21 / 47
へそ出しゴスロリ
しおりを挟む
数日間、藤原会長は村上劉輝くんを引き止め、退会を翻意させようとしたが、だめだった。
村上くんは退会届を会長に投げつけ、SF研を辞めた。
火曜日、定例会。
「すまん。村上は正式に退会した。俺たちは6人で会を続けることになる」
「ボクの責任です」
「ちがう! 全責任は会長の俺にある。愛詩のシナリオを最初に認めたのも俺だ。中国人である村上を怒らせる要素があるのに気づけなかった。けじめとして、俺は頭を丸める」
「ちょっと、会長、やめてください」
「藤原、そこまですることはない。愛詩のシナリオは悪くない……。村上の地雷を踏んでしまったのは不運だった……」
「そうですよ。日本と中国の戦争を描くのは、そうなってほしくないからです。会長が坊主になるほどのことじゃない。あいつが話し合いにも応じずにやめた、それだけのことです」
「いや、だめだ。俺は髪を剃る。その上で、6人で『愛は理解不能』を撮影したい」
藤原会長はポケットからバリカンを取り出した。
「愛詩、剃ってくれ。つるつるの頭にしてくれ」
「えっ? 今ボクが剃るんですか? 嫌ですよ。会長の黒髪、好きなんですから」
ほんとに好きなんだ……。
「いいから、さっさと剃ってくれ!」
会長の意志は固そうだ。ボクはバリカンのスイッチを入れた。
ブーン、とバリカンが鳴る。
艶々とした会長の長髪を、ボクは剃って行った。パサリ、と黒髪が落ちて、陽にまったく焼けていない青い頭皮が現れる。
痛々しい。なんでボクは好きな人を坊主にしているんだ? 何の罰ゲームなんだ? やっぱり村上くんを怒らせた罰なのか?
「あ、ああ、会長の髪がぁ」ボクは泣きそうだった。
会長は終始うつむいていた。ボクは剃り続け、ついに最後の髪も剃り落とした。丸坊主だ。
「どうだ、似合うか」
会長も泣きそうになっていた。
ぷっ、と土岐さんが吹き出した。全然似合ってなかった。
「あははははははは」土岐さんが笑い出した。
「わっはっはっはっ」と小牧さんも爆笑した。
「くくっ」と和歌さん。
「うひっ、ひひひひひ……」と尾瀬さんは変な笑い声を立てた。
ボクも笑いが止められなくなってしまった。
「うくっ、あははははっ、あはっ、苦しい……」
「おっ、おまえら、笑うなぁっ」
会長の怒鳴り声が可笑しくて、全員大爆笑した。
その笑いで、わだかまりが吹っ飛んだ。
「はぁ、6人でやろうよ。な、みんな、チョコパイを食べなよ」
「『愛は理解不能』、絶対いい映画にしよう……」
「成功させましょう」
「ありがとう。やろう!」青々しい頭を光らせて、会長が言った。ボクは何かがこみ上げてきて、ついに涙が出た。
「ボクにも責任を取らせてください」
「いいよ、おまえはいいシナリオを書いたんだ。何の責任もない」
「じゃあ、いい映画を撮るために、貢献させてください。ボク、セクシーなスーツを着てもいいです」無意識に言ってしまった。
土岐さんがわっ、と叫んだ。
「プラグスーツ! いや、まんまパクるわけにはいかないから、なんかセクシーなパイロットスーツ! 自分、コスプレやってる知り合いがいるから、頼んでみるよぉ」
発言を後悔した。やっぱりそんなのは嫌だ。プラグスーツって、綾波レイや式波アスカが着ている水着みたいなやつだよね。いや、水着よりも恥ずかしいコスプレだ。でも、映画に貢献できるなら……くっ。
「土岐、やめてやれ」
「でも、SF映画にはセクシーな女の子が出ていてほしいですよぉ」
「わかった。愛詩、へそを出せ」
「へっ、へそ?」
「へそ出しゴスロリを着てくれ。責任を取って」
「か、会長、ボクには責任はないって言ったじゃないですか」
「村上が辞めた責任じゃない。軽率な発言をした責任だ。セクシーな服を着ろ」
「は……はい……」
へそ出しゴスロリかぁ。藤原さんを悩殺してやる。
って言いたいところだけど、ボクはそんなにスタイルはよくない。すらっとしてる少年体型だ。
「へそ出しゴスロリもいいなぁ」
土岐さんはどうでもいいんだよ。
「会長、渋谷に買いに行くから、付き合ってください」
「え、へそ出しゴスロリ買うのに、俺も行くの?」
「映画の衣装なんだから、監督がお金出してください。あと、大切なことだけど、映画に合っているか確認してください」
「う、わかったよ」
藤原さんと渋谷でデートだ。ファッションビルでへそ出しゴスロリを売っているかどうか、調べなくちゃ。
大笑いして、デートの約束を取り付けて、村上くんのことが遠く思えるようになっちゃった。
再出発だ。シナリオも登場人物を5人に変更しなきゃ。
村上くんは退会届を会長に投げつけ、SF研を辞めた。
火曜日、定例会。
「すまん。村上は正式に退会した。俺たちは6人で会を続けることになる」
「ボクの責任です」
「ちがう! 全責任は会長の俺にある。愛詩のシナリオを最初に認めたのも俺だ。中国人である村上を怒らせる要素があるのに気づけなかった。けじめとして、俺は頭を丸める」
「ちょっと、会長、やめてください」
「藤原、そこまですることはない。愛詩のシナリオは悪くない……。村上の地雷を踏んでしまったのは不運だった……」
「そうですよ。日本と中国の戦争を描くのは、そうなってほしくないからです。会長が坊主になるほどのことじゃない。あいつが話し合いにも応じずにやめた、それだけのことです」
「いや、だめだ。俺は髪を剃る。その上で、6人で『愛は理解不能』を撮影したい」
藤原会長はポケットからバリカンを取り出した。
「愛詩、剃ってくれ。つるつるの頭にしてくれ」
「えっ? 今ボクが剃るんですか? 嫌ですよ。会長の黒髪、好きなんですから」
ほんとに好きなんだ……。
「いいから、さっさと剃ってくれ!」
会長の意志は固そうだ。ボクはバリカンのスイッチを入れた。
ブーン、とバリカンが鳴る。
艶々とした会長の長髪を、ボクは剃って行った。パサリ、と黒髪が落ちて、陽にまったく焼けていない青い頭皮が現れる。
痛々しい。なんでボクは好きな人を坊主にしているんだ? 何の罰ゲームなんだ? やっぱり村上くんを怒らせた罰なのか?
「あ、ああ、会長の髪がぁ」ボクは泣きそうだった。
会長は終始うつむいていた。ボクは剃り続け、ついに最後の髪も剃り落とした。丸坊主だ。
「どうだ、似合うか」
会長も泣きそうになっていた。
ぷっ、と土岐さんが吹き出した。全然似合ってなかった。
「あははははははは」土岐さんが笑い出した。
「わっはっはっはっ」と小牧さんも爆笑した。
「くくっ」と和歌さん。
「うひっ、ひひひひひ……」と尾瀬さんは変な笑い声を立てた。
ボクも笑いが止められなくなってしまった。
「うくっ、あははははっ、あはっ、苦しい……」
「おっ、おまえら、笑うなぁっ」
会長の怒鳴り声が可笑しくて、全員大爆笑した。
その笑いで、わだかまりが吹っ飛んだ。
「はぁ、6人でやろうよ。な、みんな、チョコパイを食べなよ」
「『愛は理解不能』、絶対いい映画にしよう……」
「成功させましょう」
「ありがとう。やろう!」青々しい頭を光らせて、会長が言った。ボクは何かがこみ上げてきて、ついに涙が出た。
「ボクにも責任を取らせてください」
「いいよ、おまえはいいシナリオを書いたんだ。何の責任もない」
「じゃあ、いい映画を撮るために、貢献させてください。ボク、セクシーなスーツを着てもいいです」無意識に言ってしまった。
土岐さんがわっ、と叫んだ。
「プラグスーツ! いや、まんまパクるわけにはいかないから、なんかセクシーなパイロットスーツ! 自分、コスプレやってる知り合いがいるから、頼んでみるよぉ」
発言を後悔した。やっぱりそんなのは嫌だ。プラグスーツって、綾波レイや式波アスカが着ている水着みたいなやつだよね。いや、水着よりも恥ずかしいコスプレだ。でも、映画に貢献できるなら……くっ。
「土岐、やめてやれ」
「でも、SF映画にはセクシーな女の子が出ていてほしいですよぉ」
「わかった。愛詩、へそを出せ」
「へっ、へそ?」
「へそ出しゴスロリを着てくれ。責任を取って」
「か、会長、ボクには責任はないって言ったじゃないですか」
「村上が辞めた責任じゃない。軽率な発言をした責任だ。セクシーな服を着ろ」
「は……はい……」
へそ出しゴスロリかぁ。藤原さんを悩殺してやる。
って言いたいところだけど、ボクはそんなにスタイルはよくない。すらっとしてる少年体型だ。
「へそ出しゴスロリもいいなぁ」
土岐さんはどうでもいいんだよ。
「会長、渋谷に買いに行くから、付き合ってください」
「え、へそ出しゴスロリ買うのに、俺も行くの?」
「映画の衣装なんだから、監督がお金出してください。あと、大切なことだけど、映画に合っているか確認してください」
「う、わかったよ」
藤原さんと渋谷でデートだ。ファッションビルでへそ出しゴスロリを売っているかどうか、調べなくちゃ。
大笑いして、デートの約束を取り付けて、村上くんのことが遠く思えるようになっちゃった。
再出発だ。シナリオも登場人物を5人に変更しなきゃ。
0
あなたにおすすめの小説
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
私の守護霊さん
Masa&G
キャラ文芸
大学生活を送る彩音には、誰にも言えない秘密がある。
彼女のそばには、他人には姿の見えない“守護霊さん”がずっと寄り添っていた。
これは——二人で過ごした最後の一年を描く、かけがえのない物語。
咲坂(SAKISAKA)という、誰の目にも留まるほど美しい女性は――俺にだけ“心の闇”を見せた。
里見 亮和
キャラ文芸
誰もが振り返る美しさを持つ咲坂雪菜。
普通ならとても近づけない存在なのに、なぜか彼女は俺にだけ歩み寄る。
その理由に触れたとき、彼女の“心の闇”は静かに俺へ重なり始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる