Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?

キミノ

文字の大きさ
37 / 59
第五章 どうしようもなく、好きな人。

5-7

しおりを挟む



 今日は都内でも一等地に立っているホテルの視察らしく、助手席で器用にメイクをする右手が自然と何時もより濃いメイクを作り上げていた。到着したのは外観から高級感のあるホテルで、正面は全面ガラス張りで中の様子が伺い見れる。ロータリーに入るかと思えばそのまま正面玄関を通り過ぎ、従業員用の裏駐車場で停まった。
 当然のように先に車を降りた匠くんは、助手席に回り私を下ろしてくれた。外出が久しぶりだからか、この王子対応になんだか照れてしまう。匠くんに続いてホテル内の従業員通路を進めば、白髪と黒髪の黄金比で品のあるグレーの髪になった初老の男性が待っていた。

「天野さん。お待たせしました。こちらが話していた、亜子さんです」

「ええ、そうですか。亜子さん。私は大谷会長よりお仕えしている者で、天野と申します。お困りのことがあればなんなりと」

 胸に手を当てて頭を下げる姿を見て、こういう人が執事というのかと思った。それでも隠しきれていない、大谷家の人たちから感じる”似ている”という視線。初めは理解出来なかったけれど、今はその表情の意味ちゃんとわかっていますよ。

「天野さんは本来お父さんに付いているんだけれど、僕の相棒が見つかるまで力を貸してもらっているんだ」

「匠様レベルをサポート出来る者は、なかなか見つからないものでして。この老いぼれが馳せ参じる次第です」

「持ち上げないでください。亜子ちゃんを失望させたくありません」

「はっはっは。何をおっしゃいますか。ご兄弟で一番の策士でありましょう」

「僕はありのまま生きているだけですよ。さあ、行きましょうか」

 私以外といるときの匠くんは、こんな感じなんだ。そう考えると、匠くんは私に合わせて馬鹿な会話をしてくれている・・・?

 誘導するように腰に添えられた匠くんの手が、大人に感じて背筋が伸びる。口を開かなければ、私の脳みそが残念なことには気付かれないはず。不安に視線を投げれば、口角を上げて笑みを返してくれる匠くんが先日まで高校生だったなんて詐欺だ。私が匠くんと同じクラスだったら、百パーセント好きになっている。学年が違ったって、寧ろ先生の立場だったとしても右に同じだ。そう思うと、匠くんの周りにいた男子が不憫でならない。

「えっ?! 社長」

 通路で通りすがった女性従業員はコックコートに身を包んでいて、私たち・・・というか匠くんを見て目を丸くさせている。

「お疲れ様です。変わりないですか?」

「え、ええ、はい」

 女性従業員の目は匠くんに釘付けで、周りにはピンクのオーラが漂っているように見える。匠くんを見れば優しい微笑みを女性従業員に向けていた。そんな顔したら、誰だってポーっとするし好きになっちゃうじゃない。

「何かあったら教えてくださいね。それでは」

「はい、ぃ」

 彼女の瞳に私は一度だって映らなかった。そのくらい、この男は人を魅了するんだと改めて気付かされる。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

終わりにできなかった恋

明日葉
恋愛
「なあ、結婚するか?」  男友達から不意にそう言われて。 「そうだね、しようか」  と。  恋を自覚する前にあまりに友達として大事になりすぎて。終わるかもしれない恋よりも、終わりのない友達をとっていただけ。ふとそう自覚したら、今を逃したら次はないと気づいたら、そう答えていた。

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

元カノと復縁する方法

なとみ
恋愛
「別れよっか」 同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。 会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。 自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。 表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!

貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳 大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。 でも、これはただのお見合いではないらしい。 初出はエブリスタ様にて。 また番外編を追加する予定です。 シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。 表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

処理中です...