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不思議な本と暗示
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もうほんとアイツなんて居なければよかったのに。小さい時から、高校二年になった今でもこの考えは変わらない。
「あ~あぁ~……」
沈鬱いっぱいの表情で机にだらんとしな垂れかかり、内田(うちだ)柚希(ゆずき)は気怠さを声に乗せた。これから一年お世話になる机の上でぎゅぅぅと顎先がつぶれる。
幼なじみで、お調子者の〝月(つき)城(しろ)孝(こう)介(すけ)〟。
幼稚園の頃、彼の投げた泥団子が顔面に直撃した。小学校の頃、少し背伸びして買った下着をスカート捲りで何度も周囲に晒された。中学校の頃、誕生日だからと言ってクラスメイトの目がある教室で紐同然の下着をプレゼントされた。去年は、知らないうちに水筒へ大量のワサビを入れられそれを飲まされた。
他にもたくさんある。挙げていないだけで、数え切れないくらいに。
さっきの時間は、学級委員長を推薦という形で押し付けられた。成績も生活態度も良かったことが先生を乗り気にさせ、断れ切れずにしぶしぶ引き受けることになった。
「さいあくすぎるぅ~……」
顎に痛みを感じて、今度は額をくっ付け支えを変える。視界に木目模様が広がる。
動いてないと落ち着かない。机からはみ出した手をパタパタ。ぐるんぐるん渦巻くいろんな感情を、指先の高速バタ足っぽい動作で消化していく。
「もぉぉぉぉぉ~……っ」
「ははは……。ドンマイ、柚希」
前の席から苦笑が聞こえてきて、柚希はのそーっと額を持ち上げた。腕を畳んでそこへ顎を乗っけると、今度はぷにぷに柔らかい。嬉しい反面、二の腕のお肉が……とダイエット衝動に駆られる。
「わっ、死んだ魚みたいな目してるよ」
「繭子~っ」
親友の河津(かわづ)繭子(まゆこ)。小学校からの付き合いで、大の仲良し。
とても面倒見が良くて、明るく朗らかな性格をしている。気が合って、趣味も合う。ただ彼女は運動が得意なタイプで、そこだけは正反対だった。
「……私、二の腕のお肉ヤバいかも」
「えっ、そっち? 委員長になったことじゃなくて?」
「思い出させないでよ~っ」
唸ると、繭子は「あはは」と耳に心地よい笑い声をひびかせる。
「分かったよ、じゃあその話に乗っかってあげる。どれどれ~?」
友人の手が伸びてきて、腕のお肉を指先でもにゅもにゅと揉んだ。興味津々で愉快な顔だったのが、次第に険しくなっていく。
「……お肉付いたね」
「やっぱり?」
「また孝介君にからかわれちゃうかもね」
「そ、それはヤダっ! ムカつくッ!」
大声。そしてガタンッ! という、椅子の背が床に倒れる嫌な音。柚希はそれらを立てて腰を浮かしていた。
騒々しい柚希のもとへクラス中の視線が集まる。休み時間だから廊下にいた他クラスの生徒まで何事かと注目していた。
「~~っ」
沸騰気味に熱くなる顔。しゅんっ、と肩を縮め、椅子をすばやく起こして着席。机に突っ伏して「厄日だぁ~~……っ」と叫んだ。腕の中でくぐもった声が響き渡る。
「ほれほれ、元気出しなって。髪、梳いてあげるからさ」
「……うん」
心優しい繭子。身を起こした柚希の後ろに回って、ヘアブラシをかけ始める。
落ち込んだとき、友人はいっつもこうしてくれる。丁寧な手付きで髪を撫で、ブラシで綺麗に整えてくれる。
「いいなぁー柚希の髪。茶色っぽいけど地毛だから、校則違反にならなくてさ」
「でもちょっと癖っ毛だし、手入れが大変だよ?」
「そのくらいの苦労なら許容範囲だしー」
「……ねぇ繭子。運動らしい運動をせず、食べるのもあんまり我慢せず、痩せる方法ってない?」
「通販アイテム」
「それ注文しようとしたらお母さんに運動しろって言われて買えなかった」
「じゃあ運動だね。あと食事制限」
「どっちも苦手……」
「食事制限はできるでしょ、がーまーん。ていうか柚希は、少しふくよかなくらいが丁度いいよ。愛嬌があって可愛いし、今をキープしたら?」
「でもアイツがうるさいし……」
「セクハラで訴える?」
「訴える」
むくれて唇に力が入る。
馬鹿でお調子者の孝介。一度痛い目を見ればいいのだ。
そんな風にぷりぷり怒っている間も、繭子が髪を丁寧に梳いてくれる。後ろでストレートに流れる茶髪をイメージすると、嬉しくて唇が綻ぶ。
「終わったよ」
「繭子、ありがと」
「ううん」
自分の席に戻った繭子が、机から本を一冊取り出した。
「授業までもう少し時間あるし、心理テストでもする?」
「するっ!」
占いとか心理テストとか、大・大・大好き。未来が明るくなる気がするし、自分の意外な一面を知ることもできるし、とーってもロマンチックだ。疲れた時とか、イヤなことがあった時に、ハーブティーを飲むみたいな癒しになる。
「じゃあ第一問ね」
「うんっ」
