9 / 47
音楽
しおりを挟む
セヴランの発現は週に二三回だった。一日おきの訪問、それで発現が見られなければ翌日、翌々日も確認。という予定が組まれた。時間をずらすかという話し合いもあったが、セヴランの現在の住居が本部や既存の巡回経路からやや遠く、遅い時間に訪問とすると執務室での仕事が細切れになり不便であること、そして訪問予定を入れて起こしてやったほうが朝起きて日光浴するだろうということで、時刻は八時に固定された。
セヴランの右半身に現れる植物たちは実によい素材や標本となったが、セヴラン当人は相変わらず問題の多い人物だった。なかなか出てこないと思えば酒臭い。一度は家に娼婦を連れ込んでいた。食料の買い置きもしているときとしていないときがある。カイは仕方なくパン屋までおつかいをしてやったりもした。水もちゃんと飲んでいるのか怪しいので、訪問中に一杯二杯は飲み干すように促す。
カイには分かってきた。セヴランは構われたがりだ。植物の発現がないのを確認して帰ろうとすると拗ねて、翌日は特に面倒臭い感じになっている。酒が増えたり、食事を疎かにするのもわざとだ。口煩くしたほうが実は満足しているように見えた。いよいよ問題児だが、こうなってはカイも意地だ。仕事なのだし根気強く相手をしてやろうという気になってきた。――あの宿に連れて行った夜、その翌日の出来事も勿論過ぎらないではなかった。寂しい奴なのだと感じて同情した。手を焼くがどうも、放ってはおけない。
それに、その苦労に足るものがある。
セヴランが身に宿す植物はとても瑞々しく美しく、カイの目にも素晴らしいものだったから。これの為にどうにか上手くやってやろうと思わされた。園丁官、庭師としての使命感。
「おは、よう――」
そのようにして、セヴランの担当についてもう一月経とうかという頃。カイは見えた景色に息を呑んだ。
開いた緑の扉の向こうには、頭に鹿か何かの角のように枝を生やしたセヴランが立っていた。角とは違って片方、右だけで葉も茂り花まで咲いていたが、冠というよりは角だった。小さく白い花が寄り集まる美しい庭常だ。それでバランスがとれないように首を傾げて、彼は端を弄る。
「――四種目、立派だな」
「立派過ぎるよ。驚いた。本当に寝返り打てないんだも――おわっ」
言う間にも居間のドアに引っ掛かって花が零れるのにカイは慌てて駆け寄った。
それは他で咲いているのを見かけるものより清々しく甘く香るように思われ、カイはまた呼吸を深くする。魔を退ける魔法と蘇生薬――そう呼ばれるほどの力ある薬の材料だった。
枝葉、セヴランが動くと輝くようにも見える花を確かめ、道具を並べる。彼はもう慣れており道具も一級品を揃えているが、こうして相手にする植物が大物となってくるとやはり簡単ではない。
「これくらいなら……ナイフでいけるかな……まだ育つか……?」
「いけないと、次は何が出てくるわけ?」
「鋸も持ってきてる」
「ひえ……」
葉や茎を摘んだり切ったりしても平気なように、たとえ枝や幹にまでなったとして――最も大きな事例だと一時木に取り込まれた庭もいたが――それを伐採しようとも人間のほうがどうにかなることはない。が、セヴランは想像で縮み上がる。
肌は当然、髪を切られても困ると言う彼に、さすがにカイも理解を示す他なかった。横に立ち、これまでのときよりさらに慎重に枝葉を寄せ、髪も掻き分けて分け目を作る。どのように生えたものだか枝に引っ掛かっている個所も多く、つんと引かれて挙句髪が抜ける感触のほうは確かにするのにセヴランが抗議の声を上げる。
「理髪師じゃないんだ、ちょっとは勘弁してくれ……」
それでようやっと切る向きと順番も決めて、さてやるかとカイが構えたとき、セヴランは辺りを見渡した。緑色の目が何か探した。
おい動くな、と窘められるより早く言う。
「待って、まだ切らないで、――今、外から音楽が聞こえる?」
