もふもふ好きトリマーの異世界旅~奴隷との絆で変身だ!~

ひょーう.CNP

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46話 スタッチの大群

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 悲鳴が聞こえ、何事かと3階層の階段を駆け上がった俺達。
 3階層に到達すると、1人の男冒険者が深刻な顔をしてこちらに走ってきた。

「すすすすまん!助けてくれ!」
「何があったんですか!?」
「モモモンスターハウスに遭遇してしまった!奴が……奴が来る!!!」
「奴?どんなモンスターですか!?」
「ご、ご主人様……あ、あれ……」

 カエデの顔が真っ青になって指を前に突き出していた。
 その方向を見てみると……

「うっ……!?」

 思わず吐き気がした……身長の半分くらいの、めちゃくちゃデカい黒茶色のGらしき物体が多数こちらに向かってきていた。

「も、モンスターハウスにそれはやばいだろ!逃げるぞ!!」

 俺達と助けを求めてきた男冒険者は2階層の階段へ走りだす、俺は緊急事態の為にやむなくドラゴン族に変身し、後方へブレスを吐く。
 メイランもそれに気付き、同じようにブレスを吐いて追手を足止めする。
 Gも流石に炎には弱かったのか、足止めには成功し2階層へ降りた、暫く様子を見たが追っては来ないようだ。

「取り敢えず助かったか……」
「君達のお陰で助かった……ありがとう……」
「いえ、助かってよかったです。あの……ここへはソロで……?もしかして他にも……?」
「……あぁ、3人PTだったんだが……2人はいきなり頭上から現れたスタッチに、逃げる暇なく呑み込まれてしまった……俺を助ける為にサリーナが魔法で俺を吹き飛ばして……くそっ……!」

 男冒険者は悔し涙を流す、聞けば2人は姉妹で姉とこの男は夫婦なんだそうだ。
 夫婦……か。

「ご主人、スタッチは1体1体は弱くて攻撃力もかなり低いっす、だからこそ集団狩りしてくるんすけど、何かしらで守りを固めていたら……生きてる可能性はあるかもしれないっす」
「なるほど……このまま生きてる可能性を否定して、逃げる事はしたくないな……行こうか。カエデ、ソルト、この人の護衛頼む。俺とメイランとシェミィでスタッチを叩く」

「「「了解!」」っす」

 俺とメイランはブレス、シェミィは風の刃の遠距離攻撃がある。
 接近戦の2人はアイツらの相手するには相性……いや、生理的に多分難しいだろう。

「君達……またしてもすまない……可能性があるというならそれに賭けたいと思う!妻のカリナと義妹のサリーナを頼む……!」
「分かりました。2人の護衛から離れず、待っててください」

 俺とメイランとシェミィは再度3階層へ足を踏み入れた。
 先程焼いたスタッチがゴロゴロしており、生きているスタッチが見当たらない、出現場所へ戻ったかその辺を徘徊してるのかもしれない。

「メイラン、シェミィ、奴を見付けたら即討伐だ、いいな?」
「了解」「にゃ」

 スタッチの死骸を避け、奥へと進んでいると、やはりゾロゾロと徘徊している大量のスタッチを発見、速攻ブレスで焼き払う事にした。
 焼き払いつつ周りを見ると、スタッチに食い殺されている魔物もいた、サンドワームにドラゴンナイト……これはポイズンスライムだ……流石に集団で攻められたら、守りを知らない魔物は食い殺されるか。

「気持ち悪いな、これは」
「早く行きましょう、気が狂いそうだわ」
「だな……」

 俺は索敵をしつつスタッチの多い道を進んでいく、モンスターハウスから湧いたのだからスタッチの多い方面に目的地があるはずだ。
 スタッチを焼き払いつつ、途中に現れるスタッチが唯一見向きもしないゴーレムを薙ぎ払いながら進むと、とてつもない数の索敵反応があった。

「あった、あの曲がった先にモンスターハウスがある」
「コウガ様、人の反応は……」
「数が多すぎて反応が重なり合って分かりにくい……あっ!……まだ生きてるぞ!」
「それが分かれば上等ね!部屋のどの辺?」
「奥の方だ、手前なら焼き払って構わない!」
「了解!」

 俺達はモンスターハウスへ足を踏み入れた。
 スタッチがこちらに気付き、一斉に襲いかかってくる。
 俺とメイランはブレスを吐くが、奥まで火の手がいかないようになるべく手前のスタッチを処理していく。
 シェミィはGを恐れないのかスタッチを引っ掻き回し、風を纏い突進し、2人居る場所までの道を空けてくれる。