そんな感じで繭子といっしょに心理テストを進めていると、一人の男子が割り込んできた。
「おーおーっ、また心理テストかよ。懲りないね~」
中肉中背で、顔も普通。髪は短髪。そんな何処にでもいる風貌で、いつもひょうひょうとした態度を崩さないのは月城孝介。憎いことこのうえないヤツ。
「なによ」
自分でも驚くくらい低い声が出る。
孝介は肩をすくめ、鼻を鳴らして、
「柚希さ、そんなでたらめテストに心を囚われてていーのかよ? どこぞの学者がてきとーに作り上げた嘘に夢中になるとか、阿保らしいとしか言えないね」
「適当でも、嘘でもないもん」
「飽きれるほどピュア過ぎる。まさかお前、超能力とか信じてる口?」
「……そうだけど」
催眠術も、未来予知も、テレパシーも、本当にあると思っている。オカルトの類を信じる女子高生なのだ。
「うわー。マジでそんなんに時間を割くとか馬鹿らしいぜ。これっきりにして他の事やるべきだね」
「何しようが、私の勝手でしょ。いっつもいっつも突っかかってきて、ほんとウザい」
「おいおい柚希。これは最近太ってきたお前への忠告だぜ? そういうインドア物止めて、運動でもしたらどうですか~? 何なら俺も一緒にしてあげますよ~?」
「……っ! ほんと腹立つ! どっか行ってよッ!」
「おおぉ~怖っ。でも今、カロリー消費できてるよな。もっと怒ってく?」
「死ねバカ! デリカシー皆無男! 全女子の敵!」
気に障る発言が沢山。
柚希はぶくぶくと怒りが煮えたぎり、キッと孝介を睨み付けた。
こんな刺々しい言動、向けるのはコイツにくらいだ。他の人には絶対しない姿。そもそもする必要に駆られたことがなかった。
孝介は他の人の入り込む余地がないくらい、執拗に絡んでくるから。ほんとウザい。
「もう、二人は相変わらずだなぁ……」
繭子が呆れと微笑ましさ半々くらいの顔でこちらを見守っていて、柚希は『助けてくれてもいいのに』という気持ちが浮かぶ。
親友はいつもそう。孝介とのやり取りを、傍観することを選ぶ。前に理由を訊いたら『邪魔したくないんだよね』なんて答えた。きっとコントか何かと思ってるんだ。これについてはいろいろ思うところがあるけど、繭子には大好きなところがいっぱあるから、嫌いになんかなれない。
「繭子、こんなヤツ無視して続けよ」
「あ、柚希。今度一緒に運動する場所どこがいい? グラウンド? 公園? それとも本格的にジムでも行くか?」
「うるさいっ、あっち行ってて!」
しつこい孝介を、柚希は苛立ち全開で押しやった。
数日後の放課後、教室でのこと。部活をしていない柚希が帰り支度をしていたら、繭子が慌ただしく本を一冊渡してきた。
「何これ?」
「えーっとね、催眠術の本かな。行きつけの古本屋でもらっちゃった。きちんとこれに書いてある通りにやれば効果アリらしいよ」
本は、A4くらいのサイズ。ページ数はたぶん十ページもなくて、とても薄い。左側に穴が幾つか開いており、紐で括って留めてある。古めかしくて手作り感があった。
「効果、ってどんな?」
「内面を正直に現す暗示がかかるんだってさ。孝介君に使ってみれば?」
「……なんでアイツが出てくるの?」
「ふふっ。まあとにかく、嘘か本当か試してみなよ。私は部活があるからもう行くね」
「う、うん」
「明日、どうだったか教えてね」
繭子は「バイバイ!」と手を振った後、すたたたたーっ! 陸上部らしく軽快に教室を出て行った。いつ見ても速いランだ。
「おい柚希、ダイエットメニュー考えといたぞ。もちろんやるだろ?」
丁度その時、孝介がニヤニヤ笑みでやって来た。
彼はサッカー部だけれど、毎週水曜日は休みらしい。今日がその日。放課後に絡まれることが分かっていたので、朝から憂鬱だった。
いつもなら適当にあしらって帰宅するところを――少し逡巡した後、
「……やったげる」
彼の挑発に乗った。
機会を作って、繭子に渡された本を試してみたいと思ったのだ。
まさか了承するとは思わなかったのだろう。孝介は目を見張って驚き顔。
「……お、おう、マジか。じゃあ、行くか」
戸惑いと怪訝を半分ずつ。そんな表情で孝介は頷いて、教室の外へ歩き始めた。
一度帰って、運動できる服に着替えてから再集合。半袖Tシャツにスカートとスパッツ。
家が隣同士なので外で待っていれば自然と落ち合うことができる。
何処に行くのかと訊いたら、ボーリングと彼は答えた。てっきり公園でランニングとか筋トレっぽいのをすると思っていたから意外だった。
「お前、そういうのしてもすぐ飽きるだろ」
「……気が利くじゃん」
ほんのちょっと、見直した。
ふーん。やるじゃん。運動でもゲーム感覚で出来るなら、少しは楽しめそうかも。
家の近くにあるアミューズメント施設に到着する。一階はフードコート、二階はボーリング場、三階はスケート場になっている。
繭子と前に来たことがあって、その時は一ゲームだけボーリングをした。
「ちなみに何ゲームするの?」
「十ゲーム」
「………………」
カウンター前で踵を返して、無言で帰ろうとしたら肩を掴まれた。
