87 / 374
昔むかし…ってほどでもなく。4
しおりを挟む
こちらの命を狙っておきながら、さあこれから殺し合い、という時におかしな事を言い出した女ギツネ。
…訳が分かりませんでした。
誰と見間違っているのやら、こんな…女の姿になっていても、カルの事は覚えているとでも言うのか…。
何故か、女ギツネが見ているのは、女になったカルではなく、自分でした。
女ギツネは自分を見つめて戯言を言い出しました。
何年アナタを待っていたと思っているの?いい加減待ちくたびれたわ。それなのに、女連れで来るなんて、どういうこと?アタシ以外の女なんか殺してよ!殺してしまいなさいよ!
…イカレてる?
カーラと顔を合わせて、首を傾げてしまいました。
まあ、これを片付ければすべて終わり。
自分もカーラも武器を手に、女ギツネへと向かいました。
すると急に女ギツネの様子が変わり、先ほどとは違うことを喚き始めました。
カルを殺したのはお前だ!お前がいなければ、カルが死ぬことも無かったのに!
そう言い出したかと思えば。
なんで助けてくれなかったの…。アンタならアタシを助けるのなんて、訳もなかったハズなのに、なんで見捨てたの?
今度は泣き言を言い出しました。
…1人の中に、何人かの違う女が入っているようでした。
壊れているわね。
カーラは静かに言いました。
さっさと片付けてしまいましょう。旦那様が待ちわびているもの。
割とためらいは無いようでした。
あら、だってわたしは努力したもの。
常に誰かに何かしてもらうことしか考えて無い、何かしてもらうのが当然、なんて思っている甘ったれなんかに興味なんて持てないわ。…この子はずっと変わらないままだったのね。それに…わたしを……オレを殺したのはお前だろう?マリー・ルイーズ・エミリー・ローズ・ステイシア。
…それ1人の名前じゃあ無いだろう…。
どうりで覚えていなかった訳です。
女ギツネは狂ったように喚き続けました。
ウソだウソだウソだ!
カルを殺したのは白キズ!
アタシを見捨てたのは白キズ!
助けてくれなかったのは白キズ!
悪いのは白キズなんだ!
白キズ!白キズ!白キズ!
お前が全部悪いんだ!
お前があぁぁぁ!
女ギツネの足元から、黒い影が一気に吹き上がり、刃となって自分達に斬りつけてきました。…何故か自分の顔を重点的に狙って。
手にした武器…小刀で応戦しようにも実体の無い影でしたので、傷付けられるままとなってしまいました。救いは影の一片が小さく、さほど威力が無い、ということくらいでしょうか。鬱陶しいことに変わりは無いですが。
何事か喚き散らしている女ギツネに、カーラは言いました。
お前が全部他人のせいにして、すべて他人任せにして、自分では何一つしようとしなかったから、こんなことになったのだろう。だいたいお前がオレに纏わりついたのは、白キズに見せつける為だったろうが。まったく相手にされて無かったがな。そんなことも分からずにオレにすべて依存しやがって…。何をするにも何時でも何処でも纏わりついてきて、どれだけ鬱陶しかったことか…。
後半完全に男に戻ったカーラは、心底嫌そうでした。そして、女ギツネの攻撃が自分に集中しているのを良い事に、少しずつ立ち位置を変えながら、女ギツネを惑乱させようとしていました。
…今まで溜まっていたモノを、吐き出していただけかも知れませんが…。
第一、お前がオレを刺した時も、お前が機関の連中のオモチャになってた時も、趣味の偏った娼館に売り飛ばされた時も、白キズは居なかったぞ。その頃白キズは、国に居なかったんだからな。外国で任務に着いていた白キズに、何をどう出来たっていうんだ?
カーラ──カルの言葉に、女ギツネは過剰反応しました。
ウソだウソだウソだ──!
アタシのそばには、いつも白い髪の男が──!
白髪頭なんか、そこら中にいくらでも居るだろうが。白髪っぽい頭も、オレを含めりゃ尚更。お前の頭の中じゃあどうなっているんだか知らないけどな?オレは──わたしはお前なんかに付きまとわれて、正直迷惑していたし、白キズはお前ごときには一切興味が無かったわ。ねぇ、あなた。
途中から女に戻って話し続けたカーラは、自分に向かって微笑みかけました。元男とは到底思えない、艶のある微笑みを。
女ギツネはすっかり混乱して、いつしか影の刃片も数が減り、浮遊しているだけになっていました。ブツブツと呟いている女ギツネ。
ウソだ──カルはアタシを愛していたし、白キズはいつもアタシを見ていたし……。
そんな女ギツネにカーラは。
お前を愛していた事など無かったわ。白キズはどう?
カーラの問いに、自分は答えました。
今回、こんな馬鹿げた事に巻き込まれるまで、そんな子供がいた事すら忘れていたな。それに…なあ、カーラ。
あら、なにかしら?
お前は道端の石ころの一つ一つにいちいち気を配るか?気にせず歩くだろう。
そうね。特に何も思わないわね。
と、言うより気付かないことの方が多いわね。だって道端に転がっているだけなんですもの。端にあるモノなんて、気にしないわ。
そうでしょう?
…訳が分かりませんでした。
誰と見間違っているのやら、こんな…女の姿になっていても、カルの事は覚えているとでも言うのか…。
何故か、女ギツネが見ているのは、女になったカルではなく、自分でした。
女ギツネは自分を見つめて戯言を言い出しました。
何年アナタを待っていたと思っているの?いい加減待ちくたびれたわ。それなのに、女連れで来るなんて、どういうこと?アタシ以外の女なんか殺してよ!殺してしまいなさいよ!
…イカレてる?
カーラと顔を合わせて、首を傾げてしまいました。
まあ、これを片付ければすべて終わり。
自分もカーラも武器を手に、女ギツネへと向かいました。
すると急に女ギツネの様子が変わり、先ほどとは違うことを喚き始めました。
カルを殺したのはお前だ!お前がいなければ、カルが死ぬことも無かったのに!
そう言い出したかと思えば。
なんで助けてくれなかったの…。アンタならアタシを助けるのなんて、訳もなかったハズなのに、なんで見捨てたの?
今度は泣き言を言い出しました。
…1人の中に、何人かの違う女が入っているようでした。
壊れているわね。
カーラは静かに言いました。
さっさと片付けてしまいましょう。旦那様が待ちわびているもの。
割とためらいは無いようでした。
あら、だってわたしは努力したもの。
常に誰かに何かしてもらうことしか考えて無い、何かしてもらうのが当然、なんて思っている甘ったれなんかに興味なんて持てないわ。…この子はずっと変わらないままだったのね。それに…わたしを……オレを殺したのはお前だろう?マリー・ルイーズ・エミリー・ローズ・ステイシア。
…それ1人の名前じゃあ無いだろう…。
どうりで覚えていなかった訳です。
女ギツネは狂ったように喚き続けました。
ウソだウソだウソだ!
カルを殺したのは白キズ!
アタシを見捨てたのは白キズ!
助けてくれなかったのは白キズ!
悪いのは白キズなんだ!
白キズ!白キズ!白キズ!
お前が全部悪いんだ!
お前があぁぁぁ!
女ギツネの足元から、黒い影が一気に吹き上がり、刃となって自分達に斬りつけてきました。…何故か自分の顔を重点的に狙って。
手にした武器…小刀で応戦しようにも実体の無い影でしたので、傷付けられるままとなってしまいました。救いは影の一片が小さく、さほど威力が無い、ということくらいでしょうか。鬱陶しいことに変わりは無いですが。
何事か喚き散らしている女ギツネに、カーラは言いました。
お前が全部他人のせいにして、すべて他人任せにして、自分では何一つしようとしなかったから、こんなことになったのだろう。だいたいお前がオレに纏わりついたのは、白キズに見せつける為だったろうが。まったく相手にされて無かったがな。そんなことも分からずにオレにすべて依存しやがって…。何をするにも何時でも何処でも纏わりついてきて、どれだけ鬱陶しかったことか…。
後半完全に男に戻ったカーラは、心底嫌そうでした。そして、女ギツネの攻撃が自分に集中しているのを良い事に、少しずつ立ち位置を変えながら、女ギツネを惑乱させようとしていました。
…今まで溜まっていたモノを、吐き出していただけかも知れませんが…。
第一、お前がオレを刺した時も、お前が機関の連中のオモチャになってた時も、趣味の偏った娼館に売り飛ばされた時も、白キズは居なかったぞ。その頃白キズは、国に居なかったんだからな。外国で任務に着いていた白キズに、何をどう出来たっていうんだ?
カーラ──カルの言葉に、女ギツネは過剰反応しました。
ウソだウソだウソだ──!
アタシのそばには、いつも白い髪の男が──!
白髪頭なんか、そこら中にいくらでも居るだろうが。白髪っぽい頭も、オレを含めりゃ尚更。お前の頭の中じゃあどうなっているんだか知らないけどな?オレは──わたしはお前なんかに付きまとわれて、正直迷惑していたし、白キズはお前ごときには一切興味が無かったわ。ねぇ、あなた。
途中から女に戻って話し続けたカーラは、自分に向かって微笑みかけました。元男とは到底思えない、艶のある微笑みを。
女ギツネはすっかり混乱して、いつしか影の刃片も数が減り、浮遊しているだけになっていました。ブツブツと呟いている女ギツネ。
ウソだ──カルはアタシを愛していたし、白キズはいつもアタシを見ていたし……。
そんな女ギツネにカーラは。
お前を愛していた事など無かったわ。白キズはどう?
カーラの問いに、自分は答えました。
今回、こんな馬鹿げた事に巻き込まれるまで、そんな子供がいた事すら忘れていたな。それに…なあ、カーラ。
あら、なにかしら?
お前は道端の石ころの一つ一つにいちいち気を配るか?気にせず歩くだろう。
そうね。特に何も思わないわね。
と、言うより気付かないことの方が多いわね。だって道端に転がっているだけなんですもの。端にあるモノなんて、気にしないわ。
そうでしょう?
32
あなたにおすすめの小説
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
貴方のために
豆狸
ファンタジー
悔やんでいても仕方がありません。新米商人に失敗はつきものです。
後はどれだけ損をせずに、不良債権を切り捨てられるかなのです。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?
キーノ
ファンタジー
私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。
ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?
自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?
私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ!
※紹介文と本編は微妙に違います。
完結いたしました。
感想うけつけています。
4月4日、誤字修正しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる