作家志望愛詩輝の私小説

みらいつりびと

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愛詩輝暗黒卿の誕生

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「近い将来、AIの知能が人類を超えることはまちがいない。問題は、AIが意識を持てるかどうかだと思うんだよね」
 SF研の4年生、和歌一本さんは家業の和菓子店で働くことを決めている。だから就職活動をしていない。スイーツが大好きで、今も塩豆大福を食べている。ちょっと太っているね。
 和歌さんは前会長だ。中学2年生のとき、「果てしなき流れの果てに」を読んでSFに目覚めたそうだ。小松左京先生と筒井康隆先生を尊敬している。海外SFではフィリップ・K・ディックがおすすめだと教えてくれた。
 恵比寿様のような丸顔で、SF研の癒し担当、とボクは心の中で呼んでいる。
「知能と意識はまったくの別物だ。将棋AIの将棋知能はプロ棋士をも超えたが、意識を持っているわけじゃない」
「シンギュラリティAIでも意識は持てないと思いますか?」とボクは質問した。
 今日は月曜日。SF研の部屋にいるのは、ボクと和歌さんと藤原会長の3人だ。会長は頭に包帯を巻いている。会長、ごめんなさい。
「自意識、意志、心がどのように発生しているかは現代科学でも解明されていない」と藤原会長は語る。
「俺は、AIは知能をどれだけ高めても、心は持てないと思う。将棋や囲碁に特化したAIではなく、全人格的なAIであってもね。だから映画のヒロインは心を持っていないシンギュラリティAI美少女アンドロイドなんだよ」
「愛詩くんには美少年アンドロイドを演じてもらった方がいいと思うけど」と言った和歌さんを、ボクはキッと睨んだ。ライトセーバー事件を目の当たりにしている先輩がひるんだ。
「大福をあげるよ」
 和歌さんはボクに高級な塩豆大福をくれた。
「ぼくはAIが意識を持つ可能性は高いと思うよ。魚ですら自己を意識している。知能を高めていけば、どこかの段階でAIは自己を発見するだろう」
「たぶん、意識は電気的なものではなくて、化学的、あるいは生理的な現象なんですよ。だから、俺は無機物と電気によるAIは、どれほど進歩しても意識を発生させることはないと考えています」
「有機コンピュータが発明されたら?」
「完成した瞬間に意識を持つでしょうね」
 和歌前会長と藤原現会長の議論を、ボクは聞いていることしかできない。
 この会話、未来哲学研究会の活動なのかな?
「ボク、シンギュラリティAIのSFショートショートを書いたんです。読んでもらえますか?」
 二人の男性は興味深そうにボクを見た。
 プリントアウトした原稿を机に乗せる。藤原会長が手に取り、和歌さんが横からのぞいた。
 読み終えて、「素晴らしい!」と和歌さんが叫び、「これはただのあらすじだ。小説になっていない」と藤原会長が言った。
 ボクは一瞬喜び、次に落ち込んだ。会長が正しい。
「とはいえ、きみにはSFの資質がありそうだ。俺が鍛えてやるよ」
 会長はえらそうだ。すごい上から目線。
「割れちゃったから、次のライトセーバー買ってきますね。もっと頑丈なやつ」とボクは言った。
「ひっ」会長はひるんだ。
「きみはジェダイの騎士か」
「ダース・ベイダーの生まれ変わりです」
「愛詩暗黒卿と呼ぶことにしよう」
「愛詩暗黒卿、大福まだあるよ」
 その呼び方、定着したら嫌だな。
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