いくらなんでも多過ぎるでしょバカ孝介。
「あぁ~もう疲れたぁ~……」
一階のフードコートでウーロン茶をちびちび飲みつつ、十ゲームの疲れを取ろうとするけど全然ダメ。抜けない。
かと言って机で眠るのは無理。他にもお客さんがいる。人目を集めるのは恥ずかしい。帰る気力も今のところ湧かない状態だった。
「お前、体力無さ過ぎ」
向かい側の席で、呆れ混じりに孝介。
柚希は「……もうアンタとは二度と来たくない」と言い返した。
「は? 何でだよ」
「……疲れるからに決まってるじゃん」
「ダイエットすんだから、そんなもんだろ」
「……ハード過ぎるのが分からない? 途中で『もう辞めない?』って提案しても全く聴き入れないし、ほんと人の気持ち考えないよね」
孝介の表情が歪む。
「お、俺はただ……お前と……」
「何?」
「…………」
「はぁ……。孝介が何考えてるか、マジ分かんない」
柚希は頭を悩ませ、ふと思い至った。
催眠術の本。内面を正直に現す暗示をかけられると、繭子は言っていた。もし効果が出ればこの理解不能男について知ることができるかもしれない。
試してみよう。本をバックから取り出し、テーブルの上に置く。ざっと目を通していたら孝介が目を剥いた。
「何だよ、それ」
「アンタが嫌ってるオカルト系の本。今から催眠術かけるから試験体になってよ」
「お前またそういうのを……。マジでやめろよ。変なことに時間割いてないで、人と話したりする方が有意義ってもんだろ」
「はぁ? 有意義? この場合、アンタでそれを得ろってことだよね? 今までアンタと話してて、良かったなんて思ったこと一度もないんだけど」
「……」
「自分本位。自分に酔い過ぎ。言っとくけど、私が今日のこと少しでも感謝してるなんて思ってるなら、大間違いだから」
「……じゃあなんで、今日一緒に来たんだよ」
「この本をアンタで試すためだけど? ダイエットでわざわざアンタの協力借りようなんて思わないよ」
「…………」
いつも剽軽な孝介が目に見えて沈んでる。
「お、俺……不器用つーか、その……」
「はぁ? 無神経の間違いでしょ。バカじゃん」
謎。ほんと謎。
さっさと暗示をかけて、コイツの思考を解明してやる。きっとロクでもない頭してるんだろうけど。
「はいこれ見て」
ノートの向きを変えて、彼に預ける。
受け取ったのを胡散臭そうに見つめるので、
「書いてある文字読んで。そしたら暗示がかかるらしいから。ほら早く」
「……分かったよ。こんなの、どうせかからないだろうけどな」
孝介はぶつくさ言った後――
「ルーナ、ニトスネオ、モロココモミ、ハンブジ、レーソ」
読み上げた。
「どう?」
「………………」
「孝介?」
柚希は異変に気付いた。彼の眼が、虚ろになっている。そして、生気が抜けたような顔。無感情。
「まさか、かかった?」
と、その時――孝介がおもむろに立ち上がった。柚希の隣までやって来ると、
「えっ、何――んぅっ!?」
唇を押し付けるように塞ぐ。貪欲にむさぼってきた。
「ちゅっ、んんぅっ、ば、ばか、くちゅ、んむ……っ」
顔を揺さぶって逃げようとしても、大きな手がガシッと両頬を抑え込んでいる。ビクともせず、無理やりなキスが続く。
(嫌っ、止めて……っ!)
荒い鼻息が絶え間なくかかる。雑な接吻は歯が何度も当たって痛い。唇も口内も、所々に傷が付いてヒリヒリした。
「ぷはっ。ちょっといきなり何すんの!? 汚いっ、汗臭いっ! マジありえないか――ひいいぃぃ!?」
キスが終わったと思ったら、今度はTシャツの下に頭を突き入れてきた。それに合わせて這ってきた手がブラを千切るくらい強く上にずらして、敏感な粒を指と舌で激しく攻め立ててくる。摘ままれ、吸われる。
「な、にゃんで……! 暗示かかって、ひぃぃんっ! だ、だめ……っ、そんな舐め方っ、指使いも激しくて……っ!」
嫌だ。心底気持ち悪い。なのに――
「き、気持ち良くなんて、ない……っ! こんなの全然っ、あぁぁバカぁぁ~っ! 乳首噛んじゃ嫌ぁぁ~っ! 刺激強過ぎて、頭クラクラって……っ!」
朦朧とする意識。それを何とか繋ぎ止めていたのは環境だった。周りの十人程度がこちらを驚愕の目で見ていた。
「警察っ! 誰か警察ぅぅぅぅんんっ! よ、呼んで……っ、く、だ、ひゃあああっ、パンツに手入れるなぁぁぁッ、最低ッ! このっ、このっ!」
服の下でモゾモゾ蠢く頭部を両手で殴りつける。だけどそれに比例するように汚い手も口も動きが強く激しくなった。
「ひぃぃぃぃんっ!? も、もうりゃめぇ~……っ、股がゾクゾクって、で、出るぅぅ出ちゃうから手ぇ抜いてぇよぉ~っ……だ、誰かぁ止めてくだしゃいぃ……!」
快感が敏感な肉粒とクリトリスを中心に全身へ走り抜けて、脳を快楽漬けにする。気持ち良さで何も考えられなくなる。
「きちゃうっ、きちゃうッ、きちゃうぅぅぅぅぅぅぅぅ……!」
