妖狐のお屋敷に嫁入りしました

淡雪みさ

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第三章

後日談

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 後に〝きつね町の大火〟と呼ばれ歴史に名を刻むこの大火事は、こうして幕を下ろした。

 後日、小珠は妖力を過度に利用した影響で体調を崩し、数日間寝込むことになった。
 妖狐の一族の屋敷はまだ修復途中で、ほとんどの部屋は崩れている。部屋がないので、夜は一箇所に集まって雑魚寝する日々だ。熱でうなされる小珠の隣には、いつも空狐がいてくれた。

 そのうち、南に住む妖怪たちが、見舞いだお礼だと言って何度も屋敷へやってきた。彼らは小珠の見舞いもあるが、大変な時に町を守るため尽力してくれた狐の一族への感謝もあるらしく、怯えながらも「献上します……」と米や魚を置いていった。
 きつね町の大火は、町民たちの妖狐への印象を大きく変えた出来事となったようだ。

 海坊主は戻ってきた。正確には、法眼が陰陽師の情報網を駆使して海坊主を発見して連れ戻した。
 彼はあの火事のどさくさに紛れていつの間にか拘束を解きどこかへ逃げてしまっていたらしい。銀狐はそのことを数日悔しがっていたが、法眼はけろっとした顔できつね町に帰ってきた。まさかの海坊主を連れて、だ。
 罪人として屋敷で監禁されていた二口女は小珠の指示で釈放され、今や海坊主と一緒に焼けた茶店を建て直しているらしい。謝罪の手紙と贈り物が頻繁にやってくる。小珠は直接会いたいと思っているが、二口女も大変な時期なのだろうと思い、無理に会おうとは言えなかった。

 法眼が海坊主を連れてきた礼として妖力を利用させろと言うので、恩着せがましいな……と思いつつも、体調が治ってからは屋敷でたまに法眼が持参してくる呪具に妖力を込めてやっている。彼らがきつね町を襲うことはもうなさそうだ。


 徐々に、町は復興していく。
 しばらく屋敷や市の修復の手伝いに奔走していた小珠にも、ゆっくりする時間ができてきた。縁側で履き物を履き、鍬を持ってずっと行きたかった場所へ向かう。

 太陽の下、耕された土がきらきらと輝いて見えた。あの火事の中、庭の畑だけが無事だったのだ。
 小珠は畑に近付き、種を植えるところから始めた。

 こうしていると、この場所で畑仕事をしていたキヨの笑顔が脳裏を過ぎる。

「……ようし、やるぞ」

 まだ悲しい気持ちはある。涙で枕を濡らす夜ばかりだ。
 けれど少しずつ前に進めたらと思う。そうしなければ天国のキヨに胸を張れない。

 他でもない小珠自身が、キヨが長い時間をかけて残してくれたものだから。



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