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昔むかし…ってほどでもなく。3
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自分のせいで不幸になったと主張しているらしい姐さんとやらですが、正直よくある話、そして漠然とした話過ぎていて、まったく分かりません。誰の話だ?と聞きましたが、名前を聞いても分かりません。何故その姐さんとやらに、お前は尽くしているのか、と問い掛けるとそいつはキョトンとした顔でしばし考え込み
…なんでだろう…と。
聞いているのはこちらの方だ、と脱力しながらも、そいつの肩に術式──この数年に、機関の魔法使いが開発した目と耳──を打ち込んで、わざと逃がしました。
そんな事が何度か続きまして、どうやら姐さん、と呼ばれているのが女ギツネだと分かった所で、潰すことにしました。
アジトと言うか、根城と言うか、どこに居るのか、手下は何人居るのか。すべて把握しておりましたが、敢えて小さな、少人数のグループから潰していきました。1人だけわざと逃がし、その後を追って次のグループを…。
狙われている、という圧力をかける為と…鬱憤晴らしを兼ねて。
はっきりとした理由も分からぬまま、おかしな事を仕掛けられたのですから、最低でも倍返しは基本でしょう。
どんな理由か知りませんが、その女ギツネのせいで、主様のおそばを離れなければならなくなったので──あの、リッカ様?自分は何かおかしな事を申しましたでしょうか……いつものことだから気にするな…はあ…主様がそうおっしゃるのであれば…。多少気になりますが…わかりました。
とにかく、そうやって手下共のアジトを一つずつ潰していったのです。
一晩に一つずつ、敢えて時間をかけて、ゆっくりジワジワと…。
どうせなら、二度と妙な事は出来ないように確実に潰してやろう、と…。
さて。
姐さん呼びされておりました女ギツネですが、手下共を締め上げているうちに、娼館送りの後の経緯が分かってきました。
一年ほど送られた先の、嗜虐趣味というか、猟奇的というか…そのような客専門の娼館にいたようですが、隙を見て逃げ出して、フラフラしている所を賊共に捕まって奴隷に売られ、売られた先を逃げ出して…。何度かそのような事を繰り返し、最終的に落ち着いたのが、ちょっと名の知れた盗賊団の首領の情婦だった、ということでした。
昔機関に仕込まれた手練手管を使って、上手く首領を誑し込んだ後は、ゆっくりとその犯罪集団を籠絡して、完全に己が手足としたそうで。
…そんな事が出来るのなら、もっと早くにやっていれば…。少なくとも、カル1人に妙に執着するような事が無ければ…とも思いましたが、過ぎたことです。
犯罪集団を一つ丸ごと手に入れた後は、マクリール国の周辺をうろついていたようで。
…一時期程度の低いヤカラが国の周辺をうろついていたな…と思い当たることもありましたが、短期間でしたので些細な事だと流しておりましたね。
その頃自分は機関の長として、王族の直属となり、任務で国を出る事はありませんでしたし。
…あの、王女殿下の我がまま気ままを、なんとかするのに精一杯になってましたね…。
さて。そのようにゆっくりと追い詰めていきましたら、面白いように慌てふためいて…。
反撃されるとは、まったく思いもしなかったようでして。
これはもう、一息にすべて片付けてしまおうか、と考えていたところ、思いもよらぬ助けがやって参りました。
彼女の名はカーラ。
プラチナブロンドの髪を長く伸ばし、ゆったりと一本に編んで背に垂らして…。緑色の瞳の年齢不詳の美女。
昔の姿を知っている者としては、よくもまあ化けたものだ、と呆れるばかりですが…。
ええ。
以前、彼女は彼で。カル、と呼ばれておりました。
今では王城の侍女頭で、騎士団長の奥方という……リッカ様?その辺を詳しく、と申されましても…。主様?…はあ…気にせず続けよ、と…畏まりました、続けます。
彼女は王の命令で自分の手助けに来た、と言いました。
王は主様方を崇めておりますので、この先主様方に危害を加えるやも知れぬ、と彼女を派遣したそうで。
あなたとわたしの2人が揃えば、あの程度の集団、潰すのは訳もないこと。そうでしょう?…もっとも、ほとんどあなたが1人で潰しちゃったようだけれど。
そう言って、蠱惑的に微笑むカーラは本当に女にしか見えません。中身を知っているので惑うことなどありませんが。
2人で女ギツネのアジトに乗り込み、手下共を片付けた後、奥の部屋にこもっていた女ギツネの元へ向かいました。
必要以上に煌びやかな部屋には、どこかだらしない印象の女が1人。自称かわいそうな女の子が成長した姿がありました。女ギツネです。
我々の姿を目にした女ギツネは、ようやく迎えに来た、と狂喜したのです。
…なんでだろう…と。
聞いているのはこちらの方だ、と脱力しながらも、そいつの肩に術式──この数年に、機関の魔法使いが開発した目と耳──を打ち込んで、わざと逃がしました。
そんな事が何度か続きまして、どうやら姐さん、と呼ばれているのが女ギツネだと分かった所で、潰すことにしました。
アジトと言うか、根城と言うか、どこに居るのか、手下は何人居るのか。すべて把握しておりましたが、敢えて小さな、少人数のグループから潰していきました。1人だけわざと逃がし、その後を追って次のグループを…。
狙われている、という圧力をかける為と…鬱憤晴らしを兼ねて。
はっきりとした理由も分からぬまま、おかしな事を仕掛けられたのですから、最低でも倍返しは基本でしょう。
どんな理由か知りませんが、その女ギツネのせいで、主様のおそばを離れなければならなくなったので──あの、リッカ様?自分は何かおかしな事を申しましたでしょうか……いつものことだから気にするな…はあ…主様がそうおっしゃるのであれば…。多少気になりますが…わかりました。
とにかく、そうやって手下共のアジトを一つずつ潰していったのです。
一晩に一つずつ、敢えて時間をかけて、ゆっくりジワジワと…。
どうせなら、二度と妙な事は出来ないように確実に潰してやろう、と…。
さて。
姐さん呼びされておりました女ギツネですが、手下共を締め上げているうちに、娼館送りの後の経緯が分かってきました。
一年ほど送られた先の、嗜虐趣味というか、猟奇的というか…そのような客専門の娼館にいたようですが、隙を見て逃げ出して、フラフラしている所を賊共に捕まって奴隷に売られ、売られた先を逃げ出して…。何度かそのような事を繰り返し、最終的に落ち着いたのが、ちょっと名の知れた盗賊団の首領の情婦だった、ということでした。
昔機関に仕込まれた手練手管を使って、上手く首領を誑し込んだ後は、ゆっくりとその犯罪集団を籠絡して、完全に己が手足としたそうで。
…そんな事が出来るのなら、もっと早くにやっていれば…。少なくとも、カル1人に妙に執着するような事が無ければ…とも思いましたが、過ぎたことです。
犯罪集団を一つ丸ごと手に入れた後は、マクリール国の周辺をうろついていたようで。
…一時期程度の低いヤカラが国の周辺をうろついていたな…と思い当たることもありましたが、短期間でしたので些細な事だと流しておりましたね。
その頃自分は機関の長として、王族の直属となり、任務で国を出る事はありませんでしたし。
…あの、王女殿下の我がまま気ままを、なんとかするのに精一杯になってましたね…。
さて。そのようにゆっくりと追い詰めていきましたら、面白いように慌てふためいて…。
反撃されるとは、まったく思いもしなかったようでして。
これはもう、一息にすべて片付けてしまおうか、と考えていたところ、思いもよらぬ助けがやって参りました。
彼女の名はカーラ。
プラチナブロンドの髪を長く伸ばし、ゆったりと一本に編んで背に垂らして…。緑色の瞳の年齢不詳の美女。
昔の姿を知っている者としては、よくもまあ化けたものだ、と呆れるばかりですが…。
ええ。
以前、彼女は彼で。カル、と呼ばれておりました。
今では王城の侍女頭で、騎士団長の奥方という……リッカ様?その辺を詳しく、と申されましても…。主様?…はあ…気にせず続けよ、と…畏まりました、続けます。
彼女は王の命令で自分の手助けに来た、と言いました。
王は主様方を崇めておりますので、この先主様方に危害を加えるやも知れぬ、と彼女を派遣したそうで。
あなたとわたしの2人が揃えば、あの程度の集団、潰すのは訳もないこと。そうでしょう?…もっとも、ほとんどあなたが1人で潰しちゃったようだけれど。
そう言って、蠱惑的に微笑むカーラは本当に女にしか見えません。中身を知っているので惑うことなどありませんが。
2人で女ギツネのアジトに乗り込み、手下共を片付けた後、奥の部屋にこもっていた女ギツネの元へ向かいました。
必要以上に煌びやかな部屋には、どこかだらしない印象の女が1人。自称かわいそうな女の子が成長した姿がありました。女ギツネです。
我々の姿を目にした女ギツネは、ようやく迎えに来た、と狂喜したのです。
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