びゅしゃぁぁぁぁッ。陰穴から大量のお汁が噴射し、股から太ももにかけて恥液が飛び散った。蜜液をふんだんに吸ったスパッツが肌に気持ち悪い。ツーっと淫らな雫が脚を伝っていくのが分かる。
「はぁ、はぁ、孝介の、ヘンタイ……! こんなことして許されると思ってんの!? 絶対警察行きだからんね!? 分かって――え?」
太い腕が背中に回って、信じられないくらいの剛力で抵抗も許さず体を反転。椅子に手を突く格好になり、あっという間にスパッツを下ろされた。
「ま、待って待って待って誰か助けいぃぃぃぃぃっ!?」
固くて熱いモノが子穴に触れ、一気に差し込まれる。幕が裂け、激痛が襲う。しかし膣内の陵辱は止まない。
「痛いッ、痛いから抜いてぇぇッ!」
パンパンパンとお尻に腰を打ち付けてくる度、苦悶の叫びが口から飛ぶ。そのうち声がかれて喉が痛むようになる。
「ほら君その子から離れなさいッ!!」
周囲に居る人の中から、スーツ姿のサラリーマンらしき男性が駆けてきた。
やっと助かる……! と思ったのも束の間――
「邪魔すんじゃねえ!」
孝介が吠えて、傍にあった椅子を掴むと横薙ぎに振った。丁度男性のこめかみに直撃してその体が床に倒れる。ぴくりともしない。気を失ったようだった。
「だ、誰かぁぁっ! 私をっ、助けてぇぇひぃぃぃくだぁしゃぁぁ……! あひぃぃっ……そこぉぉ、ダメぇなのぉぉぉ……っ」
痛くて痛くて気絶しそうだったのに、次第に身体へ心地よい感覚に代わってきた。口から漏れるのは喘ぎ声になる。
「あんッ、あんッ、あんッ、あんッ……!」
認めたくない。嫌なのに、最悪な気分なのに! 感じているなんてっ! 自分の体は、こんなにも嬉しく感じてしまっている!
「あひぃっ、あひぃ、だめぇぇもぉぉおかしくなっちゃうぅぅ……っ」
膣をゴリゴリと肉棒で擦られ、最奥をコンコン突っつかれ、内心とは逆に身体は喜び酔ったようになる。
「気持ち良くなんて、思いたくないのにぃぃぃぃぃ!」
恥ずかしくなってる自分。
それを大勢が見てる。助けに来た男性が昏倒したことから、誰も近づけない様子。
スマホで警察に追報しているらしき人もいるけど、中にはこっそりスマホのレンズを向けている人もいた。
「録っちゃ嫌ぁぁぁ! 見ないでッ、こんな私を見ないでぇぇぇ!」
「こいつは俺だけの女だぞ! 散れてめえら!」
「孝、介っ?」
膣への抽送が続く中、背後から確かに彼の声がした。そういえばさっきも『邪魔すんじゃねえ!』って――
「話せるの!? ねぇ孝介話せるの!? 暗示にはかかってないの!?」
「……」
「ねえってば!」
「……」
しばらく待っても返事がない。ただ牡棒が抜き差しされるだけ。
「じゃ、じゃあ質問を変えるね!? なんでこんなことするのっ!?」
「お前が好きだからだよッ!」
「好、き……っ?」
で、でも――
「嘘よっ、だっていつもからかってきたり、意地悪するじゃん!」
「好きだから、関わりたくて、そうしちまうんだよッ!」
「っ……!」
たぶん今、孝介は内面を正直に現す暗示がかかってる状態。言葉にも、行動にも、正直にそうしたいという思いが乗ってるんだ。
「小学生、みたいじゃん……っ! この幼、稚……っ! あんたは満足だったかもしんないけど、私は毎日毎日っ、嫌だったんだからね……っ!」
「悪かった! でも好きだッ! 柚希のこと大好きだ! 犯したくて、ずっと我慢してた!」
「ば、バカいきなりそんな激しくしたら……っ、あっあっあっあっあっあっ!? ぬ、抜いてよ! 私はアンタなんか嫌い! 精神年齢低いバカなんて、無理! 今までされた仕打ち許してなんかやらないっ、絶対好きになんてならないっ!」
「ゆ、柚希っ、俺イク……ッ」
「は、はぁ!? そんなっ、中に出しちゃ嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「くあああ……ッ! 出る……っ」
孝介が切なげに唸った瞬間、膣内に熱々の精子が勢いよく射出された。同時に彼の最後の押し込みが、柚希を二度目の絶頂へ導く。
「ひぃぃぃぃぃぃぃんっ!?」
足腰がブルブル震えるほどの快感。相変わらず、気分は膣に出されて最悪なのに、体だけが歓喜に震えていた。
牡筒が恥口から抜かれ、腰を掴んでいた孝介の手も離れると、いよいよもって体を支えられなくなる。
膝を突き、椅子にしな垂れかかり呼吸を整える。その時、後ろでバタンッ、と物音。振り返ると孝介が仰向けに倒れており、気を失っていた。
***
意識を取り戻した孝介は、何も覚えていない、と述べた。警察の厳重な取り調べにも、「俺は何も知りません!」「無罪だ!」「何かの間違いだ!」と容疑を否認し続けたという。
彼の子種により妊娠して、「この子に罪はない。死なせたくない」と、中絶することを選ばなかった柚希は、高校を中退して、大きく膨れたお腹に手を添えて思うのだ。
あの本に書かれていることは本当だったと。〝ルーナ、ニトスネオ、モロココモミ、ハンブジ、レーソ〟を安易に口に出してはいけないと。催眠術は実在するのだと。
