釣りガールズ

みらいつりびと

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第54話 プール

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 カズミは浮かれまくっていた。
 美沙希とプール! うっきうきのるんるん。
 自転車で川村家に行き、ドアフォンを鳴らす。すぐに美沙希が出てきた。
「行こ!」
「うん」
 愛しの美沙希は今日も綺麗だ。
 アーモンド型の目が素敵。すっと通った鼻筋が美しい。薄紅色で少し湿った唇が魅惑的。顔の輪郭はなめらかな三角形を描き、顎はシャープだ。
 こんな綺麗な生き物は美沙希だけ。

 イタコ市民プールへ行き、更衣室で着替える。
 美沙希は背が高い。どちらかと言うと貧乳で、腰は折れそうなほど細く、お尻も大きくはない。手足はすらっと長い。中性的な体型だ。お腹には無駄な肉はなく、おへそは縦長だ。肌のきめは細かく、透き通るように白い。
 水着は白いビキニだった。
 カズミはガン見した。
「きれ~い!」
「そのいやらしい目、やめて」
「ええっ? いやらしくなんてないよ~」
「いやらしい!」

 カズミも負けてはいない。男性の目を惹きつけるナイスバディだ。
 胸はボヨ~ンとでかい。腰はしっかりくびれているのだが、お腹には適度に肉が付いていて、おへそは横長。それが色っぽい。お尻はぷりんと丸く、太ももはむっちり。足首はきゅっと細くしまっている。
 水着はピンクのビキニだった。
「カズミは全身いやらしい」
「ええっ? なんで?」
「その胸、私に半分分けて」
「だめだよお。美沙希はそのままで完璧なんだから~」
 ふたりの美少女を周りの男性たちがちらちらと見ていた。

「さて、美沙希は泳ぎが苦手なんだよね。ちょっと泳いでみてよ」
 美沙希は手をまっすぐに伸ばし、バタ足で泳いだ。
 息継ぎをせず、しだいに沈んでいった。
「なんでそうなるのよ?」
「息継ぎができない。水を飲んでしまいそうで」
「怖がらずに息継ぎしてみて」
「やってみる」

 バタバタバタバタ、ぷはっ、バタバタバタバタ、ぷはっ。
「そうそう。できるじゃない」
 バタバタバタバタ、ごほっ、ブクブクブク……。
「沈むな~!」

「はあ、死ぬかと思った……。一生懸命に泳いでから沈むと、苦しみが大きい」
「ここ、足がつくんですが」
「もう泳がない。プールサイドで座ってる」
「だめだこいつ」
 カズミは匙を投げた。

 市民プールなので、飲み食いはできない。
 ふたりはベンチに座って、けっこう真剣に泳いでいる男女を見た。
「美沙希は夏休みの宿題やった?」
「やってない。釣りばっかりしてたから」
「あたしもやってない。ずっとバイトしてたから」
「ヤバいね」
「ヤバいよ」
 数学や英語の問題集、読書感想文、現代社会のレポートなど、放置していた宿題の量は多い。
「明日、一緒にやろうよ」
「私の家を提供する」
「じゃあ、また10時に行くね」
「オッケー」
 
「今日はこれからどうしよう?」
「当然、釣りに行く」
「その前にご飯食べたい。お腹すいた」
「ラーメン好き?」
「またこのパターンかよ」
「この近くに英吉という坦々麺が美味しい店がある」
「そこでいいよ」
「辛いよ。痺れるよ」
「平気。坦々麺は好き」
 ふたりは市民プールを出て、ラーメン屋さんへ向かった。
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