魔法の遺産

第10章

遺跡の扉と新たな敵

険しい山脈を越え、アレンたちはついに目的の場所、古代の魔法が封印されたという遺跡にたどり着いた。遺跡は山の中腹にひっそりと存在しており、周囲の景色と一体となった自然の中に、古びた石の扉がひときわ目立っている。

「これが…遺跡か。」

リリィが慎重に遺跡を見つめる。

「古代の魔法が眠っている場所だ。気を引き締めて進もう。」

エドガーの言葉に、アレンもカイルも頷きながら、慎重にその扉に近づいた。石の扉には奇妙な紋章が刻まれており、見る者に圧倒的な古代の力を感じさせた。

「この扉、ただ開けるだけでは入れそうにないな。」

カイルが扉を触れてみると、紋章の中から微かな光が漏れ出し、扉はひとりでに動き始めた。だが、それと同時に、周囲の空気が一変した。

「何だ、今の気配…？」

アレンは突然の変化に身構えた。その瞬間、遺跡の中から黒い影が現れ、アレンたちの前に立ち塞がった。影はゆっくりと人型の姿に変わり、目の前に立ったのは、魔王軍の精鋭兵士であるアスモダイだった。

「アスモダイ…！」

エドガーはその名を知っていたようで、鋭い眼差しでその兵士を見据えた。

「お前がここにいるということは、魔王軍の命令でこの遺跡を守っているということか。」

アスモダイは冷笑を浮かべ、言った。

「その通りだ。だが、貴様らにこの遺跡に近づくことは許されん。」

「お前一人で止められると思っているのか？」

エドガーは冷徹な目でアスモダイを見返す。アスモダイは微かに笑みを浮かべると、手に持った黒い剣を大きく振り上げた。

「魔王軍の命令は絶対だ。貴様らがどんな力を持っていようと、ここで終わりだ。」

その言葉が終わるや否や、アスモダイは猛然と突進してきた。剣を一振りするだけで、周囲の空気が歪むような激しい斬撃がアレンたちに向かって飛んできた。

「気をつけろ！」

エドガーがすぐにアレンたちに警告を発し、剣を構えてアスモダイの攻撃を受け止める。激しい衝突音とともに、二人の剣が激しくぶつかり合い、その力強さに周囲の地面が揺れるほどだった。

「すごい…！」

アレンはその戦いを目の当たりにし、息を呑んだ。エドガーの剣技はまさに伝説そのもので、アスモダイの攻撃を巧みにかわし、反撃を繰り出していた。しかし、アスモダイの剣もまた、強力で鋭く、エドガーと互角に渡り合っている。

「二人とも、気をつけて！」

リリィが言いながら、精霊の力を高め、魔法を使おうとしたその時、突然、アスモダイが次の攻撃に転じた。

「くっ…！」

エドガーが反応しきれず、アスモダイの剣が彼の腕をかすめた。エドガーは一瞬その場で膝をつくが、すぐに立ち上がり、冷静に距離を取った。

「これ以上近づかせるな、アレン。」

エドガーはアレンに向かって叫ぶ。アレンはその言葉を受けて、すぐに魔法の準備を始めた。

「みんな、行くぞ！」

アレンが魔法を放つと、火の精霊が呼び出され、炎の嵐がアスモダイに向かって飛び込んだ。しかし、アスモダイはその炎をものともせず、冷徹に剣を振り回し、火の精霊を切り裂いた。

「そんな魔法でこの俺に勝てると思うな。」

アスモダイの目には冷徹な光が宿り、その力強い剣の一振りで周囲の岩を砕きながら、再びエドガーに迫った。だが、エドガーはその剣を受け止めると、再び言葉を発した。

「お前の剣を受けるつもりはない。」

エドガーは一気に距離を詰め、アスモダイの隙を突いて剣を振るった。アスモダイはその攻撃を防ぐことができず、大きな音を立てて倒れ込んだ。

「…まだだ。」

アスモダイは倒れながらも、最後の力を振り絞って言った。

「魔王軍の力は、お前たちが思っている以上に強大だ。今は一時的に敗北したにすぎん。遺跡に近づけたのも、最後の遊びに過ぎない。」

アスモダイは最後に不敵に笑い、倒れた。彼の言葉には、これからの戦いがさらに厳しくなることを示唆していた。

「遺跡の中に、何が待っているのか…」

アレンは遺跡の扉を見つめ、心を決めた。これからどんな試練が待っているのか、誰もが予想できない状況に、再び覚悟を決める時が来ていた。