魔法の遺産

第22章

逆転の光

アスタの魔法の力は予想をはるかに超えていた。アレンたちの前に立ちふさがるその強大な魔力は、まるで世界を覆い尽くすかのような圧倒的な力を持っていた。

「アレン、気をつけろ！」

リリィが叫び、アレンに警告を与えるが、すでにアスタはその力を全開にしており、アレンたちに迫ってくる。

「もう逃げることはできん。お前たちの力は、俺の前では無意味だ。」

アスタの言葉に冷徹な響きがあった。彼の魔法は目の前の空間をゆがませ、物理法則を無視したような現象を引き起こしていた。周囲の景色が次々と変わり、まるで異次元に引き込まれているような感覚に陥る。

「くっ…こんな空間、どうやって戦えばいいんだ…？」

カイルが苦しげに言いながら、足元を見つめる。目の前に広がる歪んだ世界では、攻撃のタイミングを見極めることが難しく、アレンたちの身動きが取れなくなっていた。

「アレン、何か方法はないのか？」

エドガーも焦った様子でアレンに問いかける。しかし、アレンは目の前の現実をしっかりと受け止め、必死に考える。

「俺たちはこれまで、仲間と共に戦ってきた。だから…必ず、道はあるはずだ！」

その言葉に、リリィ、カイル、エドガーは一瞬驚き、そして決意を新たにする。アレンの心の中にある確固たる思いが、仲間たちを再び奮い立たせたのだ。

「そうだな。お前が言う通りだ。」

カイルがゆっくりと頷き、エドガーも同じように力強く顔を上げる。仲間がいる限り、どんな困難も乗り越えられるという信念が、アレンたちを支えていた。

「アスタ、俺たちは負けない！」

アレンは強い決意を胸に、再び魔法の力を集中させる。その光は徐々に増していき、アレンの周囲に光の円が現れ始めた。

「何だ、その光は？」

アスタが目を細める。だが、その瞬間、アレンたちの周囲に広がっていた異次元空間の歪みが、わずかに揺らぎ始めた。

「これは…！」

アレンはその光をさらに強化し、アスタに向けて放つ。すると、アスタが放っていた魔法の力とぶつかり合い、空間が一瞬で震えた。

「くっ…！ こんな…！」

アスタはその場に立ち尽くす。アレンの光が、アスタの魔法に対抗し始めたのだ。だが、それでもアスタは動じることなく、さらなる力を発揮しようとする。

「お前たちの力が、そんなものだとは思わなかったが…それでも俺には及ばぬ。」

アスタは手を振り上げ、その力を解放しようとする。しかし、その時、アレンたちの後ろから仲間たちの力が加わり、アスタの魔法を打ち破る力を与えた。

「みんな、力を合わせて！」

リリィが呼びかけ、カイルとエドガーもその言葉に応じて自らの魔法を放つ。それぞれが持つ特異な魔法の力がアレンに集まり、アレンの魔法はさらに強力な光となっていった。

「これが…俺たちの力だ！」

アレンはその光を全力で放ち、アスタの魔法と激しくぶつけ合う。その力が、ついにアスタの魔法を打ち破った。アスタはその一撃に耐えきれず、空間の中に引き裂かれるように消えていった。

「アスタ…！」

アレンたちはその場に立ち尽くし、少しの間、息を整えていた。だが、すぐにアレンは深呼吸をし、仲間たちに目を向ける。

「みんな…ありがとう。お前たちの力がなければ、俺は勝てなかった。」

リリィ、カイル、エドガーはそれぞれに笑顔を見せ、アレンに頷いた。

「当然だろ、アレン。俺たちは仲間だからな。」

「そうだ。これからも一緒に戦おう。」

その言葉に、アレンは深く頷き、仲間たちとともに新たな一歩を踏み出す決意を固めるのだった。