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1章 異世界に来た
9話 冒険者ギルドにて
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セイラさんに案内されて個室に入った私達3人。
ソファーが2つあり真ん中に机が置かれているだけのシンプルな部屋で、窓はないみたいだから外から見られる心配もない。
おもらし厳禁の内密話って少し緊張するね。
「ここなら誰にも会話を聞かれませんので御安心ください、まずは名前を教えて貰えますか?」
「美園香織です、2人からはカオリと呼ばれています」
「カオリさんですね、私はセイラと申します。この冒険者ギルドの受付嬢の長をやっております」
長って事は、受付嬢の中で1番偉い人って事だよね?見た目かなり若そうなのに凄いなぁ。
「レイナさんと同じって事は転生者、でいいんですね?」
「はい」
「分かりました、レイナさん同様内密にしておきます」
レイナとセイラさんは転生と言うものを隠しているみたいだけど、知られるとまずい事があるのかな?
「あの、転生者だってバレるとまずいんですか?」
「そうですね、転生者は特別なスキルや強力なスキルを持ってこちらにやってくると言い伝えられています。なので転生者だとバレてしまうと、その力を手にするべく誘拐や奴隷化などにされてしまう可能性があります、実際過去にありましたから」
「誘拐に、奴隷……」
レイナが言ってたよね、地図の話の時に「悪い奴に見られたら悪用される可能性があるから」と。
レイナが奴隷になる所なんて見たくないし、誘拐だってされてほしくない。
私だってそんな目にあいたくない、だから気を付けないと……ね。
不安そうにする私の肩にレイナは手を置いた。
「カオリ、大丈夫だ。セイラはその辺り徹底してくれるし、私達も気を付けていればそうなりはしないさ」
「……ですね、気を付けます」
異世界転生して無双するような勇者とか最強タイプならこんな事考えなくていいんだろうけど、私の戦闘スキルは雷属性が未開拓だから使えるかどうか分からない、まぁそもそも戦うつもりもないけどね。
だけど、6神ミルムからは雷属性を使いこなすように言われている、だから私は自己防衛や逃げる為の力を磨こうと思ってる。
「セイラ、まずはカオリのギルドカードを作ってくれるか?その後、能力の確認をしたいから訓練室を借りたい」
「分かりました、準備して来るのでこのままお待ちください」
「了解した」
セイラさんは一旦退室して行った。
ふぅ……と息を吐きながら背もたれにもたれていると、ソルに頭を撫でられる。
「カオリ、力を抜きなさい。不安なのも分かるけど……折角来たんだから、私はカオリにこの世界を楽しんで欲しいの」
「そうだな、今こそ転生者として気を付けなきゃいけない事で息が詰まるだろうが……すぐに気にせず暮らせるようにしてやるからな」
「レイナさん、ソルさん……分かりました、ありがとうございます」
レイナを中心にソルも私の為に協力してくれる、セイラさんも転生者に協力的みたいだし、これからもいっぱい頼ることになりそう。
5分程するとセイラさんが戻ってきた、何やら水晶と石板を持っている。
「お待たせしました、訓練室1つ確保しておきましたよ」
「ありがとうセイラ」
「いえいえ!さてカオリさん、この水晶で魔力測定します。これに触れると魔力量と所持属性によって発光具合が変わりますので、触れてもらえますか?」
「あ、はい」
魔力量、これはステータスには載っていなくて私には分からない部分、ここではマナとかの表現ではないみたいだ。
チラッとレイナを見ると、コクリと頷いたので言われた通り水晶に触れる。
するとパァァァッと水晶が強烈に発光しだした、色は黄色だった。
「うっ!?」
私は咄嗟に空いてる腕で光を遮る。
「くっ、強烈だなっ!」
「レイナの時もそうだったわねっ!でも、あの時よりも何倍も何十倍も凄いわよ!」
「カオリさんもう大丈夫ですっ!」
水晶より手を離すと、発光が収まっていく。
「い、今の光は……」
「純粋な黄色に光ったので雷属性だけですね、雷属性は数が少ないので貴重ですが……注目すべきは魔力量、多分ギルド発足史上1番で間違いがない程に凄まじい量です。正直申し上げますと、尋常じゃない魔力量を持つレイナさんの……更に10倍以上かと」
「あぁ、あの発光量は間違いなく私なんかより凄まじかった」
「そうね、凄いわよカオリ!」
「あ、ありがとうございます」
魔力量が歴代1位、多分6神ミルムのお陰だろうけど……それでもこの膨大な魔力で皆の役に立てるのならいいかな。
ピシピシッ……
「えっ?」
パリン!!
