目標:撤収

庭にハニワ

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既に番外編じゃあない。20

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騎士達も魔術師達も、暗部の人間も右往左往している──暗部の者は、人知れずにこっそりと──状況で。

これもパニック状態と言っていいんだろうか?

尚人は、冬至越しに和樹に詰め寄る魔術師長を。

「……じーさん、血管切れそーだけど……」

大丈夫か? 等と考えながら、この状況を観察していた。

そんな尚人の近くで。

「……身体強化って、こんな感じかな?」

と、春香は自分の腕に強化魔法を付与する事を覚えて、千里は。

「……うわ、浄化水って出た。じゃ、消毒薬ってイケる? ……イケたよ……」

と、医療に関するモノを出せるようになってた。

戦闘職の勇者達も。

「あ、肉体強化って、こーゆー……」

と、身体強化系の魔法をなんとかモノにし始めて……。
騎士達が、点目になっている。

「クソ、おれも炎とか出したいのに……!」
「炎の拳とか、炎の槍とかカッコいいけどねえ……。火傷しそうで、なんだか怖いよ……」

三十路五十路のおっさんコンビは、戦闘職なのに身体強化以外の魔法も欲しいらしい。
が、どーにも余計なコトを考えてしまい、上手くいかないようだ。

そして一応はオトナ女子の2人は。

「……なんか、ムリしなくてもいいかな? って……」
「そですね、先生。ワタシ達、後衛職ですし」

やる気ゼロ、だった。



とにかく、和樹から出来るだけのコトを聞き出した魔術師長は。

「むぅ……。これ以上は閣下から聞き出さねばならぬ、ということか……」

結界を凝視する。
……何の変化も見られない。
とぅるんっとしたカンジなのに、想像以上に強固な結界に、騎士達も魔術師達もお手上げだ。

プライドを逆撫でされている魔術師達を華麗にスルーして、冬至は和樹に言った。

「なぁ……魔法って、こんな感じか?」

自分の目の前に、手のひらサイズの水の玉をあっさりと作ってみせる冬至。
空いた口がふさがらない魔術師長。

「勇者の中の勇者たるお主まで……ん? いや、良いのか? ん? ん?」

ちょっと混乱気味な魔術師長。

「お、冬至さんも魔法使えた」
「おっさん化学式くらいは覚えてるし。水平リーベ僕の船ってね。……今は違う覚え方するのかね?」
「さあ? ……あ」

冬至と話していた和樹が、ナニかに気付いたのか、結界に目を向ける。

「進藤? ナニか起きるのかな?」

尚人が和樹に問う。
と。

「結界解除されるな」

和樹がそう言うと同時に。
ふ、と音も無く乳白色のドームは消滅した。
そして現れたのは。

「だ……団長!?」
「団長!? いったい何が!」

そこには膝から崩れ落ち、四つん這いになって項垂れている団長と、右腕をぐるぐる回しながら。

「……まぁ、こんなモンか」

と、平然と立つ真言が居た。



「お、真こ──」
「貴様! 団長に何をした!」

和樹が真言に声をかけるが、それを打ち消す勢いで騎士達が叫ぶ。

「……本来ならば、団長が紅林に何かしたハズ、なんですが、ね……」

尚人は、どこか生温かい目で項垂れた団長と、いきり立つ騎士達を眺め。

「完全に、立場が逆ですよね。紅林が完全に強者の立場に居る、という……。何だこれ」



魔術師長が、結界から出てきた真言に近づいて、話を聞こうとする、が。
頭に血が昇った騎士達が真言に詰め寄り、口々に団長にナニをした! と言い募っている。
何人かは団長に近づいて、何があったのか聞き出そうとしているが、団長は。

「…………」

何も言わず、身動き一つせず。
騎士達の、真言に対するヘイトが急激に上がっていく中。
ついに我慢しきれなくなった騎士の1人が。

「聞いてるのか? 貴様!」

手を出した。
が。
思いっ切り空振った。
真言がするっと避けたからだ。
それを見て、更にエキサイトする騎士達。
手ぶらの真言に、各々武器を手に飛び掛かっていった。
その場に居た騎士の半数──30人以上が一斉に。



驚いたのは、魔術師長。
わざわざ異世界から召喚した勇者に、物理的に挑む騎士達が……まさか、こんなにも居るとは思いもよらず。

「よさんか、バカ者ども!」

自国に騎士達に、魔術を行使する訳にもいかず──魔術師長がやったなら、騎士として使い物にならなくなる恐れがある為──一瞬躊躇した。
その隙に。
真言を中心に、騎士達がバタバタと倒れていった。

……は?

魔術師長は、今度こそ呼吸が止まった。
驚き過ぎて。
傍で見ていた冬至が、慌てて魔術師長に活を入れ、危うきを脱したが。

「……いったい何が起きたんじゃ? 魔術か……じゃが、何の予兆も痕跡も無い……」

呆然とする魔術師長の前に、いつの間にか真言がやって来て。

「騎士1人につき、一発入れただけですよ。……ちょっと威圧も込めて」

30余人を相手取った後とは思えないほど、平然とした様子で。
頭をガリガリと掻いていた。
















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