魔法の遺産

第20章

新たな脅威

ウルディアを倒し、魔王軍の一部を崩したアレンたち。しかし、勝利の余韻に浸る暇もなく、彼らはすぐに次なる試練に直面することになった。

「これで少しは楽になるかと思ったが、どうやらそう簡単にはいかないようだな。」

アレンがそう言いながら、仲間たちを見渡す。リリィ、カイル、エドガーもそれぞれ警戒の目を光らせている。ウルディアを倒したことで、彼らの力の一部が崩れたことは確かだったが、魔王軍全体が壊滅したわけではない。むしろ、真の戦いはこれからだと、彼らは実感していた。

「魔王軍はそう簡単に引き下がるわけがない。次に待ち受けているのは、もっと強力な敵だろう。」

リリィが言う通り、魔王軍にはまだ多くの幹部が残されている。彼らの力は計り知れず、ウルディアでさえあれほどの実力を誇っていたのだ。アレンたちにとって、これからの戦いは命をかけた決戦となるだろう。

その時、突然、周囲の空間が震え、耳をつんざくような音が響き渡った。アレンたちは驚きのあまり、その場で身構える。

「これは…！？」

エドガーが叫び、空気が揺れる中、巨大な影が迫ってきた。見上げると、そこには、恐ろしいほどに巨大な魔物の姿が現れた。その姿は人間の形をしているが、目が赤く光り、体中が黒い鎧で覆われていた。まるで魔王の使者のような、圧倒的な存在感を放っている。

「こ…こいつは！？」

カイルが目を見開いて驚く。それもそのはず、その魔物はこれまでアレンたちが見たこともないような強大な力を持っていた。今までの魔王軍の幹部とは比べ物にならないほどの威圧感を放っている。

「私は『ザナ』。魔王軍の最強幹部であり、魔王の右腕だ。」

ザナと名乗るその魔物は、低く響く声でそう言った。彼の声は、まるで大地を揺るがすような力を持っている。

「最強幹部…？」

アレンが思わず口にする。これまで幾度となく戦いを繰り広げてきたが、ここまでの敵は初めてだ。

「ウルディアが倒されたことを聞き、来てみれば…貴様らが残っているのか。」

ザナは冷笑を浮かべながら言った。彼の言葉からは、アレンたちを見下すような感情がにじみ出ている。

「俺たちはまだ諦めない。お前も…倒す！」

アレンは言い放ち、光の魔法を構える。だが、ザナはその光を軽々と避けると、手を振りかざして反撃を開始した。彼の手から放たれた魔法は、まるで雷のようにアレンたちに襲いかかる。

「くっ…！」

アレンは急いでその魔法を避けるが、その攻撃速度と威力はあまりにも強力で、次々と魔法が周囲を破壊していった。アレンたちは必死に避け、反撃の機会をうかがう。

「どうした、これだけの力を持っていながら、これほど簡単に攻撃を避けるとは。」

ザナが嘲笑する。その言葉に、アレンたちはさらに焦りを感じる。

「これは…ただの魔物ではない。何か、異常な力を持っている…！」

リリィが言う通り、ザナはただの魔物ではなかった。彼の魔力は、アレンたちがこれまで戦った敵とは次元が違っていた。まるで、闇そのものを操るような力が彼から放たれている。

「お前たちは、俺に勝てると思っているのか？」

ザナはそのまま、さらに魔力を増幅させていく。その周囲の空間は、まるで引き裂かれるように歪み、アレンたちはその圧倒的な力に飲み込まれそうになった。

「アレン、どうする！？ このままだと、みんなが…！」

リリィが叫ぶが、アレンはその場で静かに目を閉じる。そして、再び古代魔法の書を心の中で開いた。

「今こそ、俺の力を信じる時だ。」

アレンは必死に魔力を集め、古代魔法の真髄を引き出す。彼の体は光に包まれ、周囲の空間を浄化するかのように輝き始めた。その光はザナに向かって放たれ、まるで時間をも超越するかのような威力を持っていた。

「光が…こんなにも強くなっているのか…？」

ザナは驚きの表情を浮かべるが、すぐにその力を打ち破るべく魔法を放った。しかし、アレンの光はそれをものともせず、ザナに向かって突き進んでいった。

「これが…最後の力だ！」

アレンは全身の魔力を解放し、全力で光の魔法を放った。ザナの闇の力はそれに押し込まれ、ついにはその力が崩れ始めた。

「ぐっ…！ こんな…！」

ザナは激しく叫び、魔法を駆使して反撃しようとするが、アレンの光は止まることなく、ついにはザナを飲み込んだ。


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空気が一変し、周囲の静けさが戻った。アレンたちはその場で倒れ込み、呼吸を整える。

「やった…のか…？」

カイルが息を切らしながら言う。アレンは顔を上げ、仲間たちを見渡した。

「まだだ…これで終わりじゃない。」

アレンの目は、まだ先に待つ戦いを見据えていた。魔王軍の力は、今や全てが明らかになりつつある。しかし、アレンたちの戦いは終わることなく、まだ続くのだった。