「きゃっ!」
「っ、カオリ!」
水晶が弾けるように割れ、破片が飛び散る。
「大丈夫!?怪我はない!?」
「あ、はい大丈夫です!」
幸いにも破片は刺さらず怪我せずに済んだから良かった、レイナやソルも無事みたい。
「水晶が割れるだなんて……ギルドで働き始めてから1度もないですよ!?」
「魔力量が多過ぎて耐えられなかったか、劣化していたか?」
「分かりません……ですが、考えられるのはその2つのどちらかだと思います」
長らく使えばどんな物でも劣化するもの……だよね、こういうのも鑑定で出たりしないのかな?
「……鑑定してみていいですか?」
「え?これをですか?」
「はい、鑑定でなんと出るか確かめてみたいんです」
「……魔力水晶としか出ないですよ?私鑑定持っているので分かりますから」
セイラさんって鑑定持ちだったんだ、なら鑑定しても意味ないかも……?
「いや……カオリ、やってみよう」
「え?」
「多分カオリの鑑定は特別だ、1回やってみてくれるか?」
「わ、分かりました。鑑定眼」
割れた水晶を鑑定眼を通して見てみると……
『割れた魔力水晶』
過負荷により割れてしまった魔力水晶
魔力量と属性を割り出せる
と書かれていた。
「割れた魔力水晶という名になっていて、過負荷により割れてしまったと出てきました」
「……やっぱりな」
「嘘……私の鑑定じゃ今でも魔力水晶のままです!これは一体……?まさか転生者だから特別……?」
セイラさんが信じられないと顔をしていた、どうやら普通の鑑定よりも高性能みたい。
「これで明らかだな、水晶はカオリの強大な魔力に耐えきれなかったんだ」
「あ、じゃこれ……水晶が割れたのは私のせい……?」
きっとこの水晶って高い物のはず……不可抗力とはいえ割ってしまったと落ち込む。
「カオリ、気にしないでいいわよ。それだけカオリの魔力が凄いって事なんだから」
「う、うん……でも、ごめんなさい……働いて弁償しますから」
私はセイラさんにペコリと頭を下げる。
「いえ、大丈夫ですよカオリさん。こういうのはギルドの経費で買えますから、気にしないでくださいね」
「うにゅ……」
きっとソルのような耳が付いていたら、ペタンと倒れていたと思う。
セイラさんは割れた魔力水晶を片付けてから石板を机の上に置いた。
「さぁ次に行きましょう、この石板に手を置くと私達にもカオリさんのステータスが見えるようになります。これにより魔物への対処が可能かどうかを判断し、対処可能なら冒険者のFランクスタートで、対処不可なら討伐依頼の無いGランクスタートになります」
「分かりました、ちなみにまた光りだしたりしませんか?」
「これはステータスが浮かび上がるだけなので大丈夫です」
「分かりました、では……」
そっと石板に手を触れると、私のステータスが石板の上に浮かび上がってきた。
「鑑定眼、観察眼、力持ち、魔力感知……うそ、こんなにサポートスキルが沢山!……ん?マッピング?」
「あ、それは……」
これは人に見せないように言われていたスキル……咄嗟にレイナを見ると、代わりに答えてくれた。
「セイラ、このスキルも確実に伏せた方がいいスキルだ。カオリ、構わないから見せてやってくれ」
「分かりました、マッピング」
私はマッピングスキルを起動し、世界地図を展開。
「こ、これは?」
「この世界の全体が分かるようになるであろう地図だ」
「こ、これが地図ですか!?」
驚き過ぎて眼鏡が少しズレてしまったが、すぐさま元の位置へと戻す。
「し、しかし……ほとんど真っ白ですが……」
「これはカオリが行った事がある場所が記録されるらしいんだ。ほら、トリスター王国とすぐ側の森が描かれているだろう?」
レイナが地図をタップするとその付近が拡大されて表示されたのだが、拡大倍率を上げるとトリスター王国にある建物までも認識出来た。
今私達が居る冒険者ギルドも地図に載っているんだけど、なんと建物の名前まで描かれてた!どうやら立ち寄った事がある施設の名前も記録されるらしい!
