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薬草諸々、ニンニクと生姜、獣臭*
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貰った香水を使ってみるほどに、ニビの気づきは確信になる。なんだかときめいて世界が綺麗に見える。いつもより一層胸を張って歩け、多くの者が匂いに顔を上げてニビに見惚れた。客に、いい匂いがすると褒められるのも心の底から嬉しい。白の園はすっかりお気に入りだった。大事に使いたい気もするが、まあ瓶は残るからと割り切って日々使った。
タドがただの客ではなく好きな客になったところで、客である。ニビの振る舞いは変わらない。相手の要求と好みに合わせて身を売る。その為に会う。決まった日の約束があり、もうとっくに体を繋げる関係になっているのは得に思えた。普通、好意を抱いた人とそうなるまでには色々努力が要るものだろう。
――まあ、客なんだけどさ。
恋愛という観点で俯瞰すると一段飛ばしと見せかけまだ始まってもいない地点だ。そういった色を出すことも、憚られた。
好きだ愛してると囁いて気分を盛り上げること、本気で入れ込んだ客が熱を上げてくるのを煽り金品貢がせることも娼婦にとってはよくあることだったが、店に籍を置くでもなく流しでやっているとなんでも一人で責任を取り身を守らねばならぬので、ニビはあまりよい手だとは思わない。それにタドが求めているものはそうではなく、熱で呼び起こされる匂いだろう。重々承知して、今の距離を逃したくないので、彼は線を引く。己は男娼、相手は客だ。それでよい。そうすれば――触れられる、触れてもらえる。じゃあそれが一番、と割り切った。
あくまでもと言い聞かせて、それでも喜んでしまうニビはそわついて髪を解く。シャツをはだけて色気を出して、ランプで照らされよく見えるようになった壁のしみなど眺めてタドを待つ。
今日は汗を掻いたから抱き合う前に流してくる、というのを待っていた。ニビはまったく気にしないが、この人は気になるんだろうなというのは今までのことで察せられたので食い下がらず大人しく頷いた。風呂というほどではなくとも洗い場は奥にある、そういう面では立派な一軒家だった。
何もせずに待つ時間は今までとは違う心と一緒では少し長く――さっき残り物の酒を片付けた分か喉の渇きを覚えたニビは、ある程度なら勝手に動くのにも慣れてきた家の中、台所に水を貰いに行った。そこで発見してしまった。
差し込む月明かりに影を伸ばす小さい瓶。先日の物とは違う、安い陶器の入れ物だった。酒にしては小さいが香水にしては華が無いし、蓋の開いた空瓶をこうして放っておきはしないのでは。それに何より、口のところに残っていた封紙の切れ端の模様にも彼は見覚えがあった。摘まみあげてちょっと嗅いでみれば思ったとおりの、眉が寄る特有の薬臭さがした。
歓楽街で、娼婦たちは皆知っているような精力剤。その中でも一番よく効くと評判の店の品だ。若く興奮しやすいニビ自身は世話になったことがないが飲んだ男の相手をしたことはある。長く激しい夜だった。
タドが飲んだのだろう、今。
結論したニビは静かに元の位置へと瓶を置き、まだ人影のない奥のほうをちらと見て、足音も潜めるようにして部屋に戻った。
――ヤル気なのかな、嬉しい、この前できなかったの気にしてるのかなー……
無理に勃起させている雰囲気はないものの、匂いを嗅ぐ為の行為はいつも一回で終わる。客が満足したら終わりが娼婦の常であるからニビはそれを不満に感じたことなどない。物足りなくてその後客をとったことはあるが。一回できれば男の機能としては十分だろう。しかしタドも年下の自分が相手で年齢や精力を意識するのかも、気にしてるなら可愛い……などと考えながら、もう品よく待ってはいられず下に履いた物も脱いだ。相手がその気ならニビだってやる気を出して出迎えたいものだ。
