中学生小説

みらいつりびと

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宇宙の悪戯

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 明るい。眩しいほどの明るさだ。私は目の上に手をかざして、直射日光を避けた。道路から公園に入り、木陰のベンチに座った。
 私はとある中堅企業のOLだ。お金はほしいが、仕事は嫌い。
 今日は休日。休日ほど素晴らしいときはない!
 私はアパートから持ってきた手提げ袋からハンバーガーを取り出した。まだほんのりと温かい。10分ほど前に自分で作ったばかりなのだ。
 作り立てのハンバーガーを広々とした公園で食べる。なかなか良い休日の過ごし方ではないかと思う。私の自作ハンバーガーはなかなか美味しいのだ。
 ハンバーガーを2個食べて、缶コーヒーを飲んだ。
 公園内を見渡した。小さな池があり、アヒルが2羽泳いでいた。池の手前にはブランコやスベリ台があり、子供たちが遊んでいる。池の向こうには雑木林がある。
 きーこきーこというブランコののどかな音が聴こえて、私はゆったりした気分になった。眠ってしまいそうだ。
 しばらく私は子供たちが遊んでいる風景を見ていた。目を上に向けると、青空があり、ひつじ雲が浮かんでいる。綺麗な空だ。
 しかしその青い空がしだいに黒く染まってきて、私は「え?」と声を上げた。時刻はまだ午後1時だった。暗くなるような時間ではない。空の黒はじわじわと青空を侵食するように広がっていった。濃い煙が広がっていくようで、明らかに夜になるときとはちがっている。
 私は急いで自宅に帰り、テレビをつけた。
「臨時ニュースです。2週間前に清里天文台が発見した太陽系内のガス空間に地球は突入しました。ガス雲は予期せぬ軌道を描きました。空が黒くなったのはそれが原因です。宇宙の黒いガスに包まれ、地球の空は黒くなったのです。太陽も見えなくなっています。ガスが人体にどのような影響を与えるか、いまのところわかっていません」
 宇宙のガス。そのニュースは知っていたが、自分には関係ないと思っていた。地球がガス空間に突入するなんて、初耳だった。
 母から電話がかかってきた。
「血を吐いたわ。胸が苦しい……」
 私は仰天した。完全に他人事ひとごとではなくなった。
「いまから行くわ」
 私は懐中電灯を持って、実家へと走った。
 外は闇夜のようで、電灯や街灯の光だけが頼りだった。
 実家は徒歩圏内にある。鍵を開け、家の中に入った。母は大量の血を吐いて倒れていた。
「お母さん!」
 私は母にすがりついたが、ときすでに遅く、息をしていなかった。
 悲嘆に暮れて、何をしていいのかわからなくなり、呆然とした。
 とにかく状況を知りたくて、テレビをつけた。
 アナウンサーが真剣な顔付きでしゃべっていた。
「宇宙ガスは有毒であることが判明しました。個人差がありますが、死亡する恐れがあります。外出せず、屋内に退避し、窓を閉めてください。宇宙の黒いガスを吸わないようにしてください」
 もうたくさん吸ってしまったよ、と私は思った。
 実家に籠ることにした。
 すべての窓を閉め切り、ガムテープで目張りをした。
 それでもすでに家の中にも宇宙ガスが入っていて、空気が灰色に濁っている。
 私はテレビのニュースをつけっぱなしにして、情報を得た。
 かなり多くの人が毒ガスにやられて死んでしまったようだった。
 正確な数値はテレビ局でもわからないようだが、日本全国で少なくとも数万人が死んだらしい。
 これからどうなってしまうのか、想像すると怖かった。
 母の亡骸なきがらとともに数日を過ごした。いつ私も倒れるのかと恐れていたが、幸い血を吐くことも、胸が苦しくなることもなかった。
 しかし外出できるようにならなければ、実家の中で飢え死にしてしまう。
「清里天文台が別の宇宙ガスを確認しました」とアナウンサーが言った。
 窓から見ると、外が白くなっていた。
「地球は宇宙の白いガス空間に突入しました。このガスが人体に影響があるかどうかは、まだわかっていません」
 また毒ガスだったら大変だ、と思った。
 しばらくして、続報があった。
「白いガスは黒いガスの毒性を消す効果があることが判明しました。地球の大気は安全です。黒いガスの毒性は白いガスによって、完全に打ち消されました!」
 私は窓を開けた。
 悪夢は終わったのだろうか?
 火葬場に電話をして、母の遺体を火葬する予約を取った。ものすごい混み具合で、予約日は20日後だった。
 外は白く霞んでいたが、やがて霧が晴れるように視界が広がり、青空が見えてきた。
 地球が宇宙の白いガス空間を抜け出したのだろう。
 私は地球が宇宙に弄ばれていたような気がした。
 宇宙の黒いガスと白いガス。有毒のガスと無害化のガス。宇宙の悪戯イタズラ……。
 質の悪すぎる悪戯イタズラだ。宇宙のガスは母を殺した。仇を討つことはできない。宇宙もガスも殺せない。
 私は母の冥福を祈り、宇宙の理不尽を呪った。
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