「捨てれないし、焼却もできないよね。あなたを恵んだ元だもん」
本は、家の金庫に鍵をかけて仕舞ってある――。
「あ~あぁ~……」
沈鬱いっぱいの表情で机にだらんとしな垂れかかり、内田(うちだ)柚希(ゆずき)は気怠さを声に乗せた。これから一年お世話になる机の上でぎゅぅぅと顎先がつぶれる。
幼なじみで、お調子者の〝月(つき)城(しろ)孝(こう)介(すけ)〟。
幼稚園の頃、彼の投げた泥団子が顔面に直撃した。小学校の頃、少し背伸びして買った下着をスカート捲りで何度も周囲に晒された。中学校の頃、誕生日だからと言ってクラスメイトの目がある教室で紐同然の下着をプレゼントされた。去年は、知らないうちに水筒へ大量のワサビを入れられそれを飲まされた。
他にもたくさんある。挙げていないだけで、数え切れないくらいに。
さっきの時間は、学級委員長を推薦という形で押し付けられた。成績も生活態度も良かったことが先生を乗り気にさせ、断れ切れずにしぶしぶ引き受けることになった。
「さいあくすぎるぅ~……」
顎に痛みを感じて、今度は額をくっ付け支えを変える。視界に木目模様が広がる。
動いてないと落ち着かない。机からはみ出した手をパタパタ。ぐるんぐるん渦巻くいろんな感情を、指先の高速バタ足っぽい動作で消化していく。
「もぉぉぉぉぉ~……っ」
「ははは……。ドンマイ、柚希」
前の席から苦笑が聞こえてきて、柚希はのそーっと額を持ち上げた。腕を畳んでそこへ顎を乗っけると、今度はぷにぷに柔らかい。嬉しい反面、二の腕のお肉が……とダイエット衝動に駆られる。
「わっ、死んだ魚みたいな目してるよ」
「繭子~っ」
親友の河津(かわづ)繭子(まゆこ)。小学校からの付き合いで、大の仲良し。
とても面倒見が良くて、明るく朗らかな性格をしている。気が合って、趣味も合う。ただ彼女は運動が得意なタイプで、そこだけは正反対だった。
「……私、二の腕のお肉ヤバいかも」
「えっ、そっち? 委員長になったことじゃなくて?」
「思い出させないでよ~っ」
唸ると、繭子は「あはは」と耳に心地よい笑い声をひびかせる。
「分かったよ、じゃあその話に乗っかってあげる。どれどれ~?」
友人の手が伸びてきて、腕のお肉を指先でもにゅもにゅと揉んだ。興味津々で愉快な顔だったのが、次第に険しくなっていく。
「……お肉付いたね」
「やっぱり?」
「また孝介君にからかわれちゃうかもね」
「そ、それはヤダっ! ムカつくッ!」
大声。そしてガタンッ! という、椅子の背が床に倒れる嫌な音。柚希はそれらを立てて腰を浮かしていた。
騒々しい柚希のもとへクラス中の視線が集まる。休み時間だから廊下にいた他クラスの生徒まで何事かと注目していた。
「~~っ」
沸騰気味に熱くなる顔。しゅんっ、と肩を縮め、椅子をすばやく起こして着席。机に突っ伏して「厄日だぁ~~……っ」と叫んだ。腕の中でくぐもった声が響き渡る。
「ほれほれ、元気出しなって。髪、梳いてあげるからさ」
「……うん」
心優しい繭子。身を起こした柚希の後ろに回って、ヘアブラシをかけ始める。
落ち込んだとき、友人はいっつもこうしてくれる。丁寧な手付きで髪を撫で、ブラシで綺麗に整えてくれる。
「いいなぁー柚希の髪。茶色っぽいけど地毛だから、校則違反にならなくてさ」
「でもちょっと癖っ毛だし、手入れが大変だよ?」
「そのくらいの苦労なら許容範囲だしー」
「……ねぇ繭子。運動らしい運動をせず、食べるのもあんまり我慢せず、痩せる方法ってない?」
「通販アイテム」
「それ注文しようとしたらお母さんに運動しろって言われて買えなかった」
「じゃあ運動だね。あと食事制限」
「どっちも苦手……」
「食事制限はできるでしょ、がーまーん。ていうか柚希は、少しふくよかなくらいが丁度いいよ。愛嬌があって可愛いし、今をキープしたら?」
「でもアイツがうるさいし……」
「セクハラで訴える?」
「訴える」
むくれて唇に力が入る。
馬鹿でお調子者の孝介。一度痛い目を見ればいいのだ。
そんな風にぷりぷり怒っている間も、繭子が髪を丁寧に梳いてくれる。後ろでストレートに流れる茶髪をイメージすると、嬉しくて唇が綻ぶ。
「終わったよ」
「繭子、ありがと」
「ううん」
自分の席に戻った繭子が、机から本を一冊取り出した。
「授業までもう少し時間あるし、心理テストでもする?」
「するっ!」
占いとか心理テストとか、大・大・大好き。未来が明るくなる気がするし、自分の意外な一面を知ることもできるし、とーってもロマンチックだ。疲れた時とか、イヤなことがあった時に、ハーブティーを飲むみたいな癒しになる。
「じゃあ第一問ね」
「うんっ」
そんな感じで繭子といっしょに心理テストを進めていると、一人の男子が割り込んできた。
「おーおーっ、また心理テストかよ。懲りないね~」
中肉中背で、顔も普通。髪は短髪。そんな何処にでもいる風貌で、いつもひょうひょうとした態度を崩さないのは月城孝介。憎いことこのうえないヤツ。