暫らく、二人とも息まで止めて静かになった。だがカイの耳には何も聞こえない。此処は静かな場所で、人の声なども今は聞こえなかった。精々、彼が持ってきた小さな時計の動く音程度。
「いや……」
「じゃあここから聞こえる。……歌が」
カイが答えると、セヴランの声が震えた。カイに任せていた庭常の枝に触れ、さする。感激の吐息。カイの顔色も変わった。
「どんな――」
「神様の歌だ。すごいな。……言葉は分からないけど……」
指が調子をとる。辿る鼻歌、同じ旋律の繰り返し。二人とも聞いたことがない、此処ではない場所の音楽。
生えたものを通して神々の園の音が聞こえる。鳥の声やせせらぎ、話し声……そういった話はこれまでも何例か報告があった。だが、ほんの数例、貴重な証言だ。カイは慌てて記録の為に通信機を立ち上げた。
「カイ・エッカルトです、発現した植物から歌が聞こえると、自分には聞こえませんが、今、」
そのうちにセヴランは立ち上がった。花が散る。
「楽器がある。弾くよ」
「演奏してくれると」
階段を駆け上がる慌ただしい物音に庭常の枝が無事か心配して、それ以上に予期せぬ出来事にそわそわとして、本部からの確認に答えながらもカイは浮つく。しかし何もできず、採取の用意をしていた卓上を見ているしかなかった。戻る気配に顔を上げる。
庭常を挿頭すセヴランが二階から持ち出してきたのは、埃を被った竪琴だった。美しい彫り物も施されたしっかりとした木製の丸い枠に十一の弦が張られた本格的な楽器だった。
ぽん――
くすんだ竪琴はそれでもどうにか鳴った。椅子に座り直したセヴランは時々弦も締めて指を動かした。急いて、繰り返し、庭常に耳を傾け旋律を追う。次第に理解し伴奏になる。彼にははっきりと聞こえる曲を、自分たちの側にも再現する。
唇が動く。
声は竪琴の音色へと美しく重なる。セヴランの歌声には喋っているときとは違う甘さがある。
それは寄り添って語らうかの優しい響きの曲だった。何か言っているが意味は知れない神の国の言語の、その音だけをセヴランが模る。そうしてカイに聞かせた。
セヴランが弾く。が、曲に誘われてもいる。指は己が発した音に導かれるように、次へと動いていった。彼は美しく奏でた。長くそうしていなかったのが明らかな楽器でも、問題なく。
十分ほど、たまに音を組み替えて演奏は続いた。
「――ああ、止んだ」
聞き入っていたカイは、セヴランが何かの憑依が解けたように手を止め、惜しんで、分かる言葉を呟いたのにはっとする。数度、息をしなおして、瞬き、ようやく思い出して通信機を掴んだ。
「聞こえなくなったそうです。指示無ければ、採取に戻ります――」
「……暫らく待ってから、異変無ければ採取を」
「はい、――了解しました」
抑揚に乏しい通信の音声も些か興奮しているように感じられたが、追加の指示はその程度だった。
カイが顔を上げれば、竪琴の埃を払って眺めるセヴランが居た。薄汚れた自分の指を見つめて何か考えるのをカイも黙って見てしまった。声はかけづらい雰囲気だったが、二人きりで、仕事中だ。
「……セヴラン、いいか」
「すごかったね、君も聴けたらよかったんだけど」
改めて声をかけると、セヴランはぱっと顔を上げて笑う。申し訳なさそうにするのに、カイは首を振った。
「いいや、十分、いいものを聴かせてもらった」
世辞などではなかった。研究の面でも、個人的な体験としても――単純に音楽としても、実によい演奏を聴いたという実感があった。セヴランは素人ではないだろうとも察せられた。
けれど、そうやって褒めたのにセヴランはいつもの調子ではなく、どこか困ったような顔をする。あれほど自然に弾いて見せたのに竪琴はやはり埃塗れだった。
カイも少し困って、まだ刃物を持てず、代わりにペンを持って訊ねた。
