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17.無意味/解く鎖
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しおりを挟むそのことを報告するとこんな返信が来た。
――『じゃあ、たまにはアロハシャツとか着てみなよ!』
――『たっくん、いっっつも真っ黒な服で地味だし、たまには派手なの良いんじゃない?』
――『似合うから絶対!』
なにを思って書いているのやら。
「バカが」
青白い画面にむかって悪態をつく。けれど、その瞬間の自分がニヤニヤ笑っていたことに気づいてしまった。
嬉しいのだ。
嬉しくてたまらないのだ。
こんな些細なやり取りの一つ一つが。
でも――。
あの日以来、一度も会ってくれないのは、どういうことなのだろう。
繰り返されるのはメールばかりで、電話すらくれないのは――。
毎日毎日、不安と共に祈るような気持ちで茜色の空の下を歩いている。
夕立に降られたら、俺はきっと新しい傘を買ってしまう。
そうなる前に早く――。
「……会いたい、響」
気がかりなことが、もう一つある。
四日前、兄にメールを送った。会って改めて話をしたいという内容の。
その返信が、いまだに来ない。
今日も待ってダメなら、電話をかけようと決めていた。
いくら忙しくとも、五日前のメールをまだ見ていないことはないだろう――。
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