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13 ハナサナイ

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「なにしてんだ。さっさと叩け」

 鶴見はまた首を振る。
 ぐしゃぐしゃに乱れた前髪は血にからみつき、べっとりと肌に貼りついた。

「叩けって。なあ、叩けよ……」

 いくら言い聞かせても鶴見は俺を傷つけようとしない。

「叩けって」

 その指がすくいあげたのは、透明な雫だった。
 鶴見は赤い歯を見せてにっこりと微笑み、俺の頬を何度も何度も往復してはそれをすくいとる。

 やがて、発せられたのは、


「……凛くん……は、悪くないよ」


 一ミリも変わらないやさしさ。
 
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