呟く。
「……え? ジャ○・ザ・○ット?」
──スズ達が──
2階で巨大な謎生物に遭遇した頃。
「……そー言えば、玄関入ってから場所移動してないですよね? 俺ら」
玄関入ってすぐのフロアで何度も修羅場を繰り広げ、向こうから襲ってくるモノが途絶えた頃。
俺とミヤさんは、ひと休みと称して軽く甘いモノをかじっていた。
リッカさんが大好きな、メレンゲ(焼)をかりかり、と。
「そうだね……。じゃあ、大きめな反応を示す所に殴り込んでみようか?」
ミヤさんが、かりかりやりながら聞いてきた。
小刻みにかじる様は小動物さながら、なんだが。
……正直、物騒なイメージがまとわりついて離れない。
メレンゲ(焼)をかりかりやってる俺らを見て、ジェイがなんとも言えない顔をしている。
「お前ら……よくこの状況でモノが食えるな……」
え?
肉片も粘塊も塵芥にして飛ばして片付けたんだから、ここには何も残ってないじゃん?
ミヤさんが、ジェイに言った。
「お腹いっぱいにしててもダメだし、空腹過ぎてもダメなんだよ? 程々に、胃にモノを入れておかないと、動けなくなる」
「エネルギー補給は大事だぞ? ……お前も食うか?」
ほれ、と俺が差し出したメレンゲ(焼)を、ジェイはゲンナリとした顔で見やり。
「……ムリ」
首を横に振って断ってきた。
あそ。
ま、俺が食うからいいけどな。
俺は取り出したメレンゲ(焼)を、かりかり、とかじった。
……当人曰く。
「いやさ、長いこと堪え忍んできた猫様には、敬意を示さなきゃって思っただけ。……頑張ったよ、猫様は。……そーいや、銀さんが妖猫って言ってたけど、長生きする猫のコトなのか? だとしても、50年だぞ? 50年、鎖につないで閉じ込めるってどーよ?」
猫好きとしては、許しがたい所業なのだろう。
スズは涙目になりながらも、地味に怒っていた。
腕に抱いた猫又を、大事そうに抱え込んで。
リッカとしても、錬金術師の猫又の扱いには思う所があるのだが。
「とにかく、今はここを出ましょう。……って、銀さん?」
憤るスズとリッカをそのままに、部屋の外へと警戒の目を向けていた銀竜だったが。
「まずいですね……」
眉間にシワを寄せて、静かに呟いた。
ビクッと震えたのは、スズかリッカか猫又か……。
「……銀さん、どーかしたのか?」
スズがおそるおそる銀竜へと声をかける。
銀竜は、後退してドアとの間に距離を開けて。
「どうやら、時間を取りすぎたようですね。人とは思えない大きさのナニかが、明らかな敵意を持ってこちらに……この部屋に向かってきています」
それを聞いたスズが、顔を青くしながら。
「ごめん……オレのせいだな。猫様見つけた時点で、さっさと逃げ出してりゃ良かったのに……」
謝るスズに、リッカが言った。
「ううん、仕方ないわよ。猫又さん、今にも儚くなりそうだったもの。あの様子じゃ、何か少しでもいいから食べさせなきゃって思うわよ」
慰めるリッカ。
猫又も。
「……にゃ、あの子が会いに来てくれた時に、食べる物を持って来てくれるんにゃが……。最近、あたしは硬いモノを食べるの、辛くなってきててにゃあ……。だいたい保存のきくモノって、基本的に硬いじゃにゃあか。あの子が置いてってくれるモノも、硬いモノばかりでにゃあ。それも得体の知れないナニかが、ぜーんぶ食べて……って、あれ?」
猫又は首を傾げて。
「……あのナニか……生きてるモノなのかにゃ?」
どうやら、謎生物が母親を思う子の差し入れた食料を横取りしてたらしい……。
「……猫様、無事で良かったな……」
スズが言った言葉に、リッカが青ざめていた。
そんなことをしている間にも、とても人とは思えないナニかは、着々とこちらに近づきつつあるらしい。
銀竜は、2人と1匹を背後に庇い、軋む音が近づくドアを睨み付けていた。
ぎし、ぎし、とドアが軋み。
不意に、すべての音が消えた。
次の瞬間、ドガンッと音を立ててドアが吹き飛んだ。
リッカが張っていた結界に、降り注ぐドアとドア周りの壁の破片。
ドアがあったはずの場所には、ぽっかりと大きな穴が開き。
そこには生まれつき貝殻を持たない、軟体生物にムリヤリ手足を付けて、2足歩行させてるような不気味生物が、でーん、と存在していた。
それを見たスズが、茫然と呟く。
「……え? ジャ○・ザ・○ット?」
──スズ達が──
2階で巨大な謎生物に遭遇した頃。
「……そー言えば、玄関入ってから場所移動してないですよね? 俺ら」
玄関入ってすぐのフロアで何度も修羅場を繰り広げ、向こうから襲ってくるモノが途絶えた頃。
俺とミヤさんは、ひと休みと称して軽く甘いモノをかじっていた。
リッカさんが大好きな、メレンゲ(焼)をかりかり、と。
「そうだね……。じゃあ、大きめな反応を示す所に殴り込んでみようか?」
ミヤさんが、かりかりやりながら聞いてきた。
小刻みにかじる様は小動物さながら、なんだが。
……正直、物騒なイメージがまとわりついて離れない。
メレンゲ(焼)をかりかりやってる俺らを見て、ジェイがなんとも言えない顔をしている。
「お前ら……よくこの状況でモノが食えるな……」
え?
肉片も粘塊も塵芥にして飛ばして片付けたんだから、ここには何も残ってないじゃん?
ミヤさんが、ジェイに言った。
「お腹いっぱいにしててもダメだし、空腹過ぎてもダメなんだよ? 程々に、胃にモノを入れておかないと、動けなくなる」
「エネルギー補給は大事だぞ? ……お前も食うか?」
ほれ、と俺が差し出したメレンゲ(焼)を、ジェイはゲンナリとした顔で見やり。
「……ムリ」
首を横に振って断ってきた。
あそ。
ま、俺が食うからいいけどな。
俺は取り出したメレンゲ(焼)を、かりかり、とかじった。
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