目標:撤収

庭にハニワ

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既に番外編じゃあない。58

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あまりにも唐突な、元の世界への帰還についての話に。

「……僕達は、本当に思考誘導されていたようです、ね……」

力無く、自嘲する尚人。
冬至もまた。

「ああ、今日まで元の世界に帰るって考え自体がどっかに行ってた。嫁と子供の事は、はっきり覚えてんだけどな。……それが、帰るってコトに繋がんなかった」

おかしいだろ……と、首を振る冬至。
悟も、春香も千里も言うべき言葉が見つからない。
自分達もまた、帰る、という認識がどこかに消えていたからだ。

「ちなみに、オレは真言と一緒に帰るぞ」

空気を読まない和樹が言った。

「さすがに、お付き合い始めたばっかの彼女放置とか、無いわ~」
「もう半年近く放置してるコトになんのか?」
「……いや、あの人結構他のトコロで自由気ままに楽しくやってんだろーけど」
「……腐愉快な仲間達が、わさっと居るモンな~……」

真言と和樹は、2人揃って遠い目になった……。

が。
何の前触れもなく急にノロケ出した和樹を、じとっとした目で見る悟。

「……リア充かよ」

けっ。

「……いや、いやいや。リア充の最終形態が居るだろ、ここに」

和樹がジト目で見てくる悟の意識を、冬至の方へと向けさせた。

「15の純情貫いた結果、嫁と子供を立派に養う一家の大黒柱だぞ」
「おいコラ、おっさんを引き合いに出すんじゃねぇよ。……確かに、嫁との出逢いは中坊の頃だが」
「リア充の成れの果てってヤツだよな」
「……紅林、言い方ってモンがあるでしょうが……」

言いたい放題である。



ちょっと女子2人の顔色が微妙だが、真言は強引に話を元に戻す。

「リア充の和樹は帰る、と。んじゃ、同じくリア充な冬至さんも帰るか?」

真言に水を向けられた冬至はあっさりと。

「おう。おれも帰るぞ。いい加減、嫁と子供が恋しい」

そんなコトを宣う冬至を、生暖かい目で見ていた尚人もまた、帰還を望んだ。
元の世界で、やりたい事があるそうだ。
なんとなく黒いモノを吐き出してる悟も、「ここの生活がツラい……」と帰還を望み。
女子2人も悟に便乗した。
……女子には女子の都合があるモンな。
いろんな意味で。

真言は一つ頷くと。

「最低でも、俺込みで7人は帰る方向で、と」

そーゆーカンジになった。



「で、帰るにあたって、だ。……まさか、何の代償も無く、すんなり帰れるとは思ってないだろ? ちなみにこの王国のヤツらは、俺らを拉致る為に自分トコの属国一つ、潰してるから」
「……へ?」

サラッとぶちまけられた、この国の不都合な真実。
絶句する一同。

「潰すって……いや、まさかそんな……」

笑って否定しようとする悟だったが。
眉間にくっきりとシワを寄せて、シブい表情の冬至を見て、顔色を変えた。

「……まさか、国一つ、皆殺し……? いや、冗談だろ、誰がそんな……。ってか、紅林! そんなコト、いつ知ったんだよ!」
「前に団長〆た時」
「そんなコトもあったね、と」

しれっとウソぶく真言に、思い出して納得してる和樹。

「まぁ、当然っちゃ当然だよな。世界を飛び越えるんだぞ。俺の帰還術式も、魔素──ここじゃ、魔力か──魔力必須だし。対象人数が多けりゃ多いほど、術式に必要な魔力も膨大になるわな」

和樹がポン、と手を打ち、あぁ! とばかりに笑顔を浮かべて言った。

「『嘆きの森』に行った時、お前が何度もふらっと1人で居なくなったのって、ナニげに魔力集めしてたからか!」

真言は頷いて答えた。

「まぁ、な。目的は、魔物狩っての魔力集めな。……ついでに食い扶持も狩ってたワケだが」

さすがに、警備がガチガチに固められてる王城から、するっと抜け出すワケには行かなかったからな~。

そう言って、和樹と2人で笑ってる真言。
そんな緊張感のカケラも無い2人を、ナナメに見ているのは尚人だ。

……紅林なら、1人でするっと王城抜け出して、何くわぬ顔でするっと戻って来そうなモノですが。

……口に出しても、この場に居る誰も否定しないと思うぞ。
当人以外、な。










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