【完】 恋した博士に名前を覚えてもらえるまで

Bu-cha

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Tシャツの上、胸の谷間にのる指輪を見る。
中心の大きなダイヤ、リングの部分にも全部ダイヤがついている。
あのブランドのこのデザインだと、400万円は超える。



この婚約指輪を、“はじめ”さんは誰に渡そうとしていたのか・・・。



溜め息を吐いて、窓を開け私もベランダに座った。
“はじめ”さんは私を見ることもなく、空を見上げながらお酒を一口飲んだ。



それを見て、少し私の方に寄っていたお酒を取り、私もお酒を飲みながら空を見上げる。



「“はじめ”さん、私の名前覚えた?」



空を見上げたまま、聞く。



「名前、なんだっけ?」



その返事に、泣きそうになった。



泣きそうになった・・・。



「妊娠したら、本当に結婚するのよね?」



「キミがそれでいいなら。」



そんな返事で、そんな・・・返事で・・・。
そこに“はじめ”さんの気持ちや意思はないのだと分かる。



私の名前は、まだ覚えていない。



彼女でもないらしいから・・・。



妊娠して、私が望めば結婚はしてくれるらしい。



でも、妊娠していない今、私は彼女でもない。



“はじめ”さんといると、私には名前がないし、彼女でもない。




私は、なんなんだろう・・・。




今の私は、なんなんだろう・・・。




そして、思い出した。
自分で入力したから、思い出した。




私は、“3”だった。




“はじめ”さんのスマホに登録した。




“さちこ”の“さ”で、なんとなく“3”と入力しておいた。
他の人に“3”の番号を振っていなかったし、それは確認して“3”と入力した。




それからは、連絡が来るようになった。





だから、私は“3”。
妊娠出来るまで、私は“3”。



 


9月の排卵日は、終わっている。
“はじめ”さんに排卵日を言ったところ、排卵日前後の3日間、当日も含め、生殖行動をした。
だから、その時期は1週間毎日会えていた。




 

その時感じた幸せを思い出しながら、“はじめ”さんと同じく空を見上げる。
見上げ続ける空は今日も曇っていて、少しだけ涼しい夜だった。






9月も終わり、10月になった・・・。
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