理由はどうあれタドが自分との行為に前向きなのだと思うと嬉しくて下腹が疼いた。指を濡らし、ベッドの上で解すのは準備というよりは自慰だった。ただ快感はこの後の為にとっておいて、期待を高める程度の動きにする。洗ってきた尻は簡単に指を咥え、男を受け入れる為に潤う。
向こうで物音が立つのにも構わず続けていたニビは、やってきたタドを見遣って熱っぽく息を吐いた。
寝巻のシャツを被ってきたタドの前は張っていた。あの薬は即効性がある。十分並程度には働いていた、普段飲まない男の体には効きすぎたのだ。水浴びの時間稼ぎなど要らぬほどに。ニビはにいと目を細め、ごろりと寝転んだ流れで首を傾ぐ。
「今日は気分でした?」
こっそりの雰囲気だったので薬を飲んだことには触れないでいようと思っていたが、こうなってはまるで指摘しないのは不自然だ。揶揄に、タドはどこか決まり悪そうにして肩を竦めた。
「君が待ってるからね。体も覚えてきたのかも知れない」
「うれしー。張り切っちゃうなぁ」
そんな言い方に、ニビは本気で浮かれているのを隠し囃す声にして、待ちくたびれたとばかりに腕を伸ばして足を開く。
「僕も準備できてますよ。いつでもどうぞ」
寄ってきた人の裾を無作法に爪先で捲って挑発する。手が届けば下着も下ろす。現れたそれにまた目を細めた。
いつもより断然勃ちがよい。硬さも角度も申し分ない。まさしく精力漲るその様子にうずうずとしながらも浮いた血管をじっくりと撫でまわして、拡げていた後孔に誘う。見上げれば酒に酔ったかの雰囲気で俯くタドの顔が照らされていた。ふつと欲望が煮える灰色の瞳が男娼を見下ろす。精力剤の為だけでなく、部屋に入ってすぐ感じられたその匂いに当てられていた。実際体が覚えてきた節はある。
「っあん、あ……!」
触れた熱が遠慮なく、一気に貫く衝撃にニビは堪らず声を上げた。圧し掛かる体を足で引き寄せ、自らも腰を押しつける。難なく呑んで包み込む極上の体温にタドの眉が寄る。
「っあー……ほんとに、溶けそうだな」
落ちてくる呟きに、意識しての締めつけ。ふふんと笑う吐息も突かれて乱れた。よく濡れた場所が、ぶつかる体が、音を立てる。
「そ、こ――ああっ……あ――!」
タドも慣れて、男の性感帯を把握してきた。ニビを喜ばせるやり方を。硬く滾った物でぐりと前立腺を押し上げて奥まで満たす動きに上がる喘ぎは演技ではない。勃った陰茎からは触れずとも水気が滲む。
ぐと前に身を倒すのを柔い体で受け止め、ニビは近づく顔を見上げた。匂いを嗅ぐのに近いほうがいい、んだろうな、とは火照った意識でもまだ考えられたが、眼前にある顔がそういった冷静な分析を押しのける。
口づけを乞い、掴んだ髪を引いて口を開き誘う。僅かな距離、あくまで相手からしてもらう余地を持たせたのは男娼としての振る舞いと、やって嫌がられたらやだなあという躊躇いからだ。ただ案外簡単に――そういつも許容するように。タドはニビと口を重ねた。
ニビの脳裏に、果実を食む姿が過ぎる。少し目を伏せ、齧りとり啜って飲み込んで息を吐く。
身震い、彼のほうも厚い唇と舌を味わった。ここでも快感を供する。キスだって他の客ともするものだ。慣れた男娼には何ら特別なことではない。
同時に受け入れた腹が押され――既に体が昂っていた分容易く、舌を絡めているうちにニビの中で快感が弾けた。縋る腕がきつく抱き寄せる。
「んん、ぅ……っ」
絶頂に震える身でタドからも絞り取ろうと動く。咥えた太い物を感じるほどにまた気持ちよい。堪らない幸福感がある。
「ぁ、――はぁ……っ」
口が離れ、突き上げられて乱した呼吸の中喘ぐ。抱える体に少し力が入り息が抜けたので相手も一度達したのを把握して――それからぼんやり、ニビは自らの体の訴えに意識を向けた。