「ほ、本当ですね!凄いですよこれは!!こんなスキルがあっただなんて!」
初めて見たスキルに興奮しているセイラさんだけど、それよりも私とレイナは新しい発見があって驚いていた。
「レイナさん、これって……」
「あぁ、新発見だな……まさか街中の細かい所まで見れるとは、しかも建物の名前まで……」
「これがあれば、一度来た事がある場所なら迷う事が無くなりますし、初めての街でも道が分かるのは大きいですね」
「そうだな、だが……これを人前で出せるのならの話だが」
「ですね」
地図を見るには人目の無い場所を探してからじゃないといけない……身の安全の為とはいえ、スキル自体は凄く有能なんだよね、どうにかならないかな?
そう考えている内に、セイラさんが我に戻ったようで……
「失礼、少々興奮してしまいました……」
コホンと咳払いをしてからこちらをみる。
「雷属性を持ちつつも戦闘系スキルがないようですね、転生者はみんな神より優秀な魔法やスキルを授かるはずですが……何故補助スキルばかりなのですか?」
「……レイナさん、経緯を話しても?」
「大丈夫だ、ミルムの件も私の転生の時に話を伝えて存在は知っているからな、全て話そう」
「分かりました」
私は転生した経緯と、これまでにあった出来事を全てセイラさんに話した。
雷に打たれて転生、魔物に追われ、2人に出会い、そして6神ミルムから力を授かった事を。
「……神様を介せずに転生するイレギュラーがあり、そしてミルム様から力を急遽授かった、と」
「……はい」
セイラさんも、初めてレイナ達に転生の経緯を話した時と似たような反応を示した。
「カオリさんが転生して来たと聞いて、もしや転生者が1人亡くなったのではと密かに思っていたのですが……イレギュラーな転生だったからであって、亡くなった訳じゃなかったんですね」
どうやら、担当は1人ずつだから6神で6名しか転生して来れない事を知っているらしい。
セイラさん曰く、転生者が亡くなる度に新たに転生者がやってくるという言い伝えがあるんだそうな。
「しかし、ミルム様が禁忌を犯して神落ちとは……6神はどうなるのでしょうか?」
「ミルム曰く、代わりの神が担当になるとは言っていたが……」
「もしかしたら、神の代替わりとして新たな神からの神託を受ける可能性はありそうですね」
セイラさんとレイナが話し合っている中、私はソルに神について聞いた。
「あの、ソルさん……この世界の6神とは、どういったものなのですか?」
「6神は、この世界と人を創造したとされる神様よ。レイナを転生させたミルム様が6神の中でも1番力のある神様なんだから!」
ミルム様が6神の中では長なんだね、この世界で1番の神様と出会った事になるのかな、私。
「そうなんですね、ミルム様以外の名前も教えて貰えますか?」
「後の5神は、カルム様、イルム様、トルム様、セルム様、二ルム様よ!」
「な、なるほど……」
……え、姉妹なの?〇ルムばっかりなんだけど。
流石にあかさたなの順番になってるのに気付かない私じゃないよ?
なら、次はハ行+ルムになるの?
超ツッコミたくなる、うん。
「まぁ、この6神の上に最高神様が居ると言われているけど、この世に干渉してきたという言い伝えは極わずかにしかないらしいわね」
「最高神……」
最高神って事は、多分神の決まりを作った人だと思う。
もしそうなら……ミルム様の処遇はきっと最高神様がお決めになるはず。
「……」
私はいつの間にか、祈るように両手を合わせていた。
どうか、ミルム様を助けてください!私なんかの為に、ミルム様が神様で無くなるだなんて……ずっと気にしてしまいそうです。
私は祈る、ミルム様の無事を。
「カオリ?どうしたの?急に祈りなんて捧げて」
「あ、いえ……最高神様なら、ミルム様を助けてくれるかなって」
「……そうね、そうだと良いわね」
「はい!」
この祈り、実はきちんと最高神まで届いていたようで……
これのおかげで、カオリへのサポートシステムが構成されていただなんて、この時のカオリには知る由もない。
ソファーが2つあり真ん中に机が置かれているだけのシンプルな部屋で、窓はないみたいだから外から見られる心配もない。
おもらし厳禁の内密話って少し緊張するね。
「ここなら誰にも会話を聞かれませんので御安心ください、まずは名前を教えて貰えますか?」
「美園香織です、2人からはカオリと呼ばれています」
「カオリさんですね、私はセイラと申します。この冒険者ギルドの受付嬢の長をやっております」
長って事は、受付嬢の中で1番偉い人って事だよね?見た目かなり若そうなのに凄いなぁ。
「レイナさんと同じって事は転生者、でいいんですね?」
「はい」
「分かりました、レイナさん同様内密にしておきます」
レイナとセイラさんは転生と言うものを隠しているみたいだけど、知られるとまずい事があるのかな?
「あの、転生者だってバレるとまずいんですか?」
「そうですね、転生者は特別なスキルや強力なスキルを持ってこちらにやってくると言い伝えられています。なので転生者だとバレてしまうと、その力を手にするべく誘拐や奴隷化などにされてしまう可能性があります、実際過去にありましたから」
「誘拐に、奴隷……」
レイナが言ってたよね、地図の話の時に「悪い奴に見られたら悪用される可能性があるから」と。
レイナが奴隷になる所なんて見たくないし、誘拐だってされてほしくない。
私だってそんな目にあいたくない、だから気を付けないと……ね。
不安そうにする私の肩にレイナは手を置いた。
「カオリ、大丈夫だ。セイラはその辺り徹底してくれるし、私達も気を付けていればそうなりはしないさ」
「……ですね、気を付けます」
異世界転生して無双するような勇者とか最強タイプならこんな事考えなくていいんだろうけど、私の戦闘スキルは雷属性が未開拓だから使えるかどうか分からない、まぁそもそも戦うつもりもないけどね。
だけど、6神ミルムからは雷属性を使いこなすように言われている、だから私は自己防衛や逃げる為の力を磨こうと思ってる。
「セイラ、まずはカオリのギルドカードを作ってくれるか?その後、能力の確認をしたいから訓練室を借りたい」
「分かりました、準備して来るのでこのままお待ちください」
「了解した」
セイラさんは一旦退室して行った。
ふぅ……と息を吐きながら背もたれにもたれていると、ソルに頭を撫でられる。
「カオリ、力を抜きなさい。不安なのも分かるけど……折角来たんだから、私はカオリにこの世界を楽しんで欲しいの」
「そうだな、今こそ転生者として気を付けなきゃいけない事で息が詰まるだろうが……すぐに気にせず暮らせるようにしてやるからな」
「レイナさん、ソルさん……分かりました、ありがとうございます」
レイナを中心にソルも私の為に協力してくれる、セイラさんも転生者に協力的みたいだし、これからもいっぱい頼ることになりそう。
5分程するとセイラさんが戻ってきた、何やら水晶と石板を持っている。
「お待たせしました、訓練室1つ確保しておきましたよ」
「ありがとうセイラ」
「いえいえ!さてカオリさん、この水晶で魔力測定します。これに触れると魔力量と所持属性によって発光具合が変わりますので、触れてもらえますか?」
「あ、はい」
魔力量、これはステータスには載っていなくて私には分からない部分、ここではマナとかの表現ではないみたいだ。
チラッとレイナを見ると、コクリと頷いたので言われた通り水晶に触れる。
するとパァァァッと水晶が強烈に発光しだした、色は黄色だった。
「うっ!?」
私は咄嗟に空いてる腕で光を遮る。
「くっ、強烈だなっ!」
「レイナの時もそうだったわねっ!でも、あの時よりも何倍も何十倍も凄いわよ!」
「カオリさんもう大丈夫ですっ!」
水晶より手を離すと、発光が収まっていく。
「い、今の光は……」
「純粋な黄色に光ったので雷属性だけですね、雷属性は数が少ないので貴重ですが……注目すべきは魔力量、多分ギルド発足史上1番で間違いがない程に凄まじい量です。正直申し上げますと、尋常じゃない魔力量を持つレイナさんの……更に10倍以上かと」
「あぁ、あの発光量は間違いなく私なんかより凄まじかった」
「そうね、凄いわよカオリ!」
「あ、ありがとうございます」
魔力量が歴代1位、多分6神ミルムのお陰だろうけど……それでもこの膨大な魔力で皆の役に立てるのならいいかな。
ピシピシッ……
「えっ?」
パリン!!
