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10 ヤっちまった

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「なんか鶴見にとられちまうと思ったら、すっげー悔しくなってさ。弟が産まれて母親を奪われたお兄ちゃんの気分みたいな。そんな感じ」

「冗談、だよな?」

「本気だし。証拠見せてやろっか」


 健太は俺のアゴをつかみ、上へと引き寄せてくる。


「オレにキスしていいよ。凛也」


 唇の寸前で選択肢を与える健太に鶴見のような強引さはない。

 ──来たいなら来ればいい。

 無慈悲なほど自由な選択肢。


「その代わり、付き合え」


 ダメだ。
 頭の片隅では分かっていた。

 こんなのダメに決まっている。


 昨日、鶴見に抱かれたばかりなのに、朝には違う唇を自ら求めるなんて──。

 分かっていた、はずなのに。



 
 
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