機械のおじさんと子供達。

もんず

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一章 機械おじさんと子供達。今日も日常を送る。

その1 子供に優しいおじさん

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子供に優しいおじさん。こんな言葉を聞いたことあるだろうか。それだとほぼ全員のおじさんに当てはまってしまうだろう。でも、これだけのおじさんは居ないと思う。
「機械の体の優しい悪役のおじさん」。
この作品は、そんなおじさんが送る哀しい話である。

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洋風の建物が並ぶ。雰囲気はなんとも言えない。黄色がかった白いレンガで出来ている四角い家が並び、子供達がいっぱい居る。
故に、幸せな子供とそうでない子供の差が出来る。小綺麗な子供とそうでない子供。うちは豊かと言ってるこの国だが、矛盾点がありすぎて笑えてくる。
だからか、この国には生まれてくるものじゃないと言われている。
、、、、、、、その理由に一つ、大きい理由がある。
、、、、「誘拐犯」。
子供を拐うという機械の体を持つという人がいるらしい。そのせいで子供をこの国に連れてきたく無いという親がいっぱいいるらしい。
まだ私は幼いが、気をつけるほどではないと思う。
、、、、、、だって、こんな汚い子供なんか拾うわけ無いだろうから。

 *

私は貧乏にあたる側の人間だと思う。
ゴミを漁り、綺麗な奴らに虐められ、大人からはゴミを見る目で、、、、
まともに着る服なんて無かった。たまたま洗濯干し場からヒラヒラと落ちてきた肌着を着てるだけ。男者か女物かも分からない。
そんな汚い私だけど、、、、「その人」は来た。
機械の体、顔の代わりにモニター。腕にはコードなどが入り組んでお、パーカーを着ている。走り方といい、口調といい。まさにおじさんだった。素晴らしいくらいに。
そして、機械の男はそう告げる。
「おいで、、、、おじさんが君を綺麗にしてあげる。」
、、、、、実に、優しい誘拐犯なのだなと思った。

 *

、、、、ここはどこ?
確か、あの例の誘拐犯に、、、
「おや、やっと目覚めたのかい。フカフカのベットで寝た感想はどうだい?」
その機械なのに生々しく、生気のある声に少しばかり驚いてしまった。
「感想はどうだい?(ニコニコ)」
笑顔などの表情をモニター伝えてくる。
「、、、、ふかふかだった。」
それを聞くと、彼は笑い出し、
「まんまじゃないか。なんか、こう、、なんだっけ?」
こっちに聞かれても。
「まぁいいや、、、じゃあ、、、オシャレする?」
「、、、、何がしたいんですか?」
私は子供特有の高い声で尖った声を出す。
彼は紅茶を注ぎながら、
「とりあえずこれでも飲んだらどうだい?おじさんは機械だから味は分からないんだ。」
「、、、、おいしい。」
「、、、、(賞味期限切れてたの忘れてた。ま、まぁいいか。この娘喜んでるし。)」

「んじゃ、話を戻そうか。君はなんて言ってたっけ?」
すぐ話忘れる。私はため息を吐きながら、さっきのセリフを吐く。
「だから、、何がしたいんですか?」
すると、おじさんはキョトンとして、
「ん?何も?」
あっさりと話が終わってしまった。
「君みたいな貧乏な子を見ちゃうと、つい助けたくなっちゃうんだよ。悩んでる子、死のうと思ってる子。そんな子達をここにご招待してるんだ。
、、、、、、君もその一人だよ。」
「私は別に悩んで無い、、、!」
そう反論しようとすると、彼はテンションを変えずこんな言葉を口にする。
「だって君、おじさんと初対面の時、自殺しようとしてたじゃん。」
、、、、、、、反論が出来なかった。
「確かに私は死のうとしました、、、でもあなたには関係ない!!」
「でもね、死んで欲しくないんだ。君が死んでも悲しむ人は居ないと思ってるだろうけど、それは違う。おじさんが悲しいよ。だって、おじさん子供達が大好きなんだから。」
「でも、、、、でも、、、、」
私は、本音を口にする。
「やっと死ねると、、、、、、、思ったのに、、、、、、!」
彼は、(_ _)と表情を浮かべ、
「はいはい!この話終わり!いい加減にしないとおじさん怒っちゃうy、、」
グルるるるるるるるる。私のお腹から怪物のうめき声の様な音が鳴る。
「、、、、、、、なんか作る?、、、、おじさん、、、料理できるよ?」

 *

トントンと、包丁がまな板にぶつかる音が響く。
「「、、、、、、、」」
会話がない。
怒っちゃったのかもしれない。
「、、、、出来たよ。まずはサラダで水分補給したらどうだい。」
「、、、、、ありがとう。」
さーて次はカルボナーラだ。そんな事を口に、また料理を再開する。
私はサラダをフォークでむさむさと食べながら、
「、、料理得意なんですか?」
「うーん、、、、こうなる前の名残でね。」
こうなる前?
「、、、おっと、気にしないでいいよ。そんな暗い話したら、サラダが不味くなっちゃう。」
彼は大きなコップみたいな白っぽいものを出して、水を入れて、細長い黄色い細長い者の纏まりを入れる。
ふーんふーんふーんと、上機嫌なご様子。
悪い人ではないのかもしれない。
「出来たよー。カルボナーラだ。そのフォークで食べちゃってー。巻くんだよ。ブッ刺さないの!」