「なによ」
自分でも驚くくらい低い声が出る。
孝介は肩をすくめ、鼻を鳴らして、
「柚希さ、そんなでたらめテストに心を囚われてていーのかよ? どこぞの学者がてきとーに作り上げた嘘に夢中になるとか、阿保らしいとしか言えないね」
「適当でも、嘘でもないもん」
「飽きれるほどピュア過ぎる。まさかお前、超能力とか信じてる口?」
「……そうだけど」
催眠術も、未来予知も、テレパシーも、本当にあると思っている。オカルトの類を信じる女子高生なのだ。
「うわー。マジでそんなんに時間を割くとか馬鹿らしいぜ。これっきりにして他の事やるべきだね」
「何しようが、私の勝手でしょ。いっつもいっつも突っかかってきて、ほんとウザい」
「おいおい柚希。これは最近太ってきたお前への忠告だぜ? そういうインドア物止めて、運動でもしたらどうですか~? 何なら俺も一緒にしてあげますよ~?」
「……っ! ほんと腹立つ! どっか行ってよッ!」
「おおぉ~怖っ。でも今、カロリー消費できてるよな。もっと怒ってく?」
「死ねバカ! デリカシー皆無男! 全女子の敵!」
気に障る発言が沢山。
柚希はぶくぶくと怒りが煮えたぎり、キッと孝介を睨み付けた。
こんな刺々しい言動、向けるのはコイツにくらいだ。他の人には絶対しない姿。そもそもする必要に駆られたことがなかった。
孝介は他の人の入り込む余地がないくらい、執拗に絡んでくるから。ほんとウザい。
「もう、二人は相変わらずだなぁ……」
繭子が呆れと微笑ましさ半々くらいの顔でこちらを見守っていて、柚希は『助けてくれてもいいのに』という気持ちが浮かぶ。
親友はいつもそう。孝介とのやり取りを、傍観することを選ぶ。前に理由を訊いたら『邪魔したくないんだよね』なんて答えた。きっとコントか何かと思ってるんだ。これについてはいろいろ思うところがあるけど、繭子には大好きなところがいっぱあるから、嫌いになんかなれない。
「繭子、こんなヤツ無視して続けよ」
「あ、柚希。今度一緒に運動する場所どこがいい? グラウンド? 公園? それとも本格的にジムでも行くか?」
「うるさいっ、あっち行ってて!」
しつこい孝介を、柚希は苛立ち全開で押しやった。
数日後の放課後、教室でのこと。部活をしていない柚希が帰り支度をしていたら、繭子が慌ただしく本を一冊渡してきた。
「何これ?」
「えーっとね、催眠術の本かな。行きつけの古本屋でもらっちゃった。きちんとこれに書いてある通りにやれば効果アリらしいよ」
本は、A4くらいのサイズ。ページ数はたぶん十ページもなくて、とても薄い。左側に穴が幾つか開いており、紐で括って留めてある。古めかしくて手作り感があった。
「効果、ってどんな?」
「内面を正直に現す暗示がかかるんだってさ。孝介君に使ってみれば?」
「……なんでアイツが出てくるの?」
「ふふっ。まあとにかく、嘘か本当か試してみなよ。私は部活があるからもう行くね」
「う、うん」
「明日、どうだったか教えてね」
繭子は「バイバイ!」と手を振った後、すたたたたーっ! 陸上部らしく軽快に教室を出て行った。いつ見ても速いランだ。
「おい柚希、ダイエットメニュー考えといたぞ。もちろんやるだろ?」
丁度その時、孝介がニヤニヤ笑みでやって来た。
彼はサッカー部だけれど、毎週水曜日は休みらしい。今日がその日。放課後に絡まれることが分かっていたので、朝から憂鬱だった。
いつもなら適当にあしらって帰宅するところを――少し逡巡した後、
「……やったげる」
彼の挑発に乗った。
機会を作って、繭子に渡された本を試してみたいと思ったのだ。
まさか了承するとは思わなかったのだろう。孝介は目を見張って驚き顔。
「……お、おう、マジか。じゃあ、行くか」
戸惑いと怪訝を半分ずつ。そんな表情で孝介は頷いて、教室の外へ歩き始めた。
一度帰って、運動できる服に着替えてから再集合。半袖Tシャツにスカートとスパッツ。
家が隣同士なので外で待っていれば自然と落ち合うことができる。
何処に行くのかと訊いたら、ボーリングと彼は答えた。てっきり公園でランニングとか筋トレっぽいのをすると思っていたから意外だった。
「お前、そういうのしてもすぐ飽きるだろ」
「……気が利くじゃん」
ほんのちょっと、見直した。
ふーん。やるじゃん。運動でもゲーム感覚で出来るなら、少しは楽しめそうかも。
家の近くにあるアミューズメント施設に到着する。一階はフードコート、二階はボーリング場、三階はスケート場になっている。
繭子と前に来たことがあって、その時は一ゲームだけボーリングをした。
「ちなみに何ゲームするの?」
「十ゲーム」
「………………」
カウンター前で踵を返して、無言で帰ろうとしたら肩を掴まれた。
いくらなんでも多過ぎるでしょバカ孝介。
「あぁ~もう疲れたぁ~……」
一階のフードコートでウーロン茶をちびちび飲みつつ、十ゲームの疲れを取ろうとするけど全然ダメ。抜けない。
