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既に番外編じゃあない。39
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清めの塩と讃美歌は、地味に効果アリだった。
塩をぶつけられたレイスやグールは声無き悲鳴を上げて、レイスは消滅。
讃美歌の効果でゾンビやグール、スケルトンは動きが鈍り、物理的な攻撃が通り易くなった。
攻撃対象の動きが鈍れば、未熟な勇者達でも何とか出来る。
さすがに、森の中で火炎魔術を行使しようとしたヤカラは騎士達が全力で阻止したが。
……森の中での大火力ぶっ放し、とか……。
大規模森林火災とか引き起こすつもりだったのか。
清めの塩=浄化の炎。
よし、ゾンビを荼毘にふしてやる!
……みたいな、三段論法だったよーだけど。
ちょっと冷静に考えろや。
森の中でうごうご蠢くモノに放火して、うろついた結果、周囲に燃え広がったらどーすんだよ。
責任取れんの?
自分達だけは、何があっても絶対大丈夫……とか。
都合の良いコト考えてんの?
それとも、いまだにゲーム感覚なのかよ。
お前ら、いい加減にしろよな。
と、和樹がやらかそうとした勇者──火炎術師──を、半ば呆れた目で見ていると。
「進藤」
あ~……うるせーのが来た……か?
和樹は仕方なく。
「おー。柴田、どーした」
勇者のヒナの1人、柴田が寄って来た。
王女が何とかしようと企む程度には、見てくれの良い、でも思い込みの激し目な、ちょっと残念なイケメンだ。
例え相手が野郎でも、自分の事をチヤホヤして当然、とか思っている微妙に勘違い野郎でもある。
が。
常日頃、真言の顔を近くで見ている和樹的には、あ……うん……で? 程度である。
……っつーか、野郎のツラなんか、ぶっちゃけどーでもいいわ。
っていうのが和樹の、ついでに真言の本音でもある。
特に真言はツラのカワのせいで、散々迷惑被ってきたからな。
いと哀れ。
「こんな大変な時に、紅林はどこに行ったんだ? みんな──」
柴田は。
真言の不在を和樹に問いただす。
……と、いうよりも、今までに溜まってたイライラや鬱憤を、ぶつけるように糾弾しようとした柴田だった。
いいところを、全部真言に持っていかれたと思っている。
本人に言うだけの度胸は、無いようだ。
そんな時。
最前列の方から叫ぶ声がした。
今まで聞こえていたような、勇ましいモノではなく。
信じられないモノを見た悲鳴混じりの声が。
そちらに意識を向けると。
「……なんだ、アレ……?」
そこに居たのは、黒い人影。
……に、しては、大きく。
体長は3メートル近く、黒い甲冑に、大振りの剣。
どこかおどろおどろしい騎士が──。
──って、え?
「──っ、11ぃっ!」
騎士団と勇者達の前に現れた死霊騎士──デス・ナイトは。
その後ろから走り込んできた真言に、背後から縦に真っ二つにされた。
……え?
左右に分かれて崩れていく黒い甲冑の中から、モヤモヤと黒い煙が湧いたが。
それもまた、真言の持つ精霊武具──今は刃渡り1メートル程の片刃剣となっている──が、切り裂いて消滅させた。
いつしか、塩を撒く手も、讃美歌も止まっていた。
ぽかーん、と開いた口がふさがらない勇者達。
騎士の大半は、真言の持つ精霊武具に目が釘付けだ。
「……さすがは精霊武具」
「ああ。……いつか、自分も……」
団長は、訳知り顔で、何度も頷き。
「さすがは閣下です」
と、何故か誇らしげだ。
「真言。済んだのか?」
この場の空気をマルっと無視して、和樹が真言に声を掛けた。
デス・ナイトが崩れ、レイスその他の死霊軍団が姿を消した事により、この戦闘は終了か……と、一息ついた一同だったが。
「………………」
真言は、いまだに戦闘モードのままだ。
「おぅ、真言よ。……まだ、何かあんのか?」
冬至が金棒担いで、ピリピリしてる真言の傍らに近づいた。
寄ってきた地獄の鬼に、真言は。
「おー、冬至さん。……悪いな、こっちに後2体近づいて……って、分かってて聞いてるよな?」
人の悪い顔で笑う真言と、視線を合わせて鬼が笑う。
「……冗談じゃないぞ? まだ続くのか!」
叫ぶ、清水。
今回、拳闘師は頑張った。
かなり頑張って、骨格標本とか殴り続けた。
清水は、殴っても蹴りつけても数の減らない死霊の行進に、当人は気付かぬまま怯えていた。
当人としても、いかに自分が生徒達から冷たい目で見られているか、少しは理解していたようだ。
やらかし4人衆のうち3人が、なかなかに見目の良い妙齢の女子、というのも頑張りのうちの何割かの理由になったのかもしれない。
……部屋付きメイドだけじゃ、満足出来ないのか?