「2人は俺が助けにいく、メイランはブレスで援護頼む!」
「了解!」

 シェミィの突進により周りのスタッチは吹き飛ばされ、2人の冒険者の姿を発見。
 2人は耳を塞いで伏せた状態で、周りを何かの魔法が包んでいたが、シェミィが周りのスタッチを吹き飛ばした事に気付き、2人は顔を上げる。

「ひっ!す、ストームキャット!?」
「お2人共、大丈夫ですか!?」
「あ、貴方は!?まさか助けに!?」
「旦那さんから助けて下さいって頼まれて来たんです」
「カリオン……ちゃんと逃げられたのね、よかった……」

 どうやら、メガネを掛けたビショップ姿の女性が、奥さんのカリナさんだな。
 という事は、魔法使いの姿をした女性が、妹さんのサリーナさんか。

「さぁ逃げますよ!シェミィ!2人を乗せてやってくれ!」

 シェミィは再度周りのスタッチを吹き飛ばし、伏せをして2人を乗せた。
 その隙に俺とメイランは近付くスタッチを燃やしていく。

「このストームキャット、テイムされてる……凄い」
「乗りましたね?落ちないようにしっかり捕まっててください!シェミィ!GO!」

 シェミィは前方に風の刃を放ち、2人を守りながら駆ける。
 俺とメイランは翼で飛び上がって、シェミィを追い掛けながらブレスを撒き散らし退散、スタッチから逃げ切る事に成功した。

 階段を降りて2階層へ向かうと、階段途中にカエデとソルト、男冒険者が居た。

「カリナ!サリーナ!」
「アナタ!」
「カリオン!」

 3人は抱き合って涙を流す、全員無事でよかったな……
 あの防御魔法が切れていたら……と考えると寒気がする。

「君達!本当にありがとうございます!名前とチーム名を教えては貰えないだろうか?」
「俺はコウガ、助けに向かったこの2人はストームキャットのシェミィと、ドラゴン族のメイラン、護衛の2人はこちらがカエデ、あちらがソルトです。チーム名はありません」

 そう言えば、武闘会に出るならチーム名も必要な気がする、考えなきゃまずいかもな……後でみんなで考えようか。

「皆さん、助けていただいてありがとうございます!助けて頂いたお礼をしたいのですが……これからどちらに向かわれるのですか?私達はノイシュに用があって……」

 カリナさんが申し訳なさそうにこちらの行先を聞いてきた。

「い、いえお礼なんて……俺達も丁度ノイシュに向かっていたんです、良ければ一緒に行きますか?」
「有難い、そうして貰えると助かる……さっきの事でボロボロになってしまったからな……」

 カリオンさんはタンクのようなので重装備にしており、それ程ボロボロではないが、カリナさんとサリーナさんは服が少し破れ、怪我もしているようだった。

「あ、出発前に2人を治しておきましょう。ヒール」

 ヒールでカリナさんとサリーナさんの傷を癒す、深い傷ではなかったのが幸いしてすぐ治ったようだ。

「これでよしっと、痛くないですか?」
「はい、大丈夫です!ありがとうございます!お礼はノイシュに着いてから致します!」
「ありがとうございます、お兄さん!」

 2人でペコっと頭を下げてお礼を言ってくれた、ほんと無事で良かった。
 お礼なんていいんだけどな……そこまでお礼というなら有難く貰っておこうか、これ以上断るのも悪い気がするしな。

「分かりました、じゃお礼はノイシュに着いてからですね」
「あぁ、それで頼む」
「分かりました。さて、行きましょうか!カリオンさん、俺達のチームはタンクが居ないんです、タンクを務めてもらっていいですか?」
「あぁ、もちろんだとも!」

 急遽発足した2PT混合チーム、向こうの3人もスタッチの不意討ちにやられただけで、実力はかなりの物だと思った。
 しっかり連携は取れており、前衛タンク兼アタッカーに魔法使いにヒーラー、バランスが良い。
 特に苦戦することも無く、ノイシュ側の出口まで行く事が出来た。

 無事にダンジョンから出る事が出来た、カリオンさんもカリナさんもサリーナさんも……本当に無事で良かったと思う。
 外は暗くなっていたが、ノイシュ側出口には宿がなかった為、みんなで野宿する事になったのだった。
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