かと言って机で眠るのは無理。他にもお客さんがいる。人目を集めるのは恥ずかしい。帰る気力も今のところ湧かない状態だった。
「お前、体力無さ過ぎ」
向かい側の席で、呆れ混じりに孝介。
柚希は「……もうアンタとは二度と来たくない」と言い返した。
「は? 何でだよ」
「……疲れるからに決まってるじゃん」
「ダイエットすんだから、そんなもんだろ」
「……ハード過ぎるのが分からない? 途中で『もう辞めない?』って提案しても全く聴き入れないし、ほんと人の気持ち考えないよね」
孝介の表情が歪む。
「お、俺はただ……お前と……」
「何?」
「…………」
「はぁ……。孝介が何考えてるか、マジ分かんない」
柚希は頭を悩ませ、ふと思い至った。
催眠術の本。内面を正直に現す暗示をかけられると、繭子は言っていた。もし効果が出ればこの理解不能男について知ることができるかもしれない。
試してみよう。本をバックから取り出し、テーブルの上に置く。ざっと目を通していたら孝介が目を剥いた。
「何だよ、それ」
「アンタが嫌ってるオカルト系の本。今から催眠術かけるから試験体になってよ」
「お前またそういうのを……。マジでやめろよ。変なことに時間割いてないで、人と話したりする方が有意義ってもんだろ」
「はぁ? 有意義? この場合、アンタでそれを得ろってことだよね? 今までアンタと話してて、良かったなんて思ったこと一度もないんだけど」
「……」
「自分本位。自分に酔い過ぎ。言っとくけど、私が今日のこと少しでも感謝してるなんて思ってるなら、大間違いだから」
「……じゃあなんで、今日一緒に来たんだよ」
「この本をアンタで試すためだけど? ダイエットでわざわざアンタの協力借りようなんて思わないよ」
「…………」
いつも剽軽な孝介が目に見えて沈んでる。
「お、俺……不器用つーか、その……」
「はぁ? 無神経の間違いでしょ。バカじゃん」
謎。ほんと謎。
さっさと暗示をかけて、コイツの思考を解明してやる。きっとロクでもない頭してるんだろうけど。
「はいこれ見て」
ノートの向きを変えて、彼に預ける。
受け取ったのを胡散臭そうに見つめるので、
「書いてある文字読んで。そしたら暗示がかかるらしいから。ほら早く」
「……分かったよ。こんなの、どうせかからないだろうけどな」
孝介はぶつくさ言った後――
「ルーナ、ニトスネオ、モロココモミ、ハンブジ、レーソ」
読み上げた。
「どう?」
「………………」
「孝介?」
柚希は異変に気付いた。彼の眼が、虚ろになっている。そして、生気が抜けたような顔。無感情。
「まさか、かかった?」
と、その時――孝介がおもむろに立ち上がった。柚希の隣までやって来ると、
「えっ、何――んぅっ!?」
唇を押し付けるように塞ぐ。貪欲にむさぼってきた。
「ちゅっ、んんぅっ、ば、ばか、くちゅ、んむ……っ」
顔を揺さぶって逃げようとしても、大きな手がガシッと両頬を抑え込んでいる。ビクともせず、無理やりなキスが続く。
(嫌っ、止めて……っ!)
荒い鼻息が絶え間なくかかる。雑な接吻は歯が何度も当たって痛い。唇も口内も、所々に傷が付いてヒリヒリした。
「ぷはっ。ちょっといきなり何すんの!? 汚いっ、汗臭いっ! マジありえないか――ひいいぃぃ!?」
キスが終わったと思ったら、今度はTシャツの下に頭を突き入れてきた。それに合わせて這ってきた手がブラを千切るくらい強く上にずらして、敏感な粒を指と舌で激しく攻め立ててくる。摘ままれ、吸われる。
「な、にゃんで……! 暗示かかって、ひぃぃんっ! だ、だめ……っ、そんな舐め方っ、指使いも激しくて……っ!」
嫌だ。心底気持ち悪い。なのに――
「き、気持ち良くなんて、ない……っ! こんなの全然っ、あぁぁバカぁぁ~っ! 乳首噛んじゃ嫌ぁぁ~っ! 刺激強過ぎて、頭クラクラって……っ!」
朦朧とする意識。それを何とか繋ぎ止めていたのは環境だった。周りの十人程度がこちらを驚愕の目で見ていた。
「警察っ! 誰か警察ぅぅぅぅんんっ! よ、呼んで……っ、く、だ、ひゃあああっ、パンツに手入れるなぁぁぁッ、最低ッ! このっ、このっ!」
服の下でモゾモゾ蠢く頭部を両手で殴りつける。だけどそれに比例するように汚い手も口も動きが強く激しくなった。
「ひぃぃぃぃんっ!? も、もうりゃめぇ~……っ、股がゾクゾクって、で、出るぅぅ出ちゃうから手ぇ抜いてぇよぉ~っ……だ、誰かぁ止めてくだしゃいぃ……!」
快感が敏感な肉粒とクリトリスを中心に全身へ走り抜けて、脳を快楽漬けにする。気持ち良さで何も考えられなくなる。
「きちゃうっ、きちゃうッ、きちゃうぅぅぅぅぅぅぅぅ……!」
びゅしゃぁぁぁぁッ。陰穴から大量のお汁が噴射し、股から太ももにかけて恥液が飛び散った。蜜液をふんだんに吸ったスパッツが肌に気持ち悪い。ツーっと淫らな雫が脚を伝っていくのが分かる。
「はぁ、はぁ、孝介の、ヘンタイ……! こんなことして許されると思ってんの!? 絶対警察行きだからんね!? 分かって――え?」
