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第2章 お前の毒牙になら喜んで。
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しおりを挟む目の前で繰り広げられる光景を黙って見ていた。沙也加の唇を奪った犯人はそそくさと出て行ってしまった。責めるべき相手は一体誰なのだろう。
「なんでお前はそんな簡単に・・・、はあ」
匠が出ていく時に邪魔をしないように沙也加への背後へと移動していた。沙也加はぽかんと、出ていった匠の残像を扉の向こうに見ているようだった。貴臣が後ろに移動している事に気付きもせずに。びくりと肩を揺らして振り返る沙也加は、居た堪れない様子で俯いてる。反省しているのだろうか。あんなに私のモノだと教えてきたのに、私の事を思い出すようにと唇に傷をつけるほど。
黒い感情は膨れ上がり、弾けていた。
気付いた時には腕の中で沙也加が縮こまりながら、固まっていた。それでも拒否する事はせずに、受け止めてくれているようで胸が強く締め付けられる。更に強く、強く抱き締める。このままどこにも行けない様に閉じ込めておきたかった。
身勝手な貴臣の全てを受け止めてくれるこの温もりが、貴臣の心をノックしていた。腕に添えられた小さな手が、鍵を開けてと言っているようで。冷たく閉ざされていた貴臣の心は、鍵と南京錠をそれぞれ手に持ち渡すべきか迷っていた。全てを曝しても、変わらずに受け止めてくれるだろうか。
「どうしたんですか?」
心配するように、小さくなだめる様な声だった。
「__お前は私のモノだろう?」
「それは業務命令でしょうか?」
心臓がえぐれるようだった。沙也加はクビになるのが怖くて私といるのだろうか。上司の命令だから、媚びを売る為にここにいるのだろうか。
私の事など見ていないのだろうか。・・・私を見てくれないのか?
無言で沙也加の顔をこちらに向けると、眉を寄せて苦悶の表情をしていた。その表情の意味はなんだ。お前の心は、その瞳は何を見ている?私をどう思っている・・・?
「____業務命令だ」
沙也加の真意はわからない。それでもここに、確かに存在する体温。多くを求めすぎているのか、叶わぬ想いなのか。私がこの女を苦しめている。そんな事は重々承知の上で、それでもお前の気持ちを強く求めている。愚かな欲望は抑えきれず、子供のように一心に沙也加に注がれていた。
唇から伝わる熱が全身に回り、安心を貴臣にもたらしている。息苦しさも何もかもが心地いい。
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