目標:撤収

庭にハニワ

文字の大きさ
320 / 374

既に番外編じゃあない。28

転移系魔法使えんなら、お偉いさんは日帰りでいいんじゃね? いやむしろ日帰りしろ。

王族相手に、平然とそんな事を言う真言に魔術師長は、ちょっと遠くを見ながら。

「……やるべき事を済ませておられるからのぅ。多少のワガママは通ってしまうんじゃよ」

ため息混じりで、こめかみのあたりをぐりぐりと擦る魔術師長だった。
……このじーさん、実は結構苦労性だったりするんだろうか。
そんなじーさんの背中を、ポン、と叩いて。

「まぁまぁ。焼きたての串焼きでもどうぞ?」
「騎士達が作ってくれた、スープ? シチュー? も有りますよ」

じーさんの両サイドに陣取った、冬至と春香が魔術師長を宥めるように言った。
尚人と千里は、新しく火に掛けられた串を真剣に見ている。
焼き加減が気になるらしい。
ウサギの肉だが、パッと見て鳥肉との区別はつかないだろう。
気にするな。
タンパク質には違いない。

真言と和樹は。

「あの王族連中、オレらみたいにテントで寝る気か?」
「一度くらいは従軍訓練して……る、かね? 甘やかされた王族だったら、そんな殊勝なコトしないで王城でふんぞり返ってそーなモンだが。今回は勇者達と一緒だから、まぁ、いいか……ってなカンジで王が許可したんじゃね?」
「……あー」

なんか納得した和樹だ。
そして水魔法で出した水球で手を洗って、焼きたての串焼きにかぶりついた。

「なんか懐かしいカンジ……」

だろうね。
去年、似たような事……つか、同じ事してたモンね。
詳しくは覚えてないだろうけど。

真言も焼けたウサギの串焼きを手に取る。
ちょっと硬めの肉を、お構い無しにかぶりつく。
……パッと見た目はイケてるのに、やってる事はワイルドだ。
女子連中と騎士の一部がサワサワしてるが、完全スルーの方向で。

「……足りっかな……」

軽く眉間にシワを寄せて、真言は追加分を狩りに行こうか考えていた。



「なぁ、魔術師長さんよ」

冬至が、鳥の串焼きを堪能しているじーさんに聞いた。

「まぁ王子方はいいや。高貴な方でも野郎に違いないし。騎士達と一緒に夜営するのもいいだろうよ。だが、姫サマはどうすんだ? 女子達と一緒に泊まるのか?」

王女とお付きの侍女と護衛の女騎士の3人は、女子高校生に混じっても、ぷかぷか浮くコト間違い無しだ。
いくら同年代でも、育った環境が違い過ぎる。
共通の話題が無いワケじゃないが……。

「……女子は恋愛系の話してれば、すぐに仲良くなるんじゃないかなぁ」

尚人の意見に、納得したりムッとしたりする真言達だった。
ムッとしたのは春香と千里。
そんな娘ばかりじゃない! と言いたげな目で、納得してる野郎どもをニラんでいた。



どーやら、騎士達の野外訓練も兼ねているらしいこの演習。
夜間哨戒──夜中の見張りとか、騎士達が交代制で行うので、勇者達はゆっくり休んで下さい……だと。
どこまで甘やかすつもりかね?

真言は、完全にキャンプ気分の勇者達を、生温かい目で見ていた。

「……まぁ、キャンプファイヤーとかナンとか言い出さないだけマシかね?」
「いや、言ってたぞ? 清水が」
「……あのおっさんは……」

真言と和樹は、自分達に割り当てられたテントの前で、小さな焚き火を起こしていた。
お湯を沸かして、摘みたてのハーブでハーブティーとシャレこんでいる。
そして2人でこそこそと……。
必要無いかも知れない……と言いつつイタズラを仕掛けようとしている。

「……カレー粉っポいのは作った」
「片栗粉っポいのは、王城の厨房からもらってきた。……べっこう飴の作り方と引き換えに」

今再びの落とし穴。
加齢臭……じゃない、カレー臭のまとわりつくまだらな粘液と共に……。
去年のイタズラの再演だ。
……和樹はゲーム内でのコトだと思っているが、な。

楽しげに、こそこそしてる真言達を眺めながら、冬至と尚人は魔術師長と、転移魔術についてのお話中だ。
時空がどーの、とか言われても……と、頭を抱えたくなる冬至達。
正直、質問したコトをうっすらと後悔し始めていた。








あなたにおすすめの小説

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

アドリアナさんはヒロインでした。

みなせ
ファンタジー
誰かが机を叩きました。 教室が鎮まると、アドリアナさんはメアリーさんに向かって尋ねました。 アドリアナさんによる、メアリーさんの断罪の始まりです。 小説家になろうさんにも掲載しています。

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜

シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。 アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。 前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。 一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。 そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。 砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。 彼女の名はミリア・タリム 子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」 542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才 そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。 このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。 他サイトに掲載したものと同じ内容となります。

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。