 *

「んー、、お腹いっぱいになっただろうし、、、、それじゃあみだしなみ整えるか。洋服やらなんやら、、、」
彼はそそくさと洋服を持ってくる。
慣れた手つきで私のボサボサで硬い髪を解き、慣れた手つきで綺麗にしてくれる。
私にこんなに優しくしてくれる理由はわかんないけど、暖かい。機械のはずなのに、なぜか温もりがある。
「、、、出来たよ。まるで人形みたいだ。大人しく、表情を変えず、、、、もっと無邪気に笑っていいんだよ。」
そんな事を言われた。私は笑う事なんてなかった。表情を変える時は、いつも威嚇し、泣いていた。今更と思っていた。
すると彼は私の頬を上につまみあげ、
「ほら、笑うってのはこうやるんだ。口のはじを上げて、目を細めて、楽しむんだ。君はもう、立派なうちの家族なんだから。」
そうして私と彼との生活が始まった。

 *

「風呂、きもちいかーい?」
ドア越しに会話する私と彼。
「あったかいです!」
「もっとこう、、、、、なんか無い?おじさん、風呂入れない体だからさ、、」

 *

「、、、、」
彼は悩んでいた。理由がわからなかったので聞いてみたところ、
「君の名前だよ。かれこれ一週間過ごしたけど、やっぱ名前がないと不便だしね。、、、、、、あ、そうだ。カインはどう?」
「、、、カインですか、、、」
「理由はね、優しいのカインド(英語)から取ってカイン。どう?気に入った?」
「、、、、ありがとうございます!大事にします!」
私は泣いていた。
この前の私には名前なんて付ける意味が無かったから。
「、、、、泣いてるのかい?、、、、泣きたいのなら泣いていいんだよ。おじさんが、守ってあげる。」
その言葉は、私に優しく、浸透していくのであった。

 *

彼は、カインに秘密にしている場所がある。どうしても教えられないのだ。失望されたら、逃げられたらどうしようって、そんな気持ちが募ってたまらなかった。
深夜、彼はそのにつく。
、、、、墓場だ。彼は持っていた花束を抱えて、こう呟いた。
「皆、またおじさんは哀しい思いをしそうだ。今度こそ、幸せに居られるかな?これで32回目だよ、、、、、、どうしたら、、、、、、僕は平穏な人間として生きれるんだい?」
彼は墓の前で俯いていた。
彼のモニターには何も映っていなかった。
彼は、この話をする事はない。

 *

とある日だった。彼が姿を見せなくなった。まだ子供としての感情、判別ができないカインは、どれをご飯として食べていいか分からなかった。
、、そこで、カインはとあることを思いついた。服はあるし、ちょっと外に出てみようと。

 *

私は白いワンピースに身を包み、外を出歩いてた。ちなみに夜である。
とことこ歩いていると、やがて騒がしい場所に着いた。派手な眩しさ、人の多さ、大きい建物。俗にいう都会だった。
私は人の多さに戸惑いながらゆっくり歩いていた。
その時、醜い声が、耳に入った。
「あれ?なんで貧乏なあなたが居るの?」
それは、例の小綺麗なうざい奴だった。女は、私を馬鹿にするよう口を開く。
「雑魚が都会に来るなよ。ほんっと腹たつわー。あんたみたいな奴がオシャレして目立ってる事が。」
私は、今まで生きていた時ので、その女の喉笛に掴みかかっていた。
「ちょっ、、、、ふざけないでよ、、!雑魚の癖に、、!」
耳障りな声が響く。大勢の人がこっちを見ている。
それに気づいたらしい女が、わざとらしいセリフを吐く。
「きゃー!暴力よー!助けてー!」
その言葉を聞いたこっちに気づいてなかった人達が一気に振り向く。
その女は、気持ち悪い笑みを浮かべていた。軽蔑していたのだ。私を。
人混みの中から、あの姿が見えた。彼だった。
「、、、、、、なぁにおじさんの子に手出してんだ?殺すぞ?」
彼は、思いもしなかった言葉を吐いた。

 *

彼は笑顔の表情をモニターに浮かべていた。怒ってる様にも見えた。
すると彼はこっちを振り向いて、
「こらこらカイン。駄目だよ?こんな生きる価値もないブスに反論しちゃあ。反論した君までブスになっちゃうよ。折角の綺麗な顔が台無しだ。」
彼は直球な悪口を吐いた。女に喧嘩を売っているのだ。勿論、女はカンカンに怒り、
「ふざけないでよ、、、何いってんの、、?!」
「いやいやごめん。ありのままの本音を言っただけなんだけどね。ダメだった?」
彼は女を煽る。
「、、、こっち来て!」
女は連れらしき者を連れてきた。大柄の男性で、私とかでは到底太刀打ち出来ない力を持っていた。
「さぁ!!その調子乗ったジジイをやっちゃって!!」
しかし、彼は全然怯えなかった。むしろ何かを準備していた。
その直後、大柄の男性の腕が切れた。
彼の背中から丸ノコギリが伸びていた。その丸ノコギリは、血を飛び散らかしていた。
大柄の男性は声にならない悲鳴をあげていた。しかし彼はまったくもって気にせず、女に振り向き、こう口にした。
「山と海。どっちが好きだい?おじさんが好きな方法で殺してあげるよ。」
彼は、笑顔のままだった。


 *

女は逃げていた。必死に。それを彼は笑顔のままで追いかけていた。
「待て待て。おじさんはまだ君を苦しませていないよ。カインを馬鹿にしたらこうなる事をわからなくちゃ。」
彼の背中からは丸ノコギリ、チェンソー、大きいハサミ、棘だらけの手が伸びていた。
尚、彼は笑顔のままだった。
「追いつけた。おしおきを始めようか!」
彼は、女を文字通り公開処刑した。
彼はもう、「悪役」にしか見えなかった。
彼はこっちを振り向いていた。
「どうだいカイン?スッキリしたかい?カインに悪口いうやつはおじさんがこうしてあげるからさ。外に出る時ちゃんと呼んでね。出なきゃ、、」
彼が話終わる前に、私は足が動いていた。逃げていたのだ。彼から。

 *

「あれ、、、、逃げちゃった、、、、」
おじさんはぼーっと見つめている。
「嫌われちゃったかー。まぁ、自分を虐めたとは言え、おじさんがおしおきしちゃったからねー、、、余計君に恨みを持つよ。ね?」
おじさんは女を見つめる。
女はまともに動けない状態だった。腕はぼろぼろ、足はもうまともに動かなかった。
「、、君が調子が乗るからだよ。カインに嫌われて、逃げられて、、、ああ、もう耐え切れない。カインの幸せな顔が見れなくなっちゃったじゃないか!!どうしてくれるんだ!!あーもうダメ。この女にはもっと重罪を。きついお仕置きを。」
おじさんは背中から凶器をいっぱい出す。
「んー、、、包丁で滅多刺し、丸ノコギリで綺麗に解体、チェンソーでぐちゃぐちゃに、、、、どれがいいかな、、、?」
おじさんは、とても狂気じみた考えをする。やがて、こんな事を口にする。
「そうだ!全部やっちゃえばいいじゃないか!天才的なアイディアだ!!」
おじさんのモニターには嬉しみの表情が浮かぶ。
「綺麗に解体して、滅多刺しにして、グチャグチャにして、、、ああ、ドキドキが止まらないよ。最高なシチュエーションだ!!」
彼は笑い続けていた。モニターを通じて。その狂気は周りの人々に恐怖を与えた、、、

 *

お仕置きを済ませた後、彼は私の元に来ていた。
「ねぇ、、、怒った?ごめんね。どうしても許せなくて、、、、」
返事が出来なかった。あんなことされたらどうしようって。口が動かなかった。
「、、、大丈夫だよ、、、君にはあんな事はしない。」
許可らしきものを得られたので、私はこう質問する。
「慣れてるの?。」
「、、、、、、」
彼は目を見開いていた。勿論にモニターに写されていた顔文字だが。
彼はこう口にする。
「、、、、おじさんはね。殺しをしていたんだ。家が無くても生きれるけど、人として働いてこうして金を稼いだんだ。」
「、、、、そうなんですか、、、」
会話がない。
「、、、ちょっとついてきて。連れて行きたいところがある。」

 *

都会側とは真反対の、森が覆いしげる方に進んでいた。
「ここだよ、、、着いた。」
墓場だった。
私は口を開いていた。
「おじさんの仲間達がね、反対したんだ。子供なんて拾うなって。嫌がったら、こうなった。今までに31人の子がこうなった。仲間達は呆れて認めてくれたんだけど、もう勇気が無くて。」
彼は一拍置く。
「そこで、君と会ったんだ。一目見ただけで分かった。この子となら、幸せになれるって。笑えるでしょ?人の命奪ってるのに、人を助けるって。」
「、、、、、、、」
「、、、、、、、、許してくれるかい?一緒に生きることを。おじさんと。」
私は迷わなかった。
「、、、一緒に居たい!おじさんと、幸せになりたい!!」
おじさんと居て、とっても楽しかった。何より、心がドキドキした。一緒に居て。
毎日が新発見ばかりだったから。
「、、、、ありがとう。カイン。おじさん、幸せだよ、、、!」
モニターには、涙の表情が写っていた。
「今からもっと幸せになりましょう!!楽しく過ごしましょう!!」
こうして私と彼の不思議な生活が始まった。
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