セックスハウスへようこそ! ~お客様が望む女性を魔法で作り出し提供します~

ヨスガラ

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セックスハウスの成り立ち@後編

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 生活するには金が要る。
 人民を魔法で脅して金銭を巻き上げることもできるが……良心が痛む。
 なら体を売る、と――他の道を模索しないで、巡ってきた売女になる道を選んだ魔法使い一行だった。

 手っ取り早い。
 そうだ。そうなのだ。

 フレディアの思考は自分への言い訳を繰り返していた。

 どこの馬の骨とも知れない輩と体を交えたくない……なんて嫌悪感は、胸の内に沈めておかねばならない。

 口調は男っぽく荒いが、フレディアは非常に繊細な女である。魔法駆使や他の面でも器用さを発揮していた。
 また、彼女はしっかり者のお姉さんであり――それゆえ貞操観念は強かった。こういった状況でさえなければ体を差し出すことはしなかっただろう。

 二階でエレベーターを降りる。
 フレディアたちが男等に通されたのは、ベットが三つある部屋だった。カードキーがスイッチの役割を果たして、温かな色合いの照明を付ける。

「ささ。三人ともそれぞれベットに一人ずつ付こうか」
「うわっ、ド直球!」
「まあ早くヤりたいし、いいけどよ」

 下卑た笑みが瑞々しい女体へと集まる。欲に満ちた瞳がローブの下を透視するかのごとくジロジロと視姦した。

 男等の鼻孔が膨らみ、下半身の一部が隆起する。

 それを見てまずニーナが歩を進め、一番奥のベットに付いた。立ち止まり男等に背を向けるとローブの裾に指をかける。クロスした腕を持ち上げ、白い細腰からうなじまで晒してローブを脱ぎ去った。一度だけ見えた剥き出しの背中は、しかしはらりと垂れた長い黒髪によって腰まで隠れた。
 ローブを胸元に掻き抱いて、半身になるニーナ。

「……二人とも私に倣って」

 普段感情をあまり出さない幼顔も、この時ばかりは頬を微かに細めて羞恥の様相を呈していた。

「どうせやるなら、楽しまなきゃですよねっ」

 ここへの道中で事態をフレディアとニーナに説明され、理解に及んでいたルルーナは、前向きに明るくローブを脱ぎ去った。

 豪快な脱衣によって健康的な血色の良い裸身が露わになる。均等の取れた美しい体付き。滑らかな素肌が暖色系の光を浴びて色香を発していた。
 手の平を当てればややはみ出そうなサイズを誇る乳房は、薄ピンク色に主張する小粒をちょこんと乗せている。

 長い青髪を揺らして、
「は、恥ずかしいですね」
 と赤ら顔で身じろぎする。美乳がふよふよと左右に揺れ、自分の細腕に当たって形を変えた。まるで中身が水であるかの様だった。

 魔法使いは基本的にローブの下は裸体である。
 なぜなら魔力の効率化を図るにあたって、全身の細胞とローブの間に阻害となるものがあってはならないから。下着類を身に着けた場合ローブの効果が衰えるのだ。

 というわけで魔法使いは一糸まとわぬ姿が推奨され――それはフレディアも同じである。
 硬い表情で静々とローブを脱ぎ、艶美な肢体に実った豊かな乳房をぼよんと揺らした。
 茶褐色できめ細かに構成された肌。引き締まった腹部は、ぎゅっと窪むようなクビレを生んでいる。
 手近な椅子に腰かけ長い脚を組むと、鋭い目付きを男等へ向けた。

「……ジロジロ見てんじゃねーよ」

 紅い髪を手先で玩びながら不満げに唸るフレディア。
 仏頂面でありこれから性交をする女にはとても見えないが――とはいえその艶美な姿に男等は色めき立った。

「俺はこの子」
「よっしゃ。じゃあ青髪の子ゲットで」
「黒髪で童顔だろやっぱ」

 男たちがそれぞれ相手を決め、ベットに向かう。歩きながらシャツを脱ぎ、ズボンも下ろした。パンツ一丁になって瑞々しい肩に両手を置く。

「んっ……優しく、お願いしますね」「くすぐったい……」

 ルルーナとニーナが喘ぐように言った。

 肩や腕を相手の男に撫でられ、目をキュッと瞑る。髪の匂いを嗅がれ、体を竦ませた。

「フレディアちゃん、だっけ? 君もベットに行こうよ」

 一方、紅髪の妖女は足を組んで椅子に腰かけたままである。依然表情は硬く、しかめっ面であり、刺々しい眼差しを自分に迫る男、そしてルルーナやニーナの体に触れる男二人に送っていた。

 睥睨するようなフレディアの顔付き。相手取る男は溜息をこぼして、声に呆れを滲ませる。

「……ほら、いい加減にしないとお金出さないよ? ていうかあの二人が我慢してるのに一人だけ――」

 男が言い終わる前に、フレディアの唇が何事かささやいた。
 直後――男が後方に吹っ飛ぶ。ドゴッ! と後頭部を激しく壁に打ち付け、そのまま力なくベットにずり落ちた。壁に背を預けて首を折り昏倒する。