どんな風に聞こえたのか――少し離れたところから聞こえるようだった。次第に盛り上がったようにはっきりとした。
楽器は――弦楽器。多分大きな竪琴。
声もしたのか――多分若い女の、もしかしたら子供の声で、歌っていた。二人はいた。
他、聞こえた単語と思しきものの書き留め。
そういう調査は、聞かせてもらった音楽に比しては味気ない。それでもきちりと報告にして、カイは頷いた。
さらに時間を置いてもまた音楽が聞こえ始めるようなことはなかったので、カイは標本の採取に踏み切った。セヴランが動いてしまったのでさっき掻き分けていた髪の分け目は見失われてやり直しになった。結果、その日の作業はいつもの倍以上かかった。
まだ二人に残る音の余韻に、枝を切る音が重なる。白い庭常は変わらず輝くように咲き、清涼な香りを漂わせていた。
本部に帰還したカイは、普段は執務室には居ないような研究員たちにも囲まれた。件の通信からは時間が経って多少落ち着いてはいたものの、当事者の登場にまた沸き立って、多くの声がかかる。
「あんなものが聴けるなんて!」
「素晴らしいデータになったよ。今回の彼はいい庭だな」
音声は無事銀盤録音できた。音楽自体には皆詳しいとは言い難いが、古語に似た響きの言葉がないか調査し始めている。専門家に頼んで楽譜の書き起こしや、意見を貰ったりもしたいところだ――等々。何か思いつけば君も言ってくれ、と張り切って背を叩かれる。
皆喜んでいる。カイも勿論喜ばしい。自分が居合わせたことが誇らしいし嬉しい。が、彼は当の庭、セヴランのことが気になってもいた。
「お疲れ。あの人、楽器が弾けたんだなあ。竪琴?」
「――ええ。上手かったと思います」
周りの人が持ち場に戻っていって、珈琲を持ってきてくれたデニスに言われると尚更。
――久しぶりに弾いたからちょっと疲れた。
いつになく言葉少なになったセヴランが、ただ疲れたり興奮しただけではない表情で呟いて、あの後にも音を鳴らさず大事そうに弦を撫でていた姿が、どうにも。
セヴランの右半身に現れる植物たちは実によい素材や標本となったが、セヴラン当人は相変わらず問題の多い人物だった。なかなか出てこないと思えば酒臭い。一度は家に娼婦を連れ込んでいた。食料の買い置きもしているときとしていないときがある。カイは仕方なくパン屋までおつかいをしてやったりもした。水もちゃんと飲んでいるのか怪しいので、訪問中に一杯二杯は飲み干すように促す。
カイには分かってきた。セヴランは構われたがりだ。植物の発現がないのを確認して帰ろうとすると拗ねて、翌日は特に面倒臭い感じになっている。酒が増えたり、食事を疎かにするのもわざとだ。口煩くしたほうが実は満足しているように見えた。いよいよ問題児だが、こうなってはカイも意地だ。仕事なのだし根気強く相手をしてやろうという気になってきた。――あの宿に連れて行った夜、その翌日の出来事も勿論過ぎらないではなかった。寂しい奴なのだと感じて同情した。手を焼くがどうも、放ってはおけない。
それに、その苦労に足るものがある。
セヴランが身に宿す植物はとても瑞々しく美しく、カイの目にも素晴らしいものだったから。これの為にどうにか上手くやってやろうと思わされた。園丁官、庭師としての使命感。
「おは、よう――」
そのようにして、セヴランの担当についてもう一月経とうかという頃。カイは見えた景色に息を呑んだ。
開いた緑の扉の向こうには、頭に鹿か何かの角のように枝を生やしたセヴランが立っていた。角とは違って片方、右だけで葉も茂り花まで咲いていたが、冠というよりは角だった。小さく白い花が寄り集まる美しい庭常だ。それでバランスがとれないように首を傾げて、彼は端を弄る。
「――四種目、立派だな」
「立派過ぎるよ。驚いた。本当に寝返り打てないんだも――おわっ」
言う間にも居間のドアに引っ掛かって花が零れるのにカイは慌てて駆け寄った。
