冒険者たちと湖畔の休息

妖精の贈り物

森の奥へと進んでいくと、やがて三人の前に小さな泉が現れた。周囲には色とりどりの花が咲き誇り、風が吹くたびに花びらが舞い上がる。泉の水は透き通り、まるで星の光を閉じ込めたようにきらめいていた。

「きれい……。」

　マリアが思わず呟く。

「なんか、ここだけ別の世界みたいだな。」

　エリックも辺りを見回しながら感嘆の声を漏らした。

　そのとき——

「ようこそ、旅人たち。」

　優しい声が響き、泉の上に光が集まったかと思うと、小さな妖精たちが次々と現れた。彼らは金色や銀色の羽を持ち、透明な光をまとってふわりと宙に舞っている。

「妖精たち……。」

　リオが驚きの表情を浮かべると、一人の妖精がくるくると宙を舞いながら三人の前に降り立った。

「私はリューシア。この森の妖精たちを導く者です。」

　リューシアは微笑みながら言った。

「君たちは湖の底にある"生命の雫"を探しているのでしょう？」

　三人は顔を見合わせ、リオが一歩前に出た。

「……ああ。俺たちは"生命の雫"を求めている。」

　リューシアは静かに頷いた。

「ならば、その旅を手助けしましょう。」

　彼女が手をかざすと、泉の水がふわりと宙に舞い上がり、三つの光の珠となって三人の前に浮かんだ。

「これは？」

　マリアがそっと手を伸ばすと、光の珠はゆっくりと彼女の手のひらに収まった。

「これは"妖精の加護"。あなたたちが湖の試練に挑むための力となるでしょう。」

「妖精の加護……？」

　エリックが自分の手の中の光を見つめる。すると、その光が彼の身体に吸い込まれるように溶け込み、心地よい温かさが広がった。

「これ……すごいな。なんだか、力が湧いてくる……。」

「ええ。この加護を受けた者は、水の中でも自由に動くことができるようになるのです。」

　リューシアの言葉に、リオは驚いたように目を見開いた。

「それじゃあ……これがあれば湖の底まで潜れるってことか？」

「そういうこと。」

　リューシアはにっこりと微笑んだ。

「ですが、試練を乗り越えなければなりません。"湖の守護者"はそう簡単に"生命の雫"を渡してはくれないでしょう。」

「……やっぱり、避けては通れないんだな。」

　リオは静かに息を吐いた。

「でも、俺たちは行くよ。どんな試練が待っていても。"生命の雫"を手に入れるために。」

　その言葉に、マリアとエリックも頷く。

「それでこそ、真の冒険者ですね。」

　リューシアは嬉しそうに頷いた。

「では、行きなさい。妖精たちの加護が、あなたたちを導いてくれるでしょう。」

　妖精たちは光の粉を振りまきながら、三人の周りを飛び回った。そして、リューシアが手をかざすと、泉の水が一瞬だけ高く舞い上がり、まるで道を示すかのように湖の方向へと流れていった。

「ありがとう、リューシア。」

　リオが感謝の言葉を伝えると、リューシアは優しく微笑んだ。

「どうか、無事に帰ってきてくださいね。」

　三人は再び湖のほとりへと歩き出す。

　妖精たちから授かった加護を胸に、いよいよ湖の底へと挑む時が近づいていた。