足りない。まだ、もっとしたい。今日ならいいだろう。タドだってまだ燻っているのがありありと分かる。ガウシ一と名高い薬房の看板商品の実力はこんなものではない。折角飲んでくれたのだから、満足するまでこれを受け止めねばとの使命感も湧いてくる。
濡れた唇をぺろりと舐め上げて、ニビは相手の肩を撫でて押しやり身を起こした。
「……タドさんも、いい顔」
熱の籠った顔は、笑って指摘すると我に返って少し気恥ずかしげにもなる。その頬を撫でてニビはまた笑った。二人分の熱で湿った寝台に似合う娼婦の笑みだ。
抜け出た物は向かい合わせに座って唇を啄みながら触れてやれば、すぐに復活した。一度目と変わらない元気な姿である。
「……今度は僕が上」
自身は薬を飲んでもいないのに、興奮にまた勃起してきたのも見せつけるように跨る。体位を変えれば深く、硬い物が中を押し上げて、まだ先の快感を引きずる身は軽く気をやった。それでも動いて、締めつけ――動きづらさは無視して擦り寄り抱き込んだ。鎖骨の上で堪らず吐かれる息。汗ばんだ肌に心奪われ、鼻を押しつけるタドに飴色の目が細くなる。
いくらでも嗅がせて、ついでに体のほうにもハマらせて――飽きないように。客と男娼、でも手に入るこの場所をこのまま占めておく為に、いつも以上に、ニビは上手くやる。
「君も出したいんじゃないの」
言って、タドの手が陰茎を揉む。硬く主張するのを扱く手に喉を鳴らしてニビは頷いた。
「ん――イきたい、いかせて」
ねだって耳を食む。身を揺らし、締めつけて快感を伝えながら、喘ぐ声を聞かせて果てる。
タドが二度目の精を放つまでは最初よりは少しかかった。ベッドの上でだらける休憩を挟み、また兆してきたのは口で処理して、薄い精液の残滓まで今日は散々味わい尽くした気分だった。さすがに少し疲れた様子を見せれば、泊まっていきなさい、と彼から提案がある。ニビは悩まず頷いた。一緒に寝ようと誘ってみるのは――これだけべったりと触れた後ではなおさら、やりすぎな感じがして言えなかった。
それでも何も悪くない。向こうの部屋でタドが過ごしているのを感じるのも、それはそれで好きだと思った。
タドがただの客ではなく好きな客になったところで、客である。ニビの振る舞いは変わらない。相手の要求と好みに合わせて身を売る。その為に会う。決まった日の約束があり、もうとっくに体を繋げる関係になっているのは得に思えた。普通、好意を抱いた人とそうなるまでには色々努力が要るものだろう。
――まあ、客なんだけどさ。
恋愛という観点で俯瞰すると一段飛ばしと見せかけまだ始まってもいない地点だ。そういった色を出すことも、憚られた。
好きだ愛してると囁いて気分を盛り上げること、本気で入れ込んだ客が熱を上げてくるのを煽り金品貢がせることも娼婦にとってはよくあることだったが、店に籍を置くでもなく流しでやっているとなんでも一人で責任を取り身を守らねばならぬので、ニビはあまりよい手だとは思わない。それにタドが求めているものはそうではなく、熱で呼び起こされる匂いだろう。重々承知して、今の距離を逃したくないので、彼は線を引く。己は男娼、相手は客だ。それでよい。そうすれば――触れられる、触れてもらえる。じゃあそれが一番、と割り切った。
あくまでもと言い聞かせて、それでも喜んでしまうニビはそわついて髪を解く。シャツをはだけて色気を出して、ランプで照らされよく見えるようになった壁のしみなど眺めてタドを待つ。
今日は汗を掻いたから抱き合う前に流してくる、というのを待っていた。ニビはまったく気にしないが、この人は気になるんだろうなというのは今までのことで察せられたので食い下がらず大人しく頷いた。風呂というほどではなくとも洗い場は奥にある、そういう面では立派な一軒家だった。
何もせずに待つ時間は今までとは違う心と一緒では少し長く――さっき残り物の酒を片付けた分か喉の渇きを覚えたニビは、ある程度なら勝手に動くのにも慣れてきた家の中、台所に水を貰いに行った。そこで発見してしまった。
差し込む月明かりに影を伸ばす小さい瓶。先日の物とは違う、安い陶器の入れ物だった。酒にしては小さいが香水にしては華が無いし、蓋の開いた空瓶をこうして放っておきはしないのでは。それに何より、口のところに残っていた封紙の切れ端の模様にも彼は見覚えがあった。摘まみあげてちょっと嗅いでみれば思ったとおりの、眉が寄る特有の薬臭さがした。
歓楽街で、娼婦たちは皆知っているような精力剤。その中でも一番よく効くと評判の店の品だ。若く興奮しやすいニビ自身は世話になったことがないが飲んだ男の相手をしたことはある。長く激しい夜だった。
タドが飲んだのだろう、今。
結論したニビは静かに元の位置へと瓶を置き、まだ人影のない奥のほうをちらと見て、足音も潜めるようにして部屋に戻った。
――ヤル気なのかな、嬉しい、この前できなかったの気にしてるのかなー……
無理に勃起させている雰囲気はないものの、匂いを嗅ぐ為の行為はいつも一回で終わる。客が満足したら終わりが娼婦の常であるからニビはそれを不満に感じたことなどない。物足りなくてその後客をとったことはあるが。一回できれば男の機能としては十分だろう。しかしタドも年下の自分が相手で年齢や精力を意識するのかも、気にしてるなら可愛い……などと考えながら、もう品よく待ってはいられず下に履いた物も脱いだ。相手がその気ならニビだってやる気を出して出迎えたいものだ。
理由はどうあれタドが自分との行為に前向きなのだと思うと嬉しくて下腹が疼いた。指を濡らし、ベッドの上で解すのは準備というよりは自慰だった。ただ快感はこの後の為にとっておいて、期待を高める程度の動きにする。洗ってきた尻は簡単に指を咥え、男を受け入れる為に潤う。
向こうで物音が立つのにも構わず続けていたニビは、やってきたタドを見遣って熱っぽく息を吐いた。
寝巻のシャツを被ってきたタドの前は張っていた。あの薬は即効性がある。十分並程度には働いていた、普段飲まない男の体には効きすぎたのだ。水浴びの時間稼ぎなど要らぬほどに。ニビはにいと目を細め、ごろりと寝転んだ流れで首を傾ぐ。
「今日は気分でした?」
こっそりの雰囲気だったので薬を飲んだことには触れないでいようと思っていたが、こうなってはまるで指摘しないのは不自然だ。揶揄に、タドはどこか決まり悪そうにして肩を竦めた。
「君が待ってるからね。体も覚えてきたのかも知れない」
「うれしー。張り切っちゃうなぁ」
そんな言い方に、ニビは本気で浮かれているのを隠し囃す声にして、待ちくたびれたとばかりに腕を伸ばして足を開く。
「僕も準備できてますよ。いつでもどうぞ」
寄ってきた人の裾を無作法に爪先で捲って挑発する。手が届けば下着も下ろす。現れたそれにまた目を細めた。
いつもより断然勃ちがよい。硬さも角度も申し分ない。まさしく精力漲るその様子にうずうずとしながらも浮いた血管をじっくりと撫でまわして、拡げていた後孔に誘う。見上げれば酒に酔ったかの雰囲気で俯くタドの顔が照らされていた。ふつと欲望が煮える灰色の瞳が男娼を見下ろす。精力剤の為だけでなく、部屋に入ってすぐ感じられたその匂いに当てられていた。実際体が覚えてきた節はある。
「っあん、あ……!」
触れた熱が遠慮なく、一気に貫く衝撃にニビは堪らず声を上げた。圧し掛かる体を足で引き寄せ、自らも腰を押しつける。難なく呑んで包み込む極上の体温にタドの眉が寄る。
「っあー……ほんとに、溶けそうだな」
落ちてくる呟きに、意識しての締めつけ。ふふんと笑う吐息も突かれて乱れた。よく濡れた場所が、ぶつかる体が、音を立てる。
「そ、こ――ああっ……あ――!」
タドも慣れて、男の性感帯を把握してきた。ニビを喜ばせるやり方を。硬く滾った物でぐりと前立腺を押し上げて奥まで満たす動きに上がる喘ぎは演技ではない。勃った陰茎からは触れずとも水気が滲む。
ぐと前に身を倒すのを柔い体で受け止め、ニビは近づく顔を見上げた。匂いを嗅ぐのに近いほうがいい、んだろうな、とは火照った意識でもまだ考えられたが、眼前にある顔がそういった冷静な分析を押しのける。
口づけを乞い、掴んだ髪を引いて口を開き誘う。僅かな距離、あくまで相手からしてもらう余地を持たせたのは男娼としての振る舞いと、やって嫌がられたらやだなあという躊躇いからだ。ただ案外簡単に――そういつも許容するように。タドはニビと口を重ねた。
ニビの脳裏に、果実を食む姿が過ぎる。少し目を伏せ、齧りとり啜って飲み込んで息を吐く。
身震い、彼のほうも厚い唇と舌を味わった。ここでも快感を供する。キスだって他の客ともするものだ。慣れた男娼には何ら特別なことではない。
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「んん、ぅ……っ」
絶頂に震える身でタドからも絞り取ろうと動く。咥えた太い物を感じるほどにまた気持ちよい。堪らない幸福感がある。
「ぁ、――はぁ……っ」
口が離れ、突き上げられて乱した呼吸の中喘ぐ。抱える体に少し力が入り息が抜けたので相手も一度達したのを把握して――それからぼんやり、ニビは自らの体の訴えに意識を向けた。
足りない。まだ、もっとしたい。今日ならいいだろう。タドだってまだ燻っているのがありありと分かる。ガウシ一と名高い薬房の看板商品の実力はこんなものではない。折角飲んでくれたのだから、満足するまでこれを受け止めねばとの使命感も湧いてくる。
濡れた唇をぺろりと舐め上げて、ニビは相手の肩を撫でて押しやり身を起こした。
「……タドさんも、いい顔」
熱の籠った顔は、笑って指摘すると我に返って少し気恥ずかしげにもなる。その頬を撫でてニビはまた笑った。二人分の熱で湿った寝台に似合う娼婦の笑みだ。
抜け出た物は向かい合わせに座って唇を啄みながら触れてやれば、すぐに復活した。一度目と変わらない元気な姿である。
「……今度は僕が上」
自身は薬を飲んでもいないのに、興奮にまた勃起してきたのも見せつけるように跨る。体位を変えれば深く、硬い物が中を押し上げて、まだ先の快感を引きずる身は軽く気をやった。それでも動いて、締めつけ――動きづらさは無視して擦り寄り抱き込んだ。鎖骨の上で堪らず吐かれる息。汗ばんだ肌に心奪われ、鼻を押しつけるタドに飴色の目が細くなる。
いくらでも嗅がせて、ついでに体のほうにもハマらせて――飽きないように。客と男娼、でも手に入るこの場所をこのまま占めておく為に、いつも以上に、ニビは上手くやる。
「君も出したいんじゃないの」
言って、タドの手が陰茎を揉む。硬く主張するのを扱く手に喉を鳴らしてニビは頷いた。
「ん――イきたい、いかせて」
ねだって耳を食む。身を揺らし、締めつけて快感を伝えながら、喘ぐ声を聞かせて果てる。
タドが二度目の精を放つまでは最初よりは少しかかった。ベッドの上でだらける休憩を挟み、また兆してきたのは口で処理して、薄い精液の残滓まで今日は散々味わい尽くした気分だった。さすがに少し疲れた様子を見せれば、泊まっていきなさい、と彼から提案がある。ニビは悩まず頷いた。一緒に寝ようと誘ってみるのは――これだけべったりと触れた後ではなおさら、やりすぎな感じがして言えなかった。
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