370 / 374
既に番外編じゃあない。77
しおりを挟む
中庭にやって来た帰還希望者達をざっと見ながら、真言が言った。
「? ……どーやら深沢は、残る事にしたよーだな」
「ん? あぁ、そーだな。あそこに居るな。彼女? と2人、べったり引っ付いてさ」
和樹が、中庭への入り口を示した。
確かに。
残留希望っポい奴らがちらほらと、彼氏彼女を連れてこっちを見ている。
どーやらお見送りしてくれるつもりらしいな。
伝令神の暴露騒ぎからこっち、まったく姿を見ない一部の大人達とは違うね。
……物理的に身動き出来ない、第2王子のお妃候補(確定)なんてヤツも居るけどな。
わざわざのお見送りとか、微妙に律儀だな。
まぁ、先の人生、心に決めたヤツらのコトはもういいや。
真言は、ざっくりと残留組の事をスルー。
帰還希望組に声を掛けた。
「んじゃ、帰還希望者は、ちょっとこっち来いー。……そう、その円の中心あたりに集まれー」
来い来い、と手招きする真言。
和樹も同じように手招きしている。
ぞろぞろと集まった帰還希望者達。
真言と和樹。
冬至、尚人、悟。
春香と千里。
職能勇者から青山と田中。
バスの運ちゃん加藤。
それに、こっちの世界で出来上がったカップル1組と、元の世界にお相手が居るヤツ2人。
そして、この世界にはどーにも馴染めない! と女子が1人。
男女の割合的に、野郎の方が多いとか。
「普通、現実見てんのは女の方だと思ってたんだけどな」
真言がぽつり、と言った。
和樹が半笑いで返した。
「いや、だから愛に生きるんだろ?」
「……安易に生きるワケか」
真言と和樹のジャレ合いに、冬至が乗っかる。
「思いの外、夢見る乙女が多かったってダケだろ」
「うわ、始末に終えねぇ」
「やっぱ愛じゃなくて安易だろ」
「紅林……上手いコト言ってんじゃないですよ」
「いや、別に上手くは無くね!?」
なんだろう……。
委員長まで乗っかってるよ……。
そこはかとなく緊迫していたハズの雰囲気が、台無しになった。
悟と千里は、半目になった。
「ねぇ、紅林君? 楽しそうなところ悪いんだけど……」
なんとなく生温かい空気の中、春香が真言に声を掛けた。
その場に居た全員が、春香に注目した。
「…っ……なんか、魔術師の人達が……」
注目を受けた春香が、ちょっとビクッとしながら、どこか怯えたように言った。
ん?
改めて、結界の外を見る帰還希望者達。
「げ」
「うっわ」
「えええ……」
結界の外では、魔術師達が滾っていた。
顔を真っ赤に染めて、口々に何か叫んでいる魔術師連中。
が。
聞き取れないほどに、各々が同時に何事かを好き放題に叫んでいるので全力でスルーした。
そのうち血圧上がってぶっ倒れるヤツ出てくんじゃね?
と、どこか他人事のよーに、興奮する魔術師連中を眺める真言。
まぁどーでもいいか。
じゃ、そろそろ……。
と、真言が異次元倉庫からごっそりと、人数分の魔石を引っ張り出した。
その様を見て、更に色めき立つ魔術師連中……。
あ。
「真言よー、本当に倒れたヤツが出始めたぞー」
和樹が、状況の経過報告をしている。
「……倒れたのをそのまま放っとくんじゃなくて、せめて後方に下げてあげればいいのに……」
尚人が、呆れたように言った。
そんな外野の騒ぎは一切スルーして、真言は帰還希望者達に一つずつ魔石──魔物の胎内から出たモノよりも、内包する魔力が強い──を、手渡して。
「絶対に手放すな。死にたくないだろ?」
と、さりげなく脅迫。
微妙な顔をする帰還希望者達に、ざっくりと手順を説明する。
とりあえず、円の中心に集まって、その石をしっかり握ってろ。
後は俺に任せろ。
……だって、さ。
ざっくり過ぎないか?
思わず和樹の方を見た帰還希望者達だったが。
和樹は見事な半笑いだった。
その顔には、しょーがねーよ真言だし、と、付き合いの長い者だけが理解した、妥協と諦めがまとわりついていた。
そんな中。
「閣下!」
第二騎士団団長を始めとした、『嘆きの森』の演習に参加した騎士の一団がやって来て。
「お帰りになるそうですが……。我ら一同、またのお越しをお待ちしておりますぞーっ!」
言いたい事だけ言って、妙にサワヤカな笑みを残して去って行った……。
えええええ……。
「? ……どーやら深沢は、残る事にしたよーだな」
「ん? あぁ、そーだな。あそこに居るな。彼女? と2人、べったり引っ付いてさ」
和樹が、中庭への入り口を示した。
確かに。
残留希望っポい奴らがちらほらと、彼氏彼女を連れてこっちを見ている。
どーやらお見送りしてくれるつもりらしいな。
伝令神の暴露騒ぎからこっち、まったく姿を見ない一部の大人達とは違うね。
……物理的に身動き出来ない、第2王子のお妃候補(確定)なんてヤツも居るけどな。
わざわざのお見送りとか、微妙に律儀だな。
まぁ、先の人生、心に決めたヤツらのコトはもういいや。
真言は、ざっくりと残留組の事をスルー。
帰還希望組に声を掛けた。
「んじゃ、帰還希望者は、ちょっとこっち来いー。……そう、その円の中心あたりに集まれー」
来い来い、と手招きする真言。
和樹も同じように手招きしている。
ぞろぞろと集まった帰還希望者達。
真言と和樹。
冬至、尚人、悟。
春香と千里。
職能勇者から青山と田中。
バスの運ちゃん加藤。
それに、こっちの世界で出来上がったカップル1組と、元の世界にお相手が居るヤツ2人。
そして、この世界にはどーにも馴染めない! と女子が1人。
男女の割合的に、野郎の方が多いとか。
「普通、現実見てんのは女の方だと思ってたんだけどな」
真言がぽつり、と言った。
和樹が半笑いで返した。
「いや、だから愛に生きるんだろ?」
「……安易に生きるワケか」
真言と和樹のジャレ合いに、冬至が乗っかる。
「思いの外、夢見る乙女が多かったってダケだろ」
「うわ、始末に終えねぇ」
「やっぱ愛じゃなくて安易だろ」
「紅林……上手いコト言ってんじゃないですよ」
「いや、別に上手くは無くね!?」
なんだろう……。
委員長まで乗っかってるよ……。
そこはかとなく緊迫していたハズの雰囲気が、台無しになった。
悟と千里は、半目になった。
「ねぇ、紅林君? 楽しそうなところ悪いんだけど……」
なんとなく生温かい空気の中、春香が真言に声を掛けた。
その場に居た全員が、春香に注目した。
「…っ……なんか、魔術師の人達が……」
注目を受けた春香が、ちょっとビクッとしながら、どこか怯えたように言った。
ん?
改めて、結界の外を見る帰還希望者達。
「げ」
「うっわ」
「えええ……」
結界の外では、魔術師達が滾っていた。
顔を真っ赤に染めて、口々に何か叫んでいる魔術師連中。
が。
聞き取れないほどに、各々が同時に何事かを好き放題に叫んでいるので全力でスルーした。
そのうち血圧上がってぶっ倒れるヤツ出てくんじゃね?
と、どこか他人事のよーに、興奮する魔術師連中を眺める真言。
まぁどーでもいいか。
じゃ、そろそろ……。
と、真言が異次元倉庫からごっそりと、人数分の魔石を引っ張り出した。
その様を見て、更に色めき立つ魔術師連中……。
あ。
「真言よー、本当に倒れたヤツが出始めたぞー」
和樹が、状況の経過報告をしている。
「……倒れたのをそのまま放っとくんじゃなくて、せめて後方に下げてあげればいいのに……」
尚人が、呆れたように言った。
そんな外野の騒ぎは一切スルーして、真言は帰還希望者達に一つずつ魔石──魔物の胎内から出たモノよりも、内包する魔力が強い──を、手渡して。
「絶対に手放すな。死にたくないだろ?」
と、さりげなく脅迫。
微妙な顔をする帰還希望者達に、ざっくりと手順を説明する。
とりあえず、円の中心に集まって、その石をしっかり握ってろ。
後は俺に任せろ。
……だって、さ。
ざっくり過ぎないか?
思わず和樹の方を見た帰還希望者達だったが。
和樹は見事な半笑いだった。
その顔には、しょーがねーよ真言だし、と、付き合いの長い者だけが理解した、妥協と諦めがまとわりついていた。
そんな中。
「閣下!」
第二騎士団団長を始めとした、『嘆きの森』の演習に参加した騎士の一団がやって来て。
「お帰りになるそうですが……。我ら一同、またのお越しをお待ちしておりますぞーっ!」
言いたい事だけ言って、妙にサワヤカな笑みを残して去って行った……。
えええええ……。
33
あなたにおすすめの小説
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
貴方のために
豆狸
ファンタジー
悔やんでいても仕方がありません。新米商人に失敗はつきものです。
後はどれだけ損をせずに、不良債権を切り捨てられるかなのです。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?
キーノ
ファンタジー
私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。
ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?
自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?
私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ!
※紹介文と本編は微妙に違います。
完結いたしました。
感想うけつけています。
4月4日、誤字修正しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる