中学生小説

みらいつりびと

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忘れられた文明 第1話 物々交換の日

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 三浦金蔵氏は大金持ちだったが、お金を大切にするあまり、自宅の金庫にしまって、必要最低限しか使っていなかった。
 60歳の誕生日、彼はふと虚しさに襲われた。
 守銭奴に徹しすぎて、おれは人生を楽しみ損ねたのではないかと思い、時間を無駄にしたと感じた。
 彼は札束を鞄につめて、街に出た。
 高級レストランに入り、店員に100万円渡して、「これでおすすめの料理と酒を出してくれ」と伝えた。
「なんですこの紙は?」と店員は怪訝そうな顔で言った。
「料理が食べたければ、それと交換するものを出してください。当店ではゴールドかシルバー、または肉や野菜や米を必要としています」
「何を言っておるのだ。これはお金だぞ。100万円だ」
「お金ってなんですか? こんな紙きれにはなんの価値もありません。あなたには料理も酒も提供できません。出て行ってください」
 三浦氏はレストランから追い出された。
「なんだっていうんだ。100万円に価値がないだと? 世の中は狂ってしまったのか?」
 彼は酒屋に行ってみた。一升瓶を持って、店主に「これを売ってくれ」と告げた。
「売ってって、なんですか?」
「何を言っておる? 日本語がわからないのか? おれは酒が買いたいんだ。売ってくれ」
「買いたいとか売ってとか意味がわかりませんね。酒がほしければ、価値ある物を出してください。その腕時計となら交換してもいいですよ」
「交換だと?」
 三浦氏は腕時計を渡し、酒を得た。
 物々交換の時代になってしまったのか? 現金に価値はなくなってしまったのか? そもそも人々がお金のことを知らないみたいだ。どうなってしまったんだ?
 三浦氏は混乱した。
 彼が自宅に帰ってきたとき、頭がぼんやりしていた。
 そして鞄の中に入っていた札束を見て、この紙はなんだ、と思った。
 いつのまにか彼はお金のことを忘れてしまっていた。
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