太い腕が背中に回って、信じられないくらいの剛力で抵抗も許さず体を反転。椅子に手を突く格好になり、あっという間にスパッツを下ろされた。
「ま、待って待って待って誰か助けいぃぃぃぃぃっ!?」
固くて熱いモノが子穴に触れ、一気に差し込まれる。幕が裂け、激痛が襲う。しかし膣内の陵辱は止まない。
「痛いッ、痛いから抜いてぇぇッ!」
パンパンパンとお尻に腰を打ち付けてくる度、苦悶の叫びが口から飛ぶ。そのうち声がかれて喉が痛むようになる。
「ほら君その子から離れなさいッ!!」
周囲に居る人の中から、スーツ姿のサラリーマンらしき男性が駆けてきた。
やっと助かる……! と思ったのも束の間――
「邪魔すんじゃねえ!」
孝介が吠えて、傍にあった椅子を掴むと横薙ぎに振った。丁度男性のこめかみに直撃してその体が床に倒れる。ぴくりともしない。気を失ったようだった。
「だ、誰かぁぁっ! 私をっ、助けてぇぇひぃぃぃくだぁしゃぁぁ……! あひぃぃっ……そこぉぉ、ダメぇなのぉぉぉ……っ」
痛くて痛くて気絶しそうだったのに、次第に身体へ心地よい感覚に代わってきた。口から漏れるのは喘ぎ声になる。
「あんッ、あんッ、あんッ、あんッ……!」
認めたくない。嫌なのに、最悪な気分なのに! 感じているなんてっ! 自分の体は、こんなにも嬉しく感じてしまっている!
「あひぃっ、あひぃ、だめぇぇもぉぉおかしくなっちゃうぅぅ……っ」
膣をゴリゴリと肉棒で擦られ、最奥をコンコン突っつかれ、内心とは逆に身体は喜び酔ったようになる。
「気持ち良くなんて、思いたくないのにぃぃぃぃぃ!」
恥ずかしくなってる自分。
それを大勢が見てる。助けに来た男性が昏倒したことから、誰も近づけない様子。
スマホで警察に追報しているらしき人もいるけど、中にはこっそりスマホのレンズを向けている人もいた。
「録っちゃ嫌ぁぁぁ! 見ないでッ、こんな私を見ないでぇぇぇ!」
「こいつは俺だけの女だぞ! 散れてめえら!」
「孝、介っ?」
膣への抽送が続く中、背後から確かに彼の声がした。そういえばさっきも『邪魔すんじゃねえ!』って――
「話せるの!? ねぇ孝介話せるの!? 暗示にはかかってないの!?」
「……」
「ねえってば!」
「……」
しばらく待っても返事がない。ただ牡棒が抜き差しされるだけ。
「じゃ、じゃあ質問を変えるね!? なんでこんなことするのっ!?」
「お前が好きだからだよッ!」
「好、き……っ?」
で、でも――
「嘘よっ、だっていつもからかってきたり、意地悪するじゃん!」
「好きだから、関わりたくて、そうしちまうんだよッ!」
「っ……!」
たぶん今、孝介は内面を正直に現す暗示がかかってる状態。言葉にも、行動にも、正直にそうしたいという思いが乗ってるんだ。
「小学生、みたいじゃん……っ! この幼、稚……っ! あんたは満足だったかもしんないけど、私は毎日毎日っ、嫌だったんだからね……っ!」
「悪かった! でも好きだッ! 柚希のこと大好きだ! 犯したくて、ずっと我慢してた!」
「ば、バカいきなりそんな激しくしたら……っ、あっあっあっあっあっあっ!? ぬ、抜いてよ! 私はアンタなんか嫌い! 精神年齢低いバカなんて、無理! 今までされた仕打ち許してなんかやらないっ、絶対好きになんてならないっ!」
「ゆ、柚希っ、俺イク……ッ」
「は、はぁ!? そんなっ、中に出しちゃ嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「くあああ……ッ! 出る……っ」
孝介が切なげに唸った瞬間、膣内に熱々の精子が勢いよく射出された。同時に彼の最後の押し込みが、柚希を二度目の絶頂へ導く。
「ひぃぃぃぃぃぃぃんっ!?」
足腰がブルブル震えるほどの快感。相変わらず、気分は膣に出されて最悪なのに、体だけが歓喜に震えていた。
牡筒が恥口から抜かれ、腰を掴んでいた孝介の手も離れると、いよいよもって体を支えられなくなる。
膝を突き、椅子にしな垂れかかり呼吸を整える。その時、後ろでバタンッ、と物音。振り返ると孝介が仰向けに倒れており、気を失っていた。
***
意識を取り戻した孝介は、何も覚えていない、と述べた。警察の厳重な取り調べにも、「俺は何も知りません!」「無罪だ!」「何かの間違いだ!」と容疑を否認し続けたという。
彼の子種により妊娠して、「この子に罪はない。死なせたくない」と、中絶することを選ばなかった柚希は、高校を中退して、大きく膨れたお腹に手を添えて思うのだ。
あの本に書かれていることは本当だったと。〝ルーナ、ニトスネオ、モロココモミ、ハンブジ、レーソ〟を安易に口に出してはいけないと。催眠術は実在するのだと。
「捨てれないし、焼却もできないよね。あなたを恵んだ元だもん」
本は、家の金庫に鍵をかけて仕舞ってある――。
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