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2 十年目の花嫁
1 食べられちゃう?
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連れてこられたのは、寝室よりもさらに大きな部屋。
雨粒の群れのようなシャンデリアの下に、真っ白な円卓があった。
部屋の大きさに対してテーブルはあまりにも小ぶりで、手を伸ばせばお互いの肩に触れられるぐらいだ。
椅子は三脚。使い込まれて飴色に光っている二脚。そして真新しい一脚。ぼくはそこに座るように言われた。
テーブルには食事の準備がされている。よく磨かれたナイフとフォーク、青い花の模様のティーカップに、大きいお皿──ぼくが乗れそうなぐらい本当に大きい。
(いますぐ食べられちゃうのかも……)
手足の骨や心臓のあたりがムズムズソワソワしてきた。
悪魔が人間を食べるのはやっぱり、生きたままなのだろうか。それとも最初にナイフでグサッと殺して、お腹を切り開いてムシャムシャ──。
(どうしよう……帰りたくなってきた……お母さん……お父さん……スターに会いたい……)
カタカタと震える手をごまかすためにグーパーしていると、真っ白なスターのもふもふとした毛並みがよみがえる。
サトエド犬のスターは生まれてまだ一ヶ月なのに、とても賢い子だった。ぼくがどこに隠れても見つけてワンワン吠える。いつも口をあけてピンクの舌をぺろぺろさせて笑っていた。右耳の横あたりにある星型の黒い模様がチャームポイントで──。
会いたい。もう一度なでなでしたい。ぼくが突然いなくなって悲しんでいないかな──。
ただでさえ怖いのに余計なことまで思い出してしまった。
涙がこぼれる寸前だったぼくをふわっと包みこんだのは甘い香り。
「お待たせ~」
「待たせたな」
どすん、と音を立てて皿の上に置かれたのは大きなお城だった。
チョコレート生地でできた三角屋根や長細い塔に、パウダーシュガーの雪がこんもり乗ったデコレーションケーキ。
ぼくの体ぐらい大きいのに、どうやら1人分らしい。コニーやリテナのお皿にも同じものが乗せられた。
連れてこられたのは、寝室よりもさらに大きな部屋。
雨粒の群れのようなシャンデリアの下に、真っ白な円卓があった。
部屋の大きさに対してテーブルはあまりにも小ぶりで、手を伸ばせばお互いの肩に触れられるぐらいだ。
椅子は三脚。使い込まれて飴色に光っている二脚。そして真新しい一脚。ぼくはそこに座るように言われた。
テーブルには食事の準備がされている。よく磨かれたナイフとフォーク、青い花の模様のティーカップに、大きいお皿──ぼくが乗れそうなぐらい本当に大きい。
(いますぐ食べられちゃうのかも……)
手足の骨や心臓のあたりがムズムズソワソワしてきた。
悪魔が人間を食べるのはやっぱり、生きたままなのだろうか。それとも最初にナイフでグサッと殺して、お腹を切り開いてムシャムシャ──。
(どうしよう……帰りたくなってきた……お母さん……お父さん……スターに会いたい……)
カタカタと震える手をごまかすためにグーパーしていると、真っ白なスターのもふもふとした毛並みがよみがえる。
サトエド犬のスターは生まれてまだ一ヶ月なのに、とても賢い子だった。ぼくがどこに隠れても見つけてワンワン吠える。いつも口をあけてピンクの舌をぺろぺろさせて笑っていた。右耳の横あたりにある星型の黒い模様がチャームポイントで──。
会いたい。もう一度なでなでしたい。ぼくが突然いなくなって悲しんでいないかな──。
ただでさえ怖いのに余計なことまで思い出してしまった。
涙がこぼれる寸前だったぼくをふわっと包みこんだのは甘い香り。
「お待たせ~」
「待たせたな」
どすん、と音を立てて皿の上に置かれたのは大きなお城だった。
チョコレート生地でできた三角屋根や長細い塔に、パウダーシュガーの雪がこんもり乗ったデコレーションケーキ。
ぼくの体ぐらい大きいのに、どうやら1人分らしい。コニーやリテナのお皿にも同じものが乗せられた。
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