新人神様のまったり天界生活

源 玄輝

文字の大きさ
49 / 150

料理酒

しおりを挟む
「さて、さてさてさて!」

「随分と楽しそうですね」

キッチンに食材や調理器具を並べて料理の準備をする。

「そりゃな。そんなわけで酒を二本出してくれ」

「二本?一本では足りないのですか?」

「いや、一本は揮発具合を確かめるために放置してみようかと思ってる」

「そういう事ですか。ではそちらの方は私が担当してもいいですか?色々と対策をしておきたいので」

対策?

あーそういえばこの酒は揮発すると周囲の植物とかに悪影響あるんだっけ。

大丈夫だと思うんだが・・・いや、何かあってた後では遅いから任せよう。

「あぁ、頼むよ。俺はその間に料理しちゃうわ」

「了解です。あ、出来れば酒を使った場合と使わなかった場合の違いを知りたいです」

「あいよー」

やはり酒を使うなら肉料理かな。

正しくは肉の味がする実を使った料理ではあるが。

あとは親和性の問題か。

この酒の酒気を大量に浴びると植物が枯れるというから、果たしてどうなることやら。

ひとまず輪切りにした牛肉の実を酒に漬けてしばらく放置。

その間に楕円型の白身魚の実を切る。

この実は結構皮が分厚くて硬いのだが、アストの業物包丁ならズバッと切れるのがありがたい。

四枚に切り分けて焼いて、二枚は酒で、もう二枚は水で蒸し焼き。

漬けておいた牛肉の実を取り出して、何もしていない方の実と一緒に焼く。

うん、酒の悪影響はないようだ。よかった。

味付けはシンプルに塩、胡椒、ニンニク。

「いい匂いですね」

作業を終えたサチが戻ってきた。

「もう少し待ってな」

「はーい、ご飯を用意しておきます」

「頼むー」

空間収納があると温かいものも入れた状態で保管できるのでご飯を大量に一気に炊いて収納しておいて貰っている。

最近サチの収納内容が食材だらけになってないか心配になって聞いてみたところ。

「全く問題ありません」

と断言された。

むしろもっと色々美味しいものを入れさせろと言わんばかりの表情で言われたので気にしない事にした。

ちなみにまだご飯の良さはよく分かってないようだ。

加工調味料がないとやはり物足りない感はあるからな。

あー今度ふりかけでも作ってみるかな。乾燥させるとどうなるかも気になるし。

念で出来るかな?後で聞いてみよう。

お、いい感じに焼けたな。付け合せも添えて出来上がり。

さて、酒の有無の違いは出たかな?



「いただきます」

「いただきます」

二人で手を合わせて夕食。

すっかりこの作法もサチに馴染んだようで、最近じゃ食べる時は必ず言ってる。

さて、では早速ステーキから行ってみよう。

・・・うん、柔らかい。食べ比べても良く分かる違いだ。

だが。

「ソウ、違いが柔らかいぐらいで味の違いが良く分かりません」

「うん、俺も今そう思ってたところだ」

やはり肉や酒の性質が違うからなのか?

いや、俺の調理方法が甘かっただけだろう。実際柔らかくはなったわけだし。

酒の効果って柔らかくする以外なんかあったっけ。

確か味に深みが出たりするはずだったが、うーん、そこまで凄く料理してたわけじゃないから知識不足だな。情けない。

最初だし、こんなもんかな、もっと色々やって研究していこう。

「んっ!」

「ん?どうした?」

サチが魚を食べて反応を示す。

「ソウ、こっちは美味しくなってます」

お、本当か?どれどれ。

「おー、確かに」

水で蒸した方よりも酒で蒸した方が口に入れた瞬間の良さが違う。

あー醤油が欲しい!

そう思ってしまう。

一応他の世界の神から製法は情報としてもらってはいるが、作れるようになるのはもっと先になりそうだ。

他にもケチャップ、ソース、マヨネーズ、味噌、みりんなど欲しい調味料は一杯ある。

俺の技術不足もあるしな、どこまで出来るかわからないが少しずつやっていこう。うん。



「ごちそうさまでした」

「ほい、お粗末さまー」

手を合わせて夕食は終わり。

「ソウ、今日のデザートは何にしますか?」

サチがうきうきとしながら今日のデザートを聞いて来る。

このところ毎日夕食後はデザート時間になっている。

「そうだなぁ、ミルクアイスにでもしよう」

「わかりました、出します」

出して準備してもらっている間に食器を片付けて、ついでに酒瓶を取って来る。

「飲むのですか?」

「いや、ちょっとねー」

既に食べ始めてるサチを見ながら酒瓶の栓をあける。

アイスが乗った器に少しだけ垂らして軽く混ぜてから揮発を待つ。

そして一口。

うん、美味い。

砂糖のストレートな甘さと牛乳の実の風味が酒によって少しまろやかになり、その後少し来る酒の苦味。

今日は肉料理が若干失敗気味だったので、こういうのを楽しみたくなる気分に丁度いい。

ゆっくり楽しみながら食べていたら先に食べ終えたサチがこっちの様子を凝視している。

「・・・あー」

・・・しょうがねぇな。

スプーンですくってあけたサチの口の中に入れてやる。

「んふー」

頬に手を当てて嬉しそうだ。

「ソウは私に甘いですね」

「そうかな」

他がどうだかわからないから比較のしようがないんだが、そうなのかな。

「ルシエナの時も私が怒ったからあのような行動に出てくれたのですよね?」

「んー・・・まぁね」

サチのためではないが、サチが怒ったことであの場は神としての威厳を示す場という事に気付くことが出来たのは確かだ。

まだまだ俺は神としての自覚が足りないからついつい事なかれ的な方向に思考が行ってしまいがちだ。

だが、今回のように優しい顔だけではいけないという事、そしてそうした方が場がまとまる事もあるというのを学んだ。

「そんなわけでソウは人質を好きにする権利があります」

立ち上がってこっちに来たと思ったら俺の膝の上に座って勝手に俺のアイスの残りを食べ始めた。

好きにする権利ねぇ、既に好きにされてる気がするんだが。

一瞬何を言ってるのかと思うが、これはサチなりの甘え方だと思ってる。

人質か、なるほど、今日はそういうシチュエーションがお望みか。

今日は妙に悪者役をやることになったな。たまにはいいか、そういう日があっても。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...