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・松嶋先生はせんちゃんのことが…!?(ほのぼの)
ナナフシ先生
しおりを挟む「──!」
世界史担当の松嶋先生が、厚ぼったく垂れた前髪の隙間から、こっち──たぶんオレ──をじっと見ている。
とてつもなく恐怖なのは、彼の視線はオレをバッチリとらえているのに、口はもぞもぞと動いて教科書を読み上げて──暗唱して──いる。一字一句間違えることなく。
オレたちが先生にバレないようにアレコレと小細工しているように、先生も他の生徒にはバレないようにしつつ、オレをガン見しているのだ。
そんな先生、他にはいない。
松嶋先生は、この春に教師になったとは思えないぐらいにめちゃくちゃ暗いオーラに包まれている。
夢や希望や情熱なんて1ミリもなさげ。まったくキラキラしていない。
迫力があるのはボサボサに伸び放題の黒髪ぐらい。教師というより売れないロックバンドのギタリストのよう。体はヒョロヒョロと薄くて細くて、とにかく棒だ。
あまりにも細くて存在感がなさ過ぎて、裏では『ナナフシ』というあだ名で呼ばれているらしい。
ナナフシ──割り箸をつなぎ合わせて作った夏休みの工作みたいな虫だ。
そのナナフシ先生が、なぜかオレのことだけをじぃっと穴があくほど見ている。
一度や二度じゃなく、世界史の授業のたびに──。
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