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既に番外編じゃあない。57
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「まぁぶっちゃけた話さ、この国の連中は、俺らを元の世界に帰す気なんかサラサラ無い。最初っから取り込む気満々だったろ? 男には美女、美少女を付けて。女には美少年美青年を付ける、とかさ」
本当に分かりやすいハニートラップですありがとうございます。
そう言って、笑っている和樹に一つ頷いて。
更に真言は話す。
「まんまと引っ掛かってるヤツの多いこと……。王子王女も身体張って、異世界人の取り込みに走るってな。ある意味確実に何らかの力──能力を持った、新しい血筋が欲しいってのもあるんじゃね? とにかく王城から出さないで囲い込み、とか。……国主導で行われた教育つか、この世界についてのお話──あれを一般常識とは認めねぇぞ。大書庫で仕入れた情報と、かなり隔たりがあったしな」
ぶっちゃけ信用出来ない、と言いきる真言。
真言が何か一言言う度に、一同の顔色は悪くなっていく。
──話す真言と、和樹以外の五人の顔色が。
和樹は。
「……あー、やっぱりか」
と、素直に納得している。
「情報遮断して、自分達に都合の良い話だけ刷り込んで駒にするって、わりと有りがちな話だよな~」
ラノベ及びネット小説じゃ、よくある話だよな、確かに。
「それに、さ──」
真言の話は、まだ続く。
「俺ら、戦争に行く前提でここに居るワケだけど。戦争終わった後、元の世界に帰してやる……なんて、ただの一度も、ひとっ言も言ってねーんだわ、この世界の住人。つか、王。つか、魔術師長」
「……そう言えば……」
尚人が、うつむいてた顔を上げて言った。
「報酬は思いのまま、とか言ってましたけれど、確かに一度も元の世界に帰してやる……みたいな話は──」
「あぁ、言ってなかったな確かに。……ちくしょう」
冬至も、頭をガリガリと掻きながら言った。
思い返してみれば、この世界……この国の連中は、自分達の都合ばかり言っていた。
詳しく話を掘り下げようとしても、気分の盛り上がった一部の者がグイグイ話を進めていって。
なんだかうやむやなうちに、全員が戦争参加……つか、王国側の言いなりになっていた、とゆー事実……。
こんな状況では、1人2人がナニか言っても流されるだけだったよな。
ナニかを言ったのは、冬至と尚人。
だいたいは、状況に流された。
悟も、春香と千里も流された。
ちょっとだけ、わくわくしたのは……ナイショだ。
真言と和樹?
こいつら、ムダなコトはしない、と眺めていたクチだ。
頭の逆上せたヤツに、ナニを言ってもムダ、と見切りを付けていただけだ。
……冷静っつーか、何つーか……。
「まぁ、こっちサイドも帰る、なんて話も言葉自体も出てこなかったろ? つい最近まで、な。……思考誘導とかされてたかもな?」
その場に居た全員が、真言を見た。
思考誘導って……ナニそれ怖い。
「あー、そーいや全然聞かないな。帰りたいとか何とかさ。確かにおかしいわ」
和樹が頷きながら言った。
「オレも、お前が帰る帰る言ってるから、惑わされずにいられたのかもな? ……なぁ? ひょっとして? あのゲームの時みたく、勝手に帰れるとか?」
和樹が期待を込めた目を真言に向けた。
え、どゆコト?
