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番外編・たとえそれが特殊でも。
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実際に彼らが活動していたのは、極短い期間だった。
総合ギルド、マドゥーニー支部の支部長、クリス・ヘイロンにとっては、瞬き程度の時間。
その短期間に、どれほどの──。
「あれは、騒ぎを起こしたとか、やらかしたとか言うべき事かしらね……」
時は夜。
やらかした、と言われる彼らが自分達の世界に帰ってから、2日程経過していた。
クリスは、自宅で愛し子と共に、彼らがごっそりと残していった酒の実から作った清酒を楽しんでいた。
つまみにも、彼らが残していった料理を。
彼らは、いくつかの料理のレシピを残していった。
が、それは彼らが……彼が作っていた料理のすべてではない。
「調味料が足りないーっ!って叫んでたけど。……これ以上、美味しいモノで溢れてるのかしらね、あの子達の世界って……」
なんて恐ろしい……と若干フザケて言ったクリスに、彼の愛し子たるリドラは。
「ん……スズ達が言ってたけど、特に美味しいモノを追求する国民性だとか。あと、作る人にもよるって……」
「あぁ……。何をどうあがいても、マトモな食事を作れないって人、いるものね」
「……リッカは、普通だけどコウ程美味しく作れないって言ってたし、スズの姉さん達は、料理させちゃいけないって。……なんか……お湯沸かすくらいとか……」
リドラが思い出しながら、言う。
んー……と、小首を傾げて言う様は、クリスには、ひたすら可愛らしく見えて。
──癒しって、こういうのを言うのよねー……。
クリスは、昼間の騒ぎを思い出し少しゲンナリしながら、腕の中のリドラを軽く抱きしめ直した。
……彼らは2人掛けのソファに並んで座って……いたハズだが。
いつの間にか、リドラはクリスの膝の上に座っていたのである。
リア充滅べ。
たとえそれが特殊でも。
ハタから見たら、金髪ロン毛の細マッチョの膝の上に乗る儚げ美青年、という一部の層にはご褒美な情景である。
昼間──パンダと愉快な仲間達によって、昏睡状態にされた上で、町の宿に叩き込まれていた教会の連中。
それが、次々と覚醒して、ギルドに乗り込んできたのだ。
その時ギルドでは、コウ達が国に帰った事、世話になった礼として、酒の実を山程残していった……と、マドゥーニー支部所属のギルド員達に告知され。
置き土産を配り始めていた。
わいわいと、大騒ぎしてるところに乗り込んできた教会の連中は。
大量の酒の実を見て、こんなに良いモノがあるのなら、自分達に渡すのが道理であろう……などと宣い。
その場にいたギルド員全員から、圧力を伴う程の殺気を向けられた。
顔色を無くし、怯えた様子の教会連中だったが、妙なプライドに支えられた司祭が、本来の務めである真珠について。
更に人魚お気に入り、と思われているチームについて、情報収集を試みた。
3日前にも聞いてたハズだが。
彼らは、まったく覚えてないようだ。
「たいそう美しい青年に、美少年美少女と、見た目も楽しいチームと聞き及んでいますよ。そんなに美しい者達であれば、ギルドなどではなく教会に所属すべきでしょう」
それは完全に、司祭の趣味だろう。
お前らみたいなモンが来たから、アイツらが国に帰っちまったんだ!
ギルド員達に、口々に責め立てられた司祭は。
すべての物事が思ったように行かず、逆ギレした。
そして、尼僧は無責任に司祭を煽り、教会騎士達は威圧してくる。
ギルド員達は、教会連中の威圧を真正面から受けて立つ……という構図になった。
いくら騎士達が付いてるって言っても、数じゃあギルド員達には敵わないんだが。
教会連中は、どうやら引っ込みがつかなくなってたようだ。
しばらくの間、にらみ合いが続いて……。
結局、ワタシの威圧で全員の心へし折って、力押しで止めたのよね……。
クリスは遠い目になった。
目的がどーにもブレブレになってる教会連中にもう一度、真珠が欲しいならリシュの町あたりに行って、個人的に人魚と話しなさい。
あぁ、でもリシュにはすでにお貴族サマが先行してるから、あなた達の望みは叶わないかもね?
そう言ったら、司祭は顔色悪くして、慌てて出て行ったわね。
なんていうか……自分達は特別な人種だ、とか思ってたようだけど。
結構浅はかで、転がしやすい人達だったわね。
特に司祭。
尼僧は司祭を狂信してるようだし。
教会騎士は、上の言うことしか聞かない脳筋集団みたいだし。
……大丈夫かしら教会……。
いや、組織として、ね?