それは他で咲いているのを見かけるものより清々しく甘く香るように思われ、カイはまた呼吸を深くする。魔を退ける魔法と蘇生薬――そう呼ばれるほどの力ある薬の材料だった。
枝葉、セヴランが動くと輝くようにも見える花を確かめ、道具を並べる。彼はもう慣れており道具も一級品を揃えているが、こうして相手にする植物が大物となってくるとやはり簡単ではない。
「これくらいなら……ナイフでいけるかな……まだ育つか……?」
「いけないと、次は何が出てくるわけ?」
「鋸も持ってきてる」
「ひえ……」
葉や茎を摘んだり切ったりしても平気なように、たとえ枝や幹にまでなったとして――最も大きな事例だと一時木に取り込まれた庭もいたが――それを伐採しようとも人間のほうがどうにかなることはない。が、セヴランは想像で縮み上がる。
肌は当然、髪を切られても困ると言う彼に、さすがにカイも理解を示す他なかった。横に立ち、これまでのときよりさらに慎重に枝葉を寄せ、髪も掻き分けて分け目を作る。どのように生えたものだか枝に引っ掛かっている個所も多く、つんと引かれて挙句髪が抜ける感触のほうは確かにするのにセヴランが抗議の声を上げる。
「理髪師じゃないんだ、ちょっとは勘弁してくれ……」
それでようやっと切る向きと順番も決めて、さてやるかとカイが構えたとき、セヴランは辺りを見渡した。緑色の目が何か探した。
おい動くな、と窘められるより早く言う。
「待って、まだ切らないで、――今、外から音楽が聞こえる?」
暫らく、二人とも息まで止めて静かになった。だがカイの耳には何も聞こえない。此処は静かな場所で、人の声なども今は聞こえなかった。精々、彼が持ってきた小さな時計の動く音程度。
「いや……」
「じゃあここから聞こえる。……歌が」
カイが答えると、セヴランの声が震えた。カイに任せていた庭常の枝に触れ、さする。感激の吐息。カイの顔色も変わった。
「どんな――」
「神様の歌だ。すごいな。……言葉は分からないけど……」
指が調子をとる。辿る鼻歌、同じ旋律の繰り返し。二人とも聞いたことがない、此処ではない場所の音楽。
生えたものを通して神々の園の音が聞こえる。鳥の声やせせらぎ、話し声……そういった話はこれまでも何例か報告があった。だが、ほんの数例、貴重な証言だ。カイは慌てて記録の為に通信機を立ち上げた。
「カイ・エッカルトです、発現した植物から歌が聞こえると、自分には聞こえませんが、今、」
そのうちにセヴランは立ち上がった。花が散る。
「楽器がある。弾くよ」
「演奏してくれると」
階段を駆け上がる慌ただしい物音に庭常の枝が無事か心配して、それ以上に予期せぬ出来事にそわそわとして、本部からの確認に答えながらもカイは浮つく。しかし何もできず、採取の用意をしていた卓上を見ているしかなかった。戻る気配に顔を上げる。
庭常を挿頭すセヴランが二階から持ち出してきたのは、埃を被った竪琴だった。美しい彫り物も施されたしっかりとした木製の丸い枠に十一の弦が張られた本格的な楽器だった。
ぽん――
くすんだ竪琴はそれでもどうにか鳴った。椅子に座り直したセヴランは時々弦も締めて指を動かした。急いて、繰り返し、庭常に耳を傾け旋律を追う。次第に理解し伴奏になる。彼にははっきりと聞こえる曲を、自分たちの側にも再現する。
唇が動く。
声は竪琴の音色へと美しく重なる。セヴランの歌声には喋っているときとは違う甘さがある。
それは寄り添って語らうかの優しい響きの曲だった。何か言っているが意味は知れない神の国の言語の、その音だけをセヴランが模る。そうしてカイに聞かせた。
セヴランが弾く。が、曲に誘われてもいる。指は己が発した音に導かれるように、次へと動いていった。彼は美しく奏でた。長くそうしていなかったのが明らかな楽器でも、問題なく。
十分ほど、たまに音を組み替えて演奏は続いた。
「――ああ、止んだ」
