迅雷少女の配達屋さん~愛され少女の異世界ライフ~

ひょーう.CNP

文字の大きさ
2 / 44
1章 異世界に来た

1話 雷に打たれ森の中

しおりを挟む
 程よい冷たさの心地いい風が身体を撫で、私の意識が徐々に覚醒する。
 ゆっくり目を開いていくと、目の前には青空が広がっているのが見えた。
 雲一つない綺麗な空で、木々のざわめきも聞こえてくる。

「んっ……?あれ……?」

 私は、身体を起こして周りを見渡すと、見知らぬ森の中のちょっとした広場で倒れていたことに気付いた。

「えっ?ここ何処!?」

 どうしてこんな所にいるのか?少しパニックになってしまい、色んな思考が頭の中を駆け巡るが、ふと自分の姿を見ると……

「合羽……?」

 薄黄色の上下分かれた雨合羽を着ていることに気付く、そのよく見慣れた雨合羽をきっかけに、目覚める前に何があったのか思い出した。

「そうだ……私、雷に打たれたんだった」

 お弁当の配達中に雨風が酷くなってバイクから一旦降りた瞬間、稲光いなびかりと共に目の前が急に真っ白になり、身体に尋常じゃない衝撃と爆発するんじゃないかと思わせるほどの熱量に襲われた。
 その後、気付いたらここに居た……

「思い出した……でも、雷に打たれたはずなのに、私の身体も合羽も服も……全部無事なのはなんでだろう?それに、なんで森の中……?」

 ここに来る前の事を思い出して少し冷静になれた私は、これからどうするか考える。

「そうだ、スマホ!警察に電話とマップを!」

 雨の日の配達の際、首からぶら下げるタイプの防水袋にスマホを入れているので、そこから取り出したのだけど……

「あれ、画面が付かない……」

 スマホの電源ボタンを押すのだが反応がない、電源長押ししてみると充電切れの画面が映る。

「じゅ、充電がない!どうしよう……これじゃ何処にも連絡出来ない」

 確か仕事前の充電は90%だった筈……休憩中にスマホ触っては居たけどそんな充電は減ってなかったはず……なんで充電が切れてるんだろう?

 今手元にあるのは、充電切れのスマホと合羽だけと思っていたが、近くにバイクに乗る際に被っていた安物ヘルメットとウエストポーチが転がっていた。
 どうやら、身に付けていた物は全て無事だったらしい。

「ヘルメットにウエストポーチだ、もしかしたら近くにバイクもあるかもしれない……探してみよう、森からも出られるかも」

 そう思い歩き出したのだが、合羽を着ていると動きにくいと感じ、脱いでウエストポーチに入れる。
 森の中を歩くので、安全の為に一応ヘルメットを被ることにした。
 前向きに行こう、雷に打たれて死ぬ運命ではなく、奇跡的に助かったのだから。


 森の中を歩き始めて10分、バイクは見つからない。

「それにしても、何だか空気が美味しい……かも」

 私は、田んぼの多いような田舎に住んでいたのだけど、その田舎者ですら美味しいと思ってしまう程の空気だった。

「こんなに空気が美味しい場所があったなんて、遠い場所じゃなければまた来たいかも」

 そんな事を考えつつ歩いていると……
 ガサガサ

「!?」

 何かが隠れているのか、茂みが揺れた気がした。

「えっ、何!?」

 こんな森の中に居るとすれば、熊か……?イノシシか……?そう考えると、近付くべきじゃないと判断して後ずさりしながら離れようとする。
 ガサッ!と何かが飛び出してきた。

「……えっ!?」

 私は驚いた、目の前に現れたのは熊やイノシシではなく、ゲームやアニメに出てくるかのようなスライムだった。

「す、スライム!?スライムよねあれ!?え、本物!?」

 スライムはふにふにと身体を揺らしながら近付いてくる。
 私はアニメを見たり、暇な時には異世界小説とか読んでたので知識はある。
 スライムといえば、どのゲームや小説でも大体は最序盤に出てくる最弱モンスター。
 まぁ亜種だとか姿違いは強い場合はあるけど……身体は薄らと青く、小さくて真ん丸なフォルムだと、多分普通の最序盤系スライムだと思う。

「本物のスライムを、この目で見る事が出来るなんて!意外と可愛いかも!」

 と、口に出したはいいものの、よく考えてみると現実にスライムなんて居るはずがない。

「ん……?あ、あれ?もしかしてここ……日本じゃなくて、異世界とかゲームみたいな世界……?」
「ぷるっ!」

 スライムが飛びかかってきた。

「ぶほぁっ!!」

 急な事でスライムの体当たりを避けられず、顔にベチャリと当たった反動で尻餅をついた。
 ヘルメットはフルフェイスではないので、顔面はガラ空きだ。

「いったぁぁっ!」

 柔らかいイメージだったスライムだけど、ぶつかって来た時の顔へのダメージはかなりの物だった。
 怪我こそしていないが、何度も体当たりされると怪我じゃすまないかもしれない。
 更に尻餅ついた際に打った尾骶骨も痛い。

「痛いっ……に、逃げなきゃ……」

 私は身の危険を感じ、痛みに耐えつつも急いで立ち上がり走り出す。
 最序盤に出てくるようなスライムだとしても、丸腰な私が出来る選択肢は逃げる以外ない。
 それに想像以上の痛みだったので、可愛いと感じていたスライムに恐怖を植え付けられてしまった。

「来ないで……来ないでぇ!」

 恐怖感が一気に襲ってきて、私は一心不乱に走った。
 スライムは追い掛けてはこなかったようで、逃げ切れたのだけど……この時、私は気付いていなかった。
 私が走った跡に電気が帯びていて、それにビックリしてスライムは追ってこなかったって事を。

 これで嫌でも理解できた、ここは異世界かゲームの世界なのだと。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?

朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!  「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」 王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。 不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。 もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた? 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

処理中です...