「きゃっ!」
「っ、カオリ!」
水晶が弾けるように割れ、破片が飛び散る。
「大丈夫!?怪我はない!?」
「あ、はい大丈夫です!」
幸いにも破片は刺さらず怪我せずに済んだから良かった、レイナやソルも無事みたい。
「水晶が割れるだなんて……ギルドで働き始めてから1度もないですよ!?」
「魔力量が多過ぎて耐えられなかったか、劣化していたか?」
「分かりません……ですが、考えられるのはその2つのどちらかだと思います」
長らく使えばどんな物でも劣化するもの……だよね、こういうのも鑑定で出たりしないのかな?
「……鑑定してみていいですか?」
「え?これをですか?」
「はい、鑑定でなんと出るか確かめてみたいんです」
「……魔力水晶としか出ないですよ?私鑑定持っているので分かりますから」
セイラさんって鑑定持ちだったんだ、なら鑑定しても意味ないかも……?
「いや……カオリ、やってみよう」
「え?」
「多分カオリの鑑定は特別だ、1回やってみてくれるか?」
「わ、分かりました。鑑定眼」
割れた水晶を鑑定眼を通して見てみると……
『割れた魔力水晶』
過負荷により割れてしまった魔力水晶
魔力量と属性を割り出せる
と書かれていた。
「割れた魔力水晶という名になっていて、過負荷により割れてしまったと出てきました」
「……やっぱりな」
「嘘……私の鑑定じゃ今でも魔力水晶のままです!これは一体……?まさか転生者だから特別……?」
セイラさんが信じられないと顔をしていた、どうやら普通の鑑定よりも高性能みたい。
「これで明らかだな、水晶はカオリの強大な魔力に耐えきれなかったんだ」
「あ、じゃこれ……水晶が割れたのは私のせい……?」
きっとこの水晶って高い物のはず……不可抗力とはいえ割ってしまったと落ち込む。
「カオリ、気にしないでいいわよ。それだけカオリの魔力が凄いって事なんだから」
「う、うん……でも、ごめんなさい……働いて弁償しますから」
私はセイラさんにペコリと頭を下げる。
「いえ、大丈夫ですよカオリさん。こういうのはギルドの経費で買えますから、気にしないでくださいね」
「うにゅ……」
きっとソルのような耳が付いていたら、ペタンと倒れていたと思う。
セイラさんは割れた魔力水晶を片付けてから石板を机の上に置いた。
「さぁ次に行きましょう、この石板に手を置くと私達にもカオリさんのステータスが見えるようになります。これにより魔物への対処が可能かどうかを判断し、対処可能なら冒険者のFランクスタートで、対処不可なら討伐依頼の無いGランクスタートになります」
「分かりました、ちなみにまた光りだしたりしませんか?」
「これはステータスが浮かび上がるだけなので大丈夫です」
「分かりました、では……」
そっと石板に手を触れると、私のステータスが石板の上に浮かび上がってきた。
「鑑定眼、観察眼、力持ち、魔力感知……うそ、こんなにサポートスキルが沢山!……ん?マッピング?」
「あ、それは……」
これは人に見せないように言われていたスキル……咄嗟にレイナを見ると、代わりに答えてくれた。
「セイラ、このスキルも確実に伏せた方がいいスキルだ。カオリ、構わないから見せてやってくれ」
「分かりました、マッピング」
私はマッピングスキルを起動し、世界地図を展開。
「こ、これは?」
「この世界の全体が分かるようになるであろう地図だ」
「こ、これが地図ですか!?」
驚き過ぎて眼鏡が少しズレてしまったが、すぐさま元の位置へと戻す。
「し、しかし……ほとんど真っ白ですが……」
「これはカオリが行った事がある場所が記録されるらしいんだ。ほら、トリスター王国とすぐ側の森が描かれているだろう?」
レイナが地図をタップするとその付近が拡大されて表示されたのだが、拡大倍率を上げるとトリスター王国にある建物までも認識出来た。
今私達が居る冒険者ギルドも地図に載っているんだけど、なんと建物の名前まで描かれてた!どうやら立ち寄った事がある施設の名前も記録されるらしい!