クリスはちょっと心配になった。
が。
自分の手が届く範囲──マドゥーニーの町と、リドラだけ守れればそれで良いか。
あっさりと教会連中の事を思考から切り捨てた。
今は、愛し子を愛でる方が大事だ。
総合ギルド、マドゥーニー支部の支部長、クリス・ヘイロンにとっては、瞬き程度の時間。
その短期間に、どれほどの──。
「あれは、騒ぎを起こしたとか、やらかしたとか言うべき事かしらね……」
時は夜。
やらかした、と言われる彼らが自分達の世界に帰ってから、2日程経過していた。
クリスは、自宅で愛し子と共に、彼らがごっそりと残していった酒の実から作った清酒を楽しんでいた。
つまみにも、彼らが残していった料理を。
彼らは、いくつかの料理のレシピを残していった。
が、それは彼らが……彼が作っていた料理のすべてではない。
「調味料が足りないーっ!って叫んでたけど。……これ以上、美味しいモノで溢れてるのかしらね、あの子達の世界って……」
なんて恐ろしい……と若干フザケて言ったクリスに、彼の愛し子たるリドラは。
「ん……スズ達が言ってたけど、特に美味しいモノを追求する国民性だとか。あと、作る人にもよるって……」
「あぁ……。何をどうあがいても、マトモな食事を作れないって人、いるものね」
「……リッカは、普通だけどコウ程美味しく作れないって言ってたし、スズの姉さん達は、料理させちゃいけないって。……なんか……お湯沸かすくらいとか……」
リドラが思い出しながら、言う。
んー……と、小首を傾げて言う様は、クリスには、ひたすら可愛らしく見えて。
──癒しって、こういうのを言うのよねー……。
クリスは、昼間の騒ぎを思い出し少しゲンナリしながら、腕の中のリドラを軽く抱きしめ直した。
……彼らは2人掛けのソファに並んで座って……いたハズだが。
いつの間にか、リドラはクリスの膝の上に座っていたのである。
リア充滅べ。
たとえそれが特殊でも。
ハタから見たら、金髪ロン毛の細マッチョの膝の上に乗る儚げ美青年、という一部の層にはご褒美な情景である。
昼間──パンダと愉快な仲間達によって、昏睡状態にされた上で、町の宿に叩き込まれていた教会の連中。
それが、次々と覚醒して、ギルドに乗り込んできたのだ。
その時ギルドでは、コウ達が国に帰った事、世話になった礼として、酒の実を山程残していった……と、マドゥーニー支部所属のギルド員達に告知され。
置き土産を配り始めていた。
わいわいと、大騒ぎしてるところに乗り込んできた教会の連中は。
大量の酒の実を見て、こんなに良いモノがあるのなら、自分達に渡すのが道理であろう……などと宣い。
その場にいたギルド員全員から、圧力を伴う程の殺気を向けられた。
顔色を無くし、怯えた様子の教会連中だったが、妙なプライドに支えられた司祭が、本来の務めである真珠について。
更に人魚お気に入り、と思われているチームについて、情報収集を試みた。
3日前にも聞いてたハズだが。
彼らは、まったく覚えてないようだ。
「たいそう美しい青年に、美少年美少女と、見た目も楽しいチームと聞き及んでいますよ。そんなに美しい者達であれば、ギルドなどではなく教会に所属すべきでしょう」
それは完全に、司祭の趣味だろう。
お前らみたいなモンが来たから、アイツらが国に帰っちまったんだ!
ギルド員達に、口々に責め立てられた司祭は。
すべての物事が思ったように行かず、逆ギレした。
そして、尼僧は無責任に司祭を煽り、教会騎士達は威圧してくる。
ギルド員達は、教会連中の威圧を真正面から受けて立つ……という構図になった。
いくら騎士達が付いてるって言っても、数じゃあギルド員達には敵わないんだが。
教会連中は、どうやら引っ込みがつかなくなってたようだ。
しばらくの間、にらみ合いが続いて……。
結局、ワタシの威圧で全員の心へし折って、力押しで止めたのよね……。
クリスは遠い目になった。
目的がどーにもブレブレになってる教会連中にもう一度、真珠が欲しいならリシュの町あたりに行って、個人的に人魚と話しなさい。
あぁ、でもリシュにはすでにお貴族サマが先行してるから、あなた達の望みは叶わないかもね?
そう言ったら、司祭は顔色悪くして、慌てて出て行ったわね。
なんていうか……自分達は特別な人種だ、とか思ってたようだけど。
結構浅はかで、転がしやすい人達だったわね。
特に司祭。
尼僧は司祭を狂信してるようだし。
教会騎士は、上の言うことしか聞かない脳筋集団みたいだし。
……大丈夫かしら教会……。
いや、組織として、ね?
クリスはちょっと心配になった。
が。
自分の手が届く範囲──マドゥーニーの町と、リドラだけ守れればそれで良いか。
あっさりと教会連中の事を思考から切り捨てた。
今は、愛し子を愛でる方が大事だ。
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