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失恋と立ち退きと中の人
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しおりを挟む『あの予報士さん、お兄の好きそうなタイプだよねぇ。真面目すぎて一生懸命で空回りしてきゅんきゅんするっていうかー。真夜中の降水確率相当高めっていうかさあ! たまんないねぇーい!』
真夜中の降水確率──。
汗でしっとりとした一條さんが、とろんとした目で、物欲しそうにこちらを見ている。
ネクタイをゆるめながら『早くしないと濡ちゃうから……全部脱がせて』っておねだりしてくる姿をばっちり妄想した。
スマホなんてぶん投げて布団にもぐりこんでしまいたくなる。
『もしもそんなコトになったらお兄のほうが激しくどしゃ降りになっちゃうのかなー?』
「ばばばバカ野郎っ!!! まあ……でも、そう……当たりだ。たしかに超タイプ……は、ハハハ」
隠すことでもないので笑っておくことにした。
鷲尾は葵がなにを考えているのはサッパリ分からないが、葵は兄の心を察する能力がとても高い。
一條さんの懸命なかわいさにどっぷり惚れて、今日告白してフられたてホヤホヤ。
傷ついたけれど諦めきれていない。
むしろここからが真の本番のような気がする。
時間をかけてくすぶりきって火がついたハートからは煙がもくもく出ています。
──なんて、さすがにそこまでは察してはいないとは思うが。
『前のナルシストっぽいマッチョくんより絶対いいよー! お付き合い始まったら教えてねえ』
「ばかっ……そんなんじゃねーし」
「否定するってことはマジラブなの!? いつか会う日がたーのーしーみー!」
「楽しみにすんのは自由だけどな、オレの一條さんに惚れんなよ」
「あはははー! だいじょぶだいじょぶー! あおちゃんはハレジローのほうが好きだからー!」
「はれジ……にじっぴな」
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