「「なっ……」」

 残る男等二人は絶句。

 口をあんぐりと開けて、フレディアの方を窺った。

「なに、した……?」

 疑問を顔に張り付ける男も、その呟きが合図だったかのように壁へ弾かれる。続けて傍にいた残る一人も。

 ルルーナとニーナが瞬きを一回した時にはもう、三つのベットでそれぞれ似たような姿勢で男等が気を失っていた。

「はへ……?」
「……フレディア、魔法」

 あと少しで肩を触られる以上の仕打ちを受けていただろう二人が、厳めしい面構えのフレディアを見つめる。

「……魔力が勿体ない」
「そういうことじゃねーだろ」

 的外れなぼやきに、フレディア自らツッコむと――

「……魔力を持たない人間に使ったことを咎めるべき?」

 ニーナが疑問形の語調で言った。

「ああー! フレディアさん何やってるんですかーっ! お金っ、貰えなくなっちゃいますよぉー!」

 とそこで怒りと心配を器用に織り交ぜた表情でルルーナ。
 フレディアに食ってかかる――と思いきや、自分と性交する筈だった男に「大丈夫ですか~!?」と言って泡を食ったように寄って行った。

 ルルーナが男の介抱へ至る前に――

「貰えばいいじゃないか」

 しっかり響き渡る声でフレディアは口にした。

「ルルーナ、ニーナ。そいつらの財布からお金を抜き取りな」

「「……」」

 その命令的な促しに二人は静止した。瞳孔を大きくして、フレディアを信じられないものを見るように直視する。

「……正気?」
「ニーナ。あんたはもっと利口な筈だよ」

 フレディアの諭しがニーナに思考を与える。

「……力尽くで金銭を奪う真似は何があっても許される行為じゃない」
「売淫だって本来なら好ましくないけどね」

 沈黙。
 ぐうの音も出ないニーナ。

 フレディアが先んじて自分を襲う筈だった男のズボンから長財布を抜き取り、遠慮なしに開く。

「紙幣が結構あるね。どれくらいの価値があるのか知らねーけど」

 彼女の細指には一万円札が二枚と千円札が四枚あった。それを机に置くと財布を投げ捨て、床に落ちていたローブを拾い上げる。

「あんたらも速くしな。そいつら起きちまうよ」

 フレディアが着衣して裸体を覆い隠した。

「……やってしまったものは仕方ない。パーティーメンバーとして加担するしかない」

 不承不承ながら、とはいえ仲間思いの片鱗を覗かせつつニーナが財布を拝借した。小銭収納部のチャックを引いて、床に向けて財布を激しく振る。
 じゃらじゃらっと小銭が落ちて、ぱさぱさーっと紙幣やらレシートやらが舞い落ちた。

「……フレディアは損してる。やるなら貨幣も盗るべき」

 抜け目のない行動にフレディアは瞠目して、ニーナとは異なり財布に指を入れて貨幣を取り出した。

「……この財布に纏めて入れる。フレディア、盗ったお金を渡して」
「お、おう」

 急に協力的かつ頼もしくなったニーナに、フレディアは戸惑いを隠せない。言われるがままにした。

「二人とも悪ですね……」

 とルルーナは引き気味に呟くも、にぱっと笑顔を咲かせた。

「でも美味しいご飯が食べられるなら反対しません♪ もっとやれやれぇ~です♪」

 るんるん鼻歌を鳴らしながら財布を手にした。その能天気さにフレディア、ニーナは呆れて肩をすくめる。

「……で、これからどうする?」

 ニーナがフレディアに訊いた。
 ルルーナは楽しそうに財布物色に夢中である。

「思い付いたことがある」

 フレディアはニヒルな笑みを浮かべて言った。

「風俗やろうじゃないか。魔法を使ってね」

 一室の惨状を見渡す紅い瞳。フレディアの思惑を黒髪黒瞳のニーナは冷静であり聡い頭を持って考えるも――

「?」

 どういう事かと首を捻るのだった。

「ほへ?」

 ルルーナも間抜け面を晒していた。

***

 魔法を用いた風俗。それは器用に魔力を制御でき扱うことのできるフレディアだからこそ可能な運営方法だった。

 男に体を売って金を得る――この行為を魔法で作った謂わば人形でやればいい。人体を細やかに創造するなど、常に死を隣に置いた戦闘であれこれ考えながら魔法を使うよりかは遥かに楽だった。

 またニーナの幻術魔法も助けになる。
 彼女は戦闘で敵を惑わせる役目を主に担っており、空間を作ったり捻じ曲げたりして相手を攪乱する。その技術を用いて風俗店(セックスハウス)を創造した。さらには部屋の内装まで客の注文通りにしてみせた。

 ルルーナは得意の分身魔法と優れた嗅覚で客の誘い込みを担当。彼女には同時にいくつもの場所に現れ、勧誘できるというアドバンテージがあった。それに加え愛嬌のある顔と快活な性格は男受けが良い。

 風俗店――セックスハウスは、ニーナが命名した。店なのに何故ハウスなのかというと、店であると同時に三人にとって住宅であるからだ。

 ニーナの空間創造を用いて作ったセックスハウスは、魔法という事象柄おおやけにされるのは困るので、街の目立たぬところに空間を生み出して創った。それを常時維持しておくことは魔力量的に厳しいゆえ、夜になったら彼女が創造、朝昼はただの古びた建物として在る。

 彼女たち三人の目的は元の世界に帰ることだった。
 けれどもしばらく営業をして、得た金で生活しているうち――

 食べ物。娯楽。
 向こうには無かったあらゆる物。

 それらの虜になり、今では事業の継続・発展で頭が一杯である。とはいえ魔法のことが世間に広まり過ぎるとどうなるかなど想像に難くないので、慎みを持ってセックスハウスを営業している。全てはこの世界を満喫するために。
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