聞き入っていたカイは、セヴランが何かの憑依が解けたように手を止め、惜しんで、分かる言葉を呟いたのにはっとする。数度、息をしなおして、瞬き、ようやく思い出して通信機を掴んだ。
「聞こえなくなったそうです。指示無ければ、採取に戻ります――」
「……暫らく待ってから、異変無ければ採取を」
「はい、――了解しました」
抑揚に乏しい通信の音声も些か興奮しているように感じられたが、追加の指示はその程度だった。
カイが顔を上げれば、竪琴の埃を払って眺めるセヴランが居た。薄汚れた自分の指を見つめて何か考えるのをカイも黙って見てしまった。声はかけづらい雰囲気だったが、二人きりで、仕事中だ。
「……セヴラン、いいか」
「すごかったね、君も聴けたらよかったんだけど」
改めて声をかけると、セヴランはぱっと顔を上げて笑う。申し訳なさそうにするのに、カイは首を振った。
「いいや、十分、いいものを聴かせてもらった」
世辞などではなかった。研究の面でも、個人的な体験としても――単純に音楽としても、実によい演奏を聴いたという実感があった。セヴランは素人ではないだろうとも察せられた。
けれど、そうやって褒めたのにセヴランはいつもの調子ではなく、どこか困ったような顔をする。あれほど自然に弾いて見せたのに竪琴はやはり埃塗れだった。
カイも少し困って、まだ刃物を持てず、代わりにペンを持って訊ねた。
どんな風に聞こえたのか――少し離れたところから聞こえるようだった。次第に盛り上がったようにはっきりとした。
楽器は――弦楽器。多分大きな竪琴。
声もしたのか――多分若い女の、もしかしたら子供の声で、歌っていた。二人はいた。
他、聞こえた単語と思しきものの書き留め。
そういう調査は、聞かせてもらった音楽に比しては味気ない。それでもきちりと報告にして、カイは頷いた。
さらに時間を置いてもまた音楽が聞こえ始めるようなことはなかったので、カイは標本の採取に踏み切った。セヴランが動いてしまったのでさっき掻き分けていた髪の分け目は見失われてやり直しになった。結果、その日の作業はいつもの倍以上かかった。
まだ二人に残る音の余韻に、枝を切る音が重なる。白い庭常は変わらず輝くように咲き、清涼な香りを漂わせていた。
本部に帰還したカイは、普段は執務室には居ないような研究員たちにも囲まれた。件の通信からは時間が経って多少落ち着いてはいたものの、当事者の登場にまた沸き立って、多くの声がかかる。
「あんなものが聴けるなんて!」
「素晴らしいデータになったよ。今回の彼はいい庭だな」
音声は無事銀盤録音できた。音楽自体には皆詳しいとは言い難いが、古語に似た響きの言葉がないか調査し始めている。専門家に頼んで楽譜の書き起こしや、意見を貰ったりもしたいところだ――等々。何か思いつけば君も言ってくれ、と張り切って背を叩かれる。
皆喜んでいる。カイも勿論喜ばしい。自分が居合わせたことが誇らしいし嬉しい。が、彼は当の庭、セヴランのことが気になってもいた。
「お疲れ。あの人、楽器が弾けたんだなあ。竪琴?」
「――ええ。上手かったと思います」
周りの人が持ち場に戻っていって、珈琲を持ってきてくれたデニスに言われると尚更。
――久しぶりに弾いたからちょっと疲れた。
いつになく言葉少なになったセヴランが、ただ疲れたり興奮しただけではない表情で呟いて、あの後にも音を鳴らさず大事そうに弦を撫でていた姿が、どうにも。
27
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。
これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。
無自覚両片想いの勇者×親友。
読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる