ホラーエンドは始まらない!

国領 あき

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一章 邂逅編

13

「三国、お前の後輩がいる会社はこのビルの何階だ?」

 取引先との打合せが終わりエレベーターに乗り込むと、円乗寺が言った。

「なんですか突然」

 確かに三国は、取引先の同じビルに入ってる別会社に大学の後輩が就職したと話した事はある。

「後輩がいるのは、あの男が降りた階の会社か? 」
「……そうですけど、本当にたまたま後輩いますけど、違う会社の場合もあるんですよ?」

 三国は円乗寺の言いたい事がなんとなくわかってしまう。

「その場合でも、お前なら合コンでもなんでも繋ぎは作れるだろ」

 円乗寺は眉ひとつ動かさず、こともなげにいう。
 三国は、この俺様上司が執着している様子の『佐保様』とやらが可哀想に思えてきた。
 あのイケメンとホテルにいた、という話で円乗寺の機嫌が悪くなったところを見ると、円乗寺の興味は『佐保様』にしか向いていない。

 そして十中八九『佐保様』は女だ。
 三国は、四ツ谷玲子がその『佐保様』の話をした時に、一瞬だけ般若のような顔つきをしたのを見逃しはしなかった。玲子が知っているならば、おそらく公式で円乗寺の恋人かそれに近い関係なのだろう。
 プライベートが謎な円乗寺の一部が垣間見えたが、正直、上司であろうと男にはなんの興味もない三国にはどうでも良いことだった。

「あのイケメン男の素性が知りたいんですか?」
「そうだ」
「……了解しました」

 三国はイケメンよりも『佐保様』の方が気になるが、あえて口にはしなかった。

 直感があった。

 『佐保様』は……円乗寺の地雷なのだと。








 そんな会話をしたのが数時間前だ。

 仕事帰りに飲みに誘った後輩の関は荒れていたが、なんとかあのイケメン男の素性もわかった。

 全てに関わっているのが、町中佐保という情報まで手に入れてしまった。

 酔いつぶれてテーブルにつっぷした関のつむじを突きながら、三国は考えた。

 どちらにしろ、関には勝ち目はない。
 話を聞く限りでは、一賀という男が手を出しているようにも思えるし、あの円乗寺が執着している女だ。

 ……一体どんな女なのだろう。

 関は人が良く、マイペースで時々ぼんやりといった男だが、人を観察する目はある。
 町中佐保が性悪だったら近寄りもしていないはずだ。

「ちょっと俺、興味出てきちゃったかも」

 グラスに残った酒を飲みながら、三国は呟いた。
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