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第3章
歪んだ想ひは君だけに
しおりを挟む「さや姉?寝ちゃった?」
窓からは眩しい程の夕日が差し込み、二人を茜色に染めていた。匠は立ち上がると沙也加の隣から寝顔を覗き込んだ。満足そうに唇は弧を描いた幸せそうな寝顔に匠は思わず声を殺して笑った。
静かな時間が過ぎた。匠が髪を撫でると、くすぐったそうに笑う沙也加に吸い込まれるように顔を近づけた。
「何をしている?」
低く怒気を含んだ声に匠は動きを止めた。
「__よく寝てるなあって」
「触るな。それは、私のものだ」
「珍しいね。貴兄が何かに執着するなんて」
「___んむ。・・・あれ? 社長、おかえりなさい」
沙也加は手の甲でよだれを拭いながら起きると、直ぐに貴臣に視線を向けた。
「ストーリーは考えたのか?」
「あ、ええ! もちろんです」
「良い子だ」
沙也加は褒めてもらいたい犬の様に、貴臣へとキラキラと視線を向けた。貴臣の大きな手の平が沙也加の頭をくしゃりと撫でると、自然と笑顔がこぼれた。
匠はその横顔を黙って見つめていた。
「さや姉、僕はお暇するね。また一緒にケーキ食べようね」
匠はちゅっと沙也加の唇を奪うと、早足で部屋から出て行った。
貴臣と二人残された部屋は、微妙な雰囲気が漂っていた。
「___なんでお前はそんな簡単に・・・、はあ」
呆れた声が頭上から降ってきた。恐る恐る声のする方を確認すると、いつの間にか真後ろに立っていた貴臣がこちらを見下ろしていた。貴臣の視線に耐え切れずに俯いてしまう。たかが暇つぶしの私の事で怒っているのな・・・、少しは特別なのかな。沙也加は無言でモヤモヤと考えていた。
ぎゅうっ
突然後ろから引き寄せられて、貴臣の力強い腕に抱き締められた。突然の事に何も言えずに固まっていると、更に強い力で抱き締められて胸の奥がきゅうっと苦しくなった。この抱擁に何かの意味があるのだろうか。
そっと貴臣の腕に両手を添えると、ピクリと反応したのがわかった。
「どうしたんですか?」
「___お前は私のモノだろう?」
「それは業務命令でしょうか?」
少しの沈黙の後抱き締められたまま首だけ後ろを向かされると、貴臣の悲しげな瞳がこちらを見つめていた。視線が交わり感情が流れ込んできたかの様に、沙也加の瞳は熱く揺らいだ。
「業務命令だ」
そう小さく呟き噛みつくようなキスが降ってくる。息苦しさからか何なのかわからない涙が、沙也加の頬を濡らした。
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