「ほ、本当ですね!凄いですよこれは!!こんなスキルがあっただなんて!」
初めて見たスキルに興奮しているセイラさんだけど、それよりも私とレイナは新しい発見があって驚いていた。
「レイナさん、これって……」
「あぁ、新発見だな……まさか街中の細かい所まで見れるとは、しかも建物の名前まで……」
「これがあれば、一度来た事がある場所なら迷う事が無くなりますし、初めての街でも道が分かるのは大きいですね」
「そうだな、だが……これを人前で出せるのならの話だが」
「ですね」
地図を見るには人目の無い場所を探してからじゃないといけない……身の安全の為とはいえ、スキル自体は凄く有能なんだよね、どうにかならないかな?
そう考えている内に、セイラさんが我に戻ったようで……
「失礼、少々興奮してしまいました……」
コホンと咳払いをしてからこちらをみる。
「雷属性を持ちつつも戦闘系スキルがないようですね、転生者はみんな神より優秀な魔法やスキルを授かるはずですが……何故補助スキルばかりなのですか?」
「……レイナさん、経緯を話しても?」
「大丈夫だ、ミルムの件も私の転生の時に話を伝えて存在は知っているからな、全て話そう」
「分かりました」
私は転生した経緯と、これまでにあった出来事を全てセイラさんに話した。
雷に打たれて転生、魔物に追われ、2人に出会い、そして6神ミルムから力を授かった事を。
「……神様を介せずに転生するイレギュラーがあり、そしてミルム様から力を急遽授かった、と」
「……はい」
セイラさんも、初めてレイナ達に転生の経緯を話した時と似たような反応を示した。
「カオリさんが転生して来たと聞いて、もしや転生者が1人亡くなったのではと密かに思っていたのですが……イレギュラーな転生だったからであって、亡くなった訳じゃなかったんですね」
どうやら、担当は1人ずつだから6神で6名しか転生して来れない事を知っているらしい。
セイラさん曰く、転生者が亡くなる度に新たに転生者がやってくるという言い伝えがあるんだそうな。
「しかし、ミルム様が禁忌を犯して神落ちとは……6神はどうなるのでしょうか?」
「ミルム曰く、代わりの神が担当になるとは言っていたが……」
「もしかしたら、神の代替わりとして新たな神からの神託を受ける可能性はありそうですね」
セイラさんとレイナが話し合っている中、私はソルに神について聞いた。
「あの、ソルさん……この世界の6神とは、どういったものなのですか?」
「6神は、この世界と人を創造したとされる神様よ。レイナを転生させたミルム様が6神の中でも1番力のある神様なんだから!」
ミルム様が6神の中では長なんだね、この世界で1番の神様と出会った事になるのかな、私。
「そうなんですね、ミルム様以外の名前も教えて貰えますか?」
「後の5神は、カルム様、イルム様、トルム様、セルム様、二ルム様よ!」
「な、なるほど……」
……え、姉妹なの?〇ルムばっかりなんだけど。
流石にあかさたなの順番になってるのに気付かない私じゃないよ?
なら、次はハ行+ルムになるの?
超ツッコミたくなる、うん。
「まぁ、この6神の上に最高神様が居ると言われているけど、この世に干渉してきたという言い伝えは極わずかにしかないらしいわね」
「最高神……」
最高神って事は、多分神の決まりを作った人だと思う。
もしそうなら……ミルム様の処遇はきっと最高神様がお決めになるはず。
「……」
私はいつの間にか、祈るように両手を合わせていた。
どうか、ミルム様を助けてください!私なんかの為に、ミルム様が神様で無くなるだなんて……ずっと気にしてしまいそうです。
私は祈る、ミルム様の無事を。
「カオリ?どうしたの?急に祈りなんて捧げて」
「あ、いえ……最高神様なら、ミルム様を助けてくれるかなって」
「……そうね、そうだと良いわね」
「はい!」
この祈り、実はきちんと最高神まで届いていたようで……
これのおかげで、カオリへのサポートシステムが構成されていただなんて、この時のカオリには知る由もない。
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