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・せんちゃん、はじめての仮病
シタゴコロ
しおりを挟む「やさしい先生でよかったね、せんちゃん!」
「や、やや、やさしいなんて……そんな……ことは……とんでもない。すべて、ぼくの、……いや、わたしの……せいでして……」
正座をしながら背中を丸め、へこへこモジモジしているナナフシはオレではなく優兄のほうを見たそうにしている。
パイナップルの入った皿をオレに差し出して「ふへへ」とフヌケのように笑ったそばから、その瞳は優兄のほうに吸い寄せられる。顔ではなく眼だけが磁石のように動くから器用なものだ。
しかし、直視するのは照れくさいらしい。優兄の白い頬をなぞるように見て「ふへへ」と笑い、再び視線を戻してオレを見る。その繰り返し。
なんでオレのことは気持ち悪いぐらいにねっとりと直視できるのに、優兄は直視できないんだよ──というツッコミを妙に硬くて繊維質なパインと共に飲み込んだ。
おそらく、ナナフシがうちにきた最大の目的は優兄に会うことに違いない。
生徒のお見舞いのついでに憧れのラジオ番組のパーソナリティに会う──シタゴコロが丸見えだ。
「せんりくんとゆうたさん……とても、にてますね……、すてきだ……ああっ……なんて尊い……感動的っ……」
「そーか? あんま似てへんと思うけど? どうでもいいけど『とうといおとうと』って回文になりそうでならん感じ、むちゃくちゃ惜しいやんなぁ」
──どいつもこいつも早く帰ってくれないだろうか。
オレ、カゼひいてるんですけど。仮病だけど。
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