作家志望愛詩輝の私小説

みらいつりびと

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サバゲーショップ

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 6月に入った。
 丸坊主にした髪が少しずつ伸びている藤原会長は、ついに絵コンテを描き上げた。見せてもらったが、彼の絵はあまり上手ではなかった。
「映画監督が絵がうまい必要はないだろう。いいんだよ、これで。すべてのシーンのイメージがだいたい出来上がった。撮影したくてうずうずしてるよ」
「ボクの演技指導もしてくださいね」
「そうだな。愛詩は人間とロボットの中間ぐらいの演技をしてくれよ」
「その要求、素人にはむずかしいと思います」
「『涼宮ハルヒの憂鬱』の長門有希は知っているか?」
「大好きなキャラクターですよ」
「あれでいいや」
「あれでいいやって、京都アニメーションのアニメみたいに演じるのはたぶん無理です」
「知っているなら話が早い。とにかく長門をめざしてやってみてくれ」
「簡単に言うなぁ」
 会室にいつも目付きの鋭い小牧さんが入ってきた。
「お、来たな。行こうぜ」
「はい」
 二人はどこかへ出かけるようだ。
「どこへ行くんです?」
「サバイバルゲームショップだよ。軍人役の小牧と必要な装備を買いに行く」
 軍人は最初二人の予定だったが、村上くんが抜けたので、一人に変更している。
「ボクも行きたいです。連れていってください」
 藤原会長と出かけられるなら、どこへでも行きたい。
 ボクたち三人は駅へ行って山手線に乗り、数駅先で降りた。会長がスマホで地図を確認しながら先頭を歩いていく。ボクと小牧さんはあとを追った。彼と創作の話をした。
「『猛虫使いの彼女』はうまく書けているのか」
「最初は順調に書けていたんですが、中盤に入って苦しんでいます。起承転結の転が見つけられなくて。結末も見えていません」
「長編を書くのなら、ある程度構成を考えてから着手すべきだろう。もちろん基本の起承転結ができていなくてはだめだろ」
「ボクは書きながら考えるタイプなんです。書いて、連想して、それでキャラが動いて、物語ができていくんです」
「それでうまくいくならいいけどさ」
「行き詰まって、執筆が苦しいです。猛虫と人間は共存させたいんですが、その道は見つからないし、ヒロインの猛虫使いとラスボスの殺虫会社の女社長は強烈に対立しているんですが、平和な現代日本の人間同士ですから、殺し合いをさせるわけにもいかなくて。完全に手詰まりです。ボク、いつもこうなんですよね。書いている途中でつまらなくなって、やめちゃうんです」
「『愛は理解不能』のシナリオは割とよくできていると思うぞ」
「ありがとうございます。でもあれは短編ですから。ボクは作家志望ですから、きちんと長編を書き上げたいです」
「ま、がんばれ」
「着いたぞ」藤原会長が立ち止まった。サバイバルゲームショップが目の前にあった。
 店内には本物と見まごうばかりに精密なモデルガンの数々が展示してあった。格好いい。ボクはミリタリーが好きだ。映画『シン・ゴジラ』は大好きだし。女の子としてはめずらしい部類だろうか。
「高いな」会長がガスマシンガンの棚の前で渋い顔をした。
「マシンガン一つは絶対に必要ですよ」
「わかってる。最低で43,650円。でも買いたいのはこっちの50,950円のやつだな」
「僕も5万円のがいいです。これを持って演技したい」
「迷彩服も必要だ」
 ボクたちはウェアを見た。
「これは上下セットで5千円から1万円ぐらいだな」
「安物はやめましょうよ。映画撮影用なんですから。1万円ので」
「おまえ、金出してくれるのか」
「会長の命令どおり1万円は出しますよ。それ以上は会長が出すって言ったじゃないですか」
 ボクもっと出してもいいですと言いたかった。会長のためなら、バイトするよ。でも、1年生が出しゃばるべきじゃないだろう。ボクは沈黙を守った。
 マガジンは1,980円。BB弾は790円。ガスは1,620円。
 うわぁ、サバゲーって、お金かかるんだなぁ。
 会長がすべての支払いをした。
「いい映画を作りましょうね」
「おまえ、マシンガンで遊びたいだけだろう」
 帰りの山手線内での先輩二人の会話にクスッと笑った。
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