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4.不器用/艶ノ色 ※
4/5※
しおりを挟む「──違うッ!」
一瞬にして血の気が引き、目が覚めた。
気がつくとケティの体をはね除け、起き上がっていた。
「違う? 何が違うの?」
「……今日は、っ……、本当に、こんな、つもりじゃ──!」
俺は喉を必死に震わせ、反抗する。その声は上擦って、かすれていた。
「今更なに怖気付いてるの」
ケティは呆れたような溜息をつく。
乱れた赤髪を撫でつけ、再び微笑を浮かべると、
「嘘は体に毒よ。もっとしてほしいって顔してる。……もっと、もっと、って」
そのまま腰にすがりついてきた。手を伸ばし、勝手にベルトを外し始める。
「やめろっ!」
どうにか逃げ出そうとしたものの無駄だった。
足を掴まれ、床の上に引きずり倒される。
「自分の体には正直にならなくちゃダメよ」
のしかかられると同時に下を脱がされた。彼は楽しそうに笑いながら、脚の間にその身を滑り込ませてくる。
「こうされたかったんでしょ?」
その指先は下半身に触れている。先端をゆっくりとなぞり上げられれば、どうしたって感じてしまう。
睨みつけてやると、その美しい笑顔がみるみるうちに崩れた。非情なほどに歪み、勝ち誇ったような笑い声を上げ始める。おかしくておかしくてたまらないという甲高い声。
それでも睨むのをやめずにいると、
「イイ顔ね。そそるわぁ……」
彼はまた唇を押し付けてきた。
今度は歯並びを確かめるように舌をねじ込んでくる。
なんとか追い返そうとするも、舌がもつれ合い、唾液が絡む音が大きくなるだけだ。
「んっ」
下は下で擦られ続け、触れ合う唇の間から切ない吐息がもれてしまう。それでも認めたくなくて、体をよじり、彼の肩を引き離そうとした。
抵抗も虚しく、ケティは自ら唇を離した。うっとりと吐息を漏らし、
「ん……ふぁ!」
そのまま、アゴ、首、胸、腹、と、舌先で順番になぞりながら、徐々に下へ降りていく。
「……っ、やめ……ろぉ!」
「どうしても嫌なら蹴り飛ばしてくれていいのよ……」
彼の頭が、脚の間に沈み込む。
「喰いちぎってやるから」
「んっ──」
吐息がかかった瞬間、びくんと反応してしまった。“その先”を体は確かに期待している。
「ああ、久しぶりのっ……!」
違う。違うのだ。
こんなことがしたいんじゃない。
こんなことで──。
「──ッツ!」
激しくしゃぶりつかれ、声を上げることすらできなかった。
体中を駆け巡るあまりの感覚に、押さえつけられたままの脚がガクガク震える。
「……待っ! あああぁ、あ!」
心では拒絶しながらも腰が浮く。
震える両手で、快楽の源である彼の頭を撫でまわしていた。
「やっ、……あ、はっ!」
ケティの髪は男だとは思えぬほどサラサラしている。
指を通すと洋蘭のような香りが舞った。嗅いでいると熱情以外のものがマヒしていく──気品高い罠の香り。
「あぁ、は、あっ! ……ひあっ、んっ!」
ねっとりと舐め上げられる度、声があふれる。その舌の動きはあまりに巧みだった。
頭の上下運動も加わって、いいところを執拗に攻められる。
嫌だ。
嫌、だ。
こんなことで、忘れたいんじゃ、ない──。
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