目が点になった冬至達。
真言は、ワケが分からん、といった感じの冬至達への説明も兼ねるコトにした。
「俺ら……俺と和樹その他が参加した某ゲームのβ板っつーか……。その時のゲーム内の魔法やら何やら、今、使えるんだわ。念話やら異次元倉庫やら……。何でか? なんて知んねーぞ。多分、この世界に拉致られた時にナニかにナニかされたんだろーな、多分」
多分って二回言ったぞコイツ。
本当は拉致られる前から魔法使い放題だったクセに、な。
相変わらず、息をするよーにウソをつくヤツだよ。
ポカーンとする者と疑いの目を向ける者。
生暖かい目で見てくる者等。
いろんな反応をする冬至達だが。
「リアルチートだけじゃないのか紅林……。なんか、もういいや。お前のやるコトだしな……」
ははは……と、乾いた笑いを漏らす悟。
正直、それが一番楽な反応だと思うぞ。
精神的に楽だろ? 受け入れてしまえば、さ。
在るがままに、有りのままに、さ。
それでいいんだ山下、とばかりに和樹がめっちゃ良い顔で親指を立てて。
「お仲間♪」
とか悟に言ってるけど。
そのあたりをサラッとスルーして真言は。
「っつーワケで。俺は、帰ろうと思えば元の世界に帰れる術を持ってる。……お前ら、どーする? 帰りたいか?」
俺は帰るが。
さらりと言った真言の言葉は、ある意味、悪魔の囁きにも似て。
本当に分かりやすいハニートラップですありがとうございます。
そう言って、笑っている和樹に一つ頷いて。
更に真言は話す。
「まんまと引っ掛かってるヤツの多いこと……。王子王女も身体張って、異世界人の取り込みに走るってな。ある意味確実に何らかの力──能力を持った、新しい血筋が欲しいってのもあるんじゃね? とにかく王城から出さないで囲い込み、とか。……国主導で行われた教育つか、この世界についてのお話──あれを一般常識とは認めねぇぞ。大書庫で仕入れた情報と、かなり隔たりがあったしな」
ぶっちゃけ信用出来ない、と言いきる真言。
真言が何か一言言う度に、一同の顔色は悪くなっていく。
──話す真言と、和樹以外の五人の顔色が。
和樹は。
「……あー、やっぱりか」
と、素直に納得している。
「情報遮断して、自分達に都合の良い話だけ刷り込んで駒にするって、わりと有りがちな話だよな~」
ラノベ及びネット小説じゃ、よくある話だよな、確かに。
「それに、さ──」
真言の話は、まだ続く。
「俺ら、戦争に行く前提でここに居るワケだけど。戦争終わった後、元の世界に帰してやる……なんて、ただの一度も、ひとっ言も言ってねーんだわ、この世界の住人。つか、王。つか、魔術師長」
「……そう言えば……」
尚人が、うつむいてた顔を上げて言った。
「報酬は思いのまま、とか言ってましたけれど、確かに一度も元の世界に帰してやる……みたいな話は──」
「あぁ、言ってなかったな確かに。……ちくしょう」
冬至も、頭をガリガリと掻きながら言った。
思い返してみれば、この世界……この国の連中は、自分達の都合ばかり言っていた。
詳しく話を掘り下げようとしても、気分の盛り上がった一部の者がグイグイ話を進めていって。
なんだかうやむやなうちに、全員が戦争参加……つか、王国側の言いなりになっていた、とゆー事実……。
こんな状況では、1人2人がナニか言っても流されるだけだったよな。
ナニかを言ったのは、冬至と尚人。
だいたいは、状況に流された。
悟も、春香と千里も流された。
ちょっとだけ、わくわくしたのは……ナイショだ。
真言と和樹?
こいつら、ムダなコトはしない、と眺めていたクチだ。
頭の逆上せたヤツに、ナニを言ってもムダ、と見切りを付けていただけだ。
……冷静っつーか、何つーか……。
「まぁ、こっちサイドも帰る、なんて話も言葉自体も出てこなかったろ? つい最近まで、な。……思考誘導とかされてたかもな?」
その場に居た全員が、真言を見た。
思考誘導って……ナニそれ怖い。
「あー、そーいや全然聞かないな。帰りたいとか何とかさ。確かにおかしいわ」
和樹が頷きながら言った。
「オレも、お前が帰る帰る言ってるから、惑わされずにいられたのかもな? ……なぁ? ひょっとして? あのゲームの時みたく、勝手に帰れるとか?」
和樹が期待を込めた目を真言に向けた。
え、どゆコト?
目が点になった冬至達。
真言は、ワケが分からん、といった感じの冬至達への説明も兼ねるコトにした。
「俺ら……俺と和樹その他が参加した某ゲームのβ板っつーか……。その時のゲーム内の魔法やら何やら、今、使えるんだわ。念話やら異次元倉庫やら……。何でか? なんて知んねーぞ。多分、この世界に拉致られた時にナニかにナニかされたんだろーな、多分」
多分って二回言ったぞコイツ。
本当は拉致られる前から魔法使い放題だったクセに、な。
相変わらず、息をするよーにウソをつくヤツだよ。
ポカーンとする者と疑いの目を向ける者。
生暖かい目で見てくる者等。
いろんな反応をする冬至達だが。
「リアルチートだけじゃないのか紅林……。なんか、もういいや。お前のやるコトだしな……」
ははは……と、乾いた笑いを漏らす悟。
正直、それが一番楽な反応だと思うぞ。
精神的に楽だろ? 受け入れてしまえば、さ。
在るがままに、有りのままに、さ。
それでいいんだ山下、とばかりに和樹がめっちゃ良い顔で親指を立てて。
「お仲間♪」
とか悟に言ってるけど。
そのあたりをサラッとスルーして真言は。
「っつーワケで。俺は、帰ろうと思えば元の世界に帰れる術を持ってる。……お前ら、どーする? 帰りたいか?」
俺は帰るが。
さらりと言った真言の言葉は、ある意味、悪魔の囁きにも似て。
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