脈無しっポい王女の事も、いまだに諦めてないようだし。
……色ボケも大概にしろや。
塩をぶつけられたレイスやグールは声無き悲鳴を上げて、レイスは消滅。
讃美歌の効果でゾンビやグール、スケルトンは動きが鈍り、物理的な攻撃が通り易くなった。
攻撃対象の動きが鈍れば、未熟な勇者達でも何とか出来る。
さすがに、森の中で火炎魔術を行使しようとしたヤカラは騎士達が全力で阻止したが。
……森の中での大火力ぶっ放し、とか……。
大規模森林火災とか引き起こすつもりだったのか。
清めの塩=浄化の炎。
よし、ゾンビを荼毘にふしてやる!
……みたいな、三段論法だったよーだけど。
ちょっと冷静に考えろや。
森の中でうごうご蠢くモノに放火して、うろついた結果、周囲に燃え広がったらどーすんだよ。
責任取れんの?
自分達だけは、何があっても絶対大丈夫……とか。
都合の良いコト考えてんの?
それとも、いまだにゲーム感覚なのかよ。
お前ら、いい加減にしろよな。
と、和樹がやらかそうとした勇者──火炎術師──を、半ば呆れた目で見ていると。
「進藤」
あ~……うるせーのが来た……か?
和樹は仕方なく。
「おー。柴田、どーした」
勇者のヒナの1人、柴田が寄って来た。
王女が何とかしようと企む程度には、見てくれの良い、でも思い込みの激し目な、ちょっと残念なイケメンだ。
例え相手が野郎でも、自分の事をチヤホヤして当然、とか思っている微妙に勘違い野郎でもある。
が。
常日頃、真言の顔を近くで見ている和樹的には、あ……うん……で? 程度である。
……っつーか、野郎のツラなんか、ぶっちゃけどーでもいいわ。
っていうのが和樹の、ついでに真言の本音でもある。
特に真言はツラのカワのせいで、散々迷惑被ってきたからな。
いと哀れ。
「こんな大変な時に、紅林はどこに行ったんだ? みんな──」
柴田は。
真言の不在を和樹に問いただす。
……と、いうよりも、今までに溜まってたイライラや鬱憤を、ぶつけるように糾弾しようとした柴田だった。
いいところを、全部真言に持っていかれたと思っている。
本人に言うだけの度胸は、無いようだ。
そんな時。
最前列の方から叫ぶ声がした。
今まで聞こえていたような、勇ましいモノではなく。
信じられないモノを見た悲鳴混じりの声が。
そちらに意識を向けると。
「……なんだ、アレ……?」
そこに居たのは、黒い人影。
……に、しては、大きく。
体長は3メートル近く、黒い甲冑に、大振りの剣。
どこかおどろおどろしい騎士が──。
──って、え?
「──っ、11ぃっ!」
騎士団と勇者達の前に現れた死霊騎士──デス・ナイトは。
その後ろから走り込んできた真言に、背後から縦に真っ二つにされた。
……え?
左右に分かれて崩れていく黒い甲冑の中から、モヤモヤと黒い煙が湧いたが。
それもまた、真言の持つ精霊武具──今は刃渡り1メートル程の片刃剣となっている──が、切り裂いて消滅させた。
いつしか、塩を撒く手も、讃美歌も止まっていた。
ぽかーん、と開いた口がふさがらない勇者達。
騎士の大半は、真言の持つ精霊武具に目が釘付けだ。
「……さすがは精霊武具」
「ああ。……いつか、自分も……」
団長は、訳知り顔で、何度も頷き。
「さすがは閣下です」
と、何故か誇らしげだ。
「真言。済んだのか?」
この場の空気をマルっと無視して、和樹が真言に声を掛けた。
デス・ナイトが崩れ、レイスその他の死霊軍団が姿を消した事により、この戦闘は終了か……と、一息ついた一同だったが。
「………………」
真言は、いまだに戦闘モードのままだ。
「おぅ、真言よ。……まだ、何かあんのか?」
冬至が金棒担いで、ピリピリしてる真言の傍らに近づいた。
寄ってきた地獄の鬼に、真言は。
「おー、冬至さん。……悪いな、こっちに後2体近づいて……って、分かってて聞いてるよな?」
人の悪い顔で笑う真言と、視線を合わせて鬼が笑う。
「……冗談じゃないぞ? まだ続くのか!」
叫ぶ、清水。
今回、拳闘師は頑張った。
かなり頑張って、骨格標本とか殴り続けた。
清水は、殴っても蹴りつけても数の減らない死霊の行進に、当人は気付かぬまま怯えていた。
当人としても、いかに自分が生徒達から冷たい目で見られているか、少しは理解していたようだ。
やらかし4人衆のうち3人が、なかなかに見目の良い妙齢の女子、というのも頑張りのうちの何割かの理由になったのかもしれない。
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